味噌作りで活躍する微生物の働き by タケヤみそ 【麹→酵素、酵母、乳酸菌】

タケヤみそさんによる、味噌作りにおける微生物の働き。 古来からある味噌作りに、こんなに複雑なステップを活用しているとは、驚きです。 興味深い話なので完結したらまとめようと待っていたのですが、気がついたら7月から始まって8月末まで2ヶ月続く大作にw。ようやくまとめることができました。簡単にまとめると以下の流れになります。 味噌作りに活躍する微生物は、麹と酵母。さらに、麹が作る酵素も大事。それぞれの働きは次の通り。 続きを読む
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タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

昨日最後に少し書きましたが、微生物そのものや、生物によって生み出された酵素を使っておいしい食べ物を作ることが醸造の基本だと思います。その点では“発酵”か、そうでないかを分けて考えることに深い意味はありません。

2012-07-18 12:32:32
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

ただ、味噌屋としては、やはり微生物が関与する部分こそが“発酵”という思いがあります。みその場合、醸造のプロセスがやや複雑なので、微生物が関与するか否かを分けて考える癖がついているのかもしれませんね。

2012-07-18 12:33:23
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

さて、それでは麹菌が作り出す酵素について見ていきましょう。もっとも親しみやすいのはアミラーゼでしょう。でんぷんを糖に分解する酵素です。理科の時間に「ご飯をかみ続けると甘くなってくるのは、唾液の中に酵素が含まれているから」という実験をした方もいらっしゃるのではないでしょうか。

2012-07-20 12:19:48
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

麹菌が作るアミラーゼも同じように、原料の米や大豆のでんぷんを分解します。みその「甘み」を作り出すのはこの酵素ですね。

2012-07-20 12:20:07
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

同じく大切な酵素がプロテアーゼです。これは大豆のたんぱく質をアミノ酸に分解します。また、ある種のアミノ酸をグルタミン酸(うまみ成分)に変えるグルタミナーゼという酵素もあります。これらの酵素は、みその「うまみ」を作り出します。

2012-07-20 12:20:53
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

もう一つ、これも主に大豆に含まれる脂質を、脂肪酸とグリセリンに分解するリパーゼという酵素があります。この脂肪酸は、味噌中のアルコールと反応して、良い香りを出す脂肪酸エチルエステルへと変化します。

2012-07-20 12:21:21
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

みその味は主に「甘み」「うまみ」「酸味」「塩味」によって構成されていますが、特に甘みとうまみについてはこの酵素によって作り出されているのです。酵素がうまく働かないみそは、決しておいしいみそにはなりません。

2012-07-20 12:21:57
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

麹菌そのものは、みその発酵・熟成時にはその役割を終えている、というお話をしましたが、みその仕込み前に麹菌が作り出した酵素が、みそにとって非常に大切なのです。麹菌が「俺は十分に仕事をした。後のことは任せたぞ」と言って成仏(?)できるような麹づくりをしたいものです。

2012-07-20 12:22:59
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

先週まで、麹と、麹菌が作り出す酵素の話をしました。これに関係して、職人が叩き込まれる「みそ作りの心得」があるので、紹介したいと思います。

2012-07-23 11:50:07
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

弊社で昔から言わ伝えられているのは、“一蒸し、二麹、三仕込み(いちむし・にこうじ・さんしこみ)”という言葉です。まずはきちんと大豆を蒸すこと、次に麹をきちんと作ること、そしてきちんと計量してできるだけ均一に仕込むこと、という意味。

2012-07-23 11:50:42
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

つまり、大豆の蒸し方が悪ければ全部ダメ、ということです。確かに大豆の蒸し方が悪ければ、良い麹を作ったとしても酵素による分解は進みませんし、色も悪くなります。絶対においしいみそはできません。主原料である大豆に対して強い思い入れのこもった言葉です。

2012-07-23 11:51:21
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

ところが、先日技術講習会で講師の先生が言った心得は少し違っていて、“一麹、二蒸し、三仕込み(いちこうじ・にむし・さんしこみ)”だったのです。まずは良い麹を作ること、というのが先に来ています。

2012-07-23 11:51:40
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

もちろん、良い麹を作らなければ、大豆がきちんと処理できたとしても良いみそはできません(先週まで説明した通りです)。結局、大豆の蒸しも麹づくりもうまくできなければいけないのですが、優先順位が人によって違うのが面白いところです。

2012-07-23 11:51:59
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

以前「蔵によって微生物相が異なるので、同じ原料を使っても同じように作っても、蔵が違えばみその味は異なる」という話をしましたが、こうした職人のみそ作りに対する考え方の違いも、蔵ごとの個性につながっているのかもしれません。

2012-07-23 11:52:39
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

さて、それでは微生物のお話の最終段階に入ります。登場するのは酵母菌(以下、単に「酵母」と記します)。大きさ3~5μm(マイクロメートル)の小さな生き物です。

2012-07-25 12:36:42
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

酵母の写真はこちら(丸い物体です)。胞子を使う麹菌と違って、細胞分裂で増えます。写真には分裂しかかっているような酵母も写っていますね。 http://t.co/lwjfGz8x

2012-07-25 12:37:34
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

ちなみに、みそづくりをつかさどっている酵母の学名はZygosaccharomyces rouxii(チゴサッカロミセス・ルキシー)と言います。他にも発酵に貢献している酵母がありますが、主役はこちら。

2012-07-25 12:38:26
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

普通の酵母などは食塩があると生きられないのですが、みそ用酵母Z.rouxiiの特徴は食塩に強いこと。食塩濃度5%で最もよく増殖しますが、最大22%でも生育できるという驚異の生き物です(みその平均的な食塩濃度は12%くらい)。

2012-07-25 12:39:02
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

酵母の活動最適温度は30℃。日本の今くらいの気候が酵母菌にとってはベストな気温です。というわけで、いま弊社の天然醸造蔵でも、酵母菌たちが盛んに増殖し、発酵を進めているところです。

2012-07-25 12:39:28
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

昔の人は当然“酵母”などの存在は知りませんでした。したがって、蒸し大豆と麹と食塩を混ぜて桶に仕込んだら、後はおいしいみそができるよう、神様にお祈りするしかなかったのです。失敗することも多かったのではないでしょうか。

2012-07-27 12:39:47
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

そうは言っても、もちろんある程度の知恵はありました。例えば「桶をこの蔵に入れるとみそがおいしくできる」といったノウハウです。きっとその蔵には、みそに適した酵母(蔵つき酵母)が住んでいたのでしょう。

2012-07-27 12:40:25
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

また、「前年おいしくできたみそを、翌年の仕込みの時に少量添加する」といった方法も行われていました。これも、おいしいみその中にいる優れた酵母を翌年の仕込みに生かそう、という知恵です。添加するみそを“種みそ”と言います。

2012-07-27 12:40:55
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

微生物に関する研究が進んだ現在では、どの工場でも培養されたみそ用酵母を仕込み時に添加しています。したがって、いつでもほぼ同じ風味のみそができるようになり、失敗のリスクはほとんどなくなりました(こうでなければ、みそ屋などという商売は成り立ちません)。

2012-07-27 12:41:50
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

しかし、酵母を培養するにも、もととなる優れた酵母を探さなければなりません。優れた酵母は、優れたみそを作る蔵に住んでいます。そこで、蔵の中から酵母菌を探し出す作業が必要になります。

2012-07-27 12:43:00
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

現在タケヤみそに使われている酵母は自社オリジナルで、社内で培養して使用していますが、このオリジナル酵母も、もともとは弊社の蔵の中から探し出されたものです。つまり、酵母の培養によって、タケヤみその特徴となる“蔵ぐせ”を着実に再現していると言うことができます。

2012-07-27 12:43:50
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