味噌作りで活躍する微生物の働き by タケヤみそ 【麹→酵素、酵母、乳酸菌】

タケヤみそさんによる、味噌作りにおける微生物の働き。 古来からある味噌作りに、こんなに複雑なステップを活用しているとは、驚きです。 興味深い話なので完結したらまとめようと待っていたのですが、気がついたら7月から始まって8月末まで2ヶ月続く大作にw。ようやくまとめることができました。簡単にまとめると以下の流れになります。 味噌作りに活躍する微生物は、麹と酵母。さらに、麹が作る酵素も大事。それぞれの働きは次の通り。 続きを読む
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タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

前回の麹づくりのお話で、「機械による麹づくり」と「手作業による麹づくり」の話をしましたが、わかりにくかったのでもう一度説明します。

2012-07-11 12:22:58
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

「機械による麹づくり」では、蒸した米に種付機で麹菌を付けて、「製麹機」と呼ばれる機械に引き込みます。そうすると、原則として麹が出来上がるまでの足かけ3日間、コンピュータ管理の全自動で麹を作ってくれます。

2012-07-11 12:23:40
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

一般的なのは「円盤製麹機」といって、直径数メートルの装置に米を入れるものです。機械の写真は、下記ページの「麹づくり」にポインタを置くと見ることができます。http://t.co/DG5KY5lI

2012-07-11 12:24:20
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

一方、「手作業による麹づくり」では、麹菌を手作業で米に付けた後、製麹室で手作業による温度管理、麹づくりをします。この場合、足かけ3日間にわたって、人が何度も様子を見に行き、必要に応じて米をほぐして温度を下げたり、米を置く厚みを変えたりするなどの管理が必要です。

2012-07-11 12:26:28
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

機械による麹づくりは間違いがありません。均一の品質の麹が安定的に供給できるという面で、現代のみそ作りには欠かせないものです。一方、手作業の麹づくりはかなり重労働であり、職人の「麹を見る目」も必要なので、だれでもできる、というわけではないのです。

2012-07-11 12:27:04
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

しかし、熟練の職人が手作りした麹は、機械で作った麹に比べてやはり格段に品質が優れています。強制的に温度などを管理する機械に対し、手作業だと麹の状況に合わせたきめ細かい管理をするからでしょう。麹菌が生き物であることを実感させられます。

2012-07-11 12:27:37
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

さて、3日間の麹づくりの間に、麹菌はどのような動きをするのでしょうか。米に付けられた麹菌の胞子は4時間後くらいから発芽し、熱を出しながら成長していきます。最初は米粒の周りを取り囲むように白い菌糸が伸びていきます。これを「破精まわり(はぜまわり)」と呼びます。

2012-07-12 12:18:25
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

2日目くらいになると、米粒表面の水分がなくなってくるので、麹菌は米粒の中に菌糸を食い込ませ、水分を求めて米粒の中へ中へと入っていきます。これが「破精込み(はぜこみ)」で、破精込みの良いもの=良い麹とされます。

2012-07-12 12:19:04
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

菌糸を硬い米粒の中に食い込ませるところに麹菌の生命力の強さを感じます。余談になりますが、これと同じ原理が使われているのが鰹節です。鰹節づくりの最終段階では、麹菌と近縁のカビを使い、鰹の水分をどんどん消費させて、あのような水分のない、硬い鰹節を作っているのです。

2012-07-12 12:20:45
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

ところで、今回は統一して「麹」という字を使っていますが、コウジには「糀」という字もあります。「麹」は中国伝来の漢字ですが、「糀」は日本で作られた“国字”。米の粒に麹菌が繁殖して花を咲かせる(ように見える)、という雰囲気をよく表した字ですね。

2012-07-12 12:21:26
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

@wikiTORORO 感想ありがとうございます。まさに麹づくりもみそづくりも、子育てと同じです。かまってほしい時に放置すれば、麹やみそは「ひねくれて」しまい、決して良い製品にはなりません。本当に親=職人をよく見て育ちます。

2012-07-12 12:25:13
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

これまでもお話ししてきましたが、米を蒸してから麹として出来上がるまで、およそ44時間くらいかかります。作業日程としては、例えば月曜日の午後に蒸米作業をして麹づくりを始め、火曜日に必要に応じて麹の熱を下げ、水曜日の朝に麹として出来上がる、という手順になります。

2012-07-13 12:10:00
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

この「麹づくりに3日かかる」ということが、味噌屋の仕事を規定しています。週休2日制を前提とした場合、月曜日に米を蒸して水曜日に麹ができるので、その週の最初の仕込み(=大豆を煮て麹・食塩と混合し、タンクに仕込むこと)は水曜日ということになります。

2012-07-13 12:10:29
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

麹がなければみその仕込みはできないので、仕込みができるのは水・木・金の3日間に限られます(米を蒸すのは月・火・水の3日間)。週休2日だとあまりたくさん仕込むことはできないのです。

2012-07-13 12:11:31
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

ところが週休1日だとどうなるでしょうか。「土曜日に米を蒸し、日曜日に職人が様子を見に来て麹の温度を下げ(あるいはコンピュータにお任せし)、月曜日に出来上がった麹を使って仕込む」ということが可能になるのです。

2012-07-13 12:11:53
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

こう考えると、週休1日の場合、仕込み可能日は月・水・木・金・土の5日間に増えます(米を蒸すのは月・火・水・木・土の5日間)。休みを1日減らすと、仕込みできる日が2日増える、ということになるのです。

2012-07-13 12:12:51
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

味噌屋の作業で一番忙しいのは、やはり仕込みの日です。週休1日の会社でも、火曜日には仕込みはない・・・そこで、みそ業界の技術者が集まる会合やイベントは、ほとんどが火曜日に設定されています。その日なら集まれるだろう、ということで。

2012-07-13 12:14:02
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

先週までずっと麹づくりの話をしてきました。足かけ3日かけてできた麹は、蒸した(or煮た)大豆と食塩と混合され、タンク(or桶)に仕込まれます【ちなみに、このときに同時に酵母なども添加されるのですが、それについてはまた後日のお話とします】。

2012-07-17 16:55:41
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

さて、大豆、食塩と混合された後の麹菌ですが、麹菌は食塩に弱いのでそれ以上生育することはできなくなります。したがって、麹菌の仕事はここで終了。みその発酵・熟成の段階では、麹菌そのものは何ら関与しません。

2012-07-17 16:57:19
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

少々余談ですが・・・最近ブームの「塩麹」のつくり方として「麹と食塩と水を混ぜたものを数日間置いて“発酵”させる」と書かれているものがありますが、この表現には少々違和感があります。食塩水の中では麹菌は生育せず、したがって微生物による“発酵”は起きないと思うのです。

2012-07-17 16:57:42
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

みそ作りそのものには麹菌はまったく貢献しないのに、どうして私たちは3日もかけて麹を作るのでしょうか。それは麹菌が成長の過程で作り出した「酵素」が欲しいからです。これまで説明した「良い麹」も、まず第一に酵素の活性が高い麹のことです。

2012-07-17 16:58:17
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

酵素はたんぱく質であり、生物ではありません。食塩が高くても活性は失われないので、先ほどの塩麹についても、麹と食塩と水を混ぜた後、酵素によるでんぷんの分解などが進む、ということは言うことができます。

2012-07-17 16:58:43
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

もっとも「その酵素は生物である麹菌が作ったものだから、やっぱり“発酵”で良いのだ」という考えもあるのかもしれません。いずれにせよ、しばらく酵素について考えてみたいと思います。

2012-07-17 16:59:07
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

昨日“発酵”についてお話しした中で、「酵素による分解だけでは発酵とは言い難いのではないか」というツイートをしたところ、いろいろなご意見をいただきました。ありがとうございました。

2012-07-18 12:31:29
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

調べたところ、微生物が関与しなくても、酵素による変化を“発酵”と呼ぶケースもあることがわかりました。例えば紅茶を作るときなどの「酸化発酵」などです。@rfukaiさん、情報提供ありがとうございました。

2012-07-18 12:32:06
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