味噌作りで活躍する微生物の働き by タケヤみそ 【麹→酵素、酵母、乳酸菌】
その話をするためには、みその「発酵」について少々込み入った話をする必要があります。発酵の過程において、みそ中の酵母菌は、糖やアミノ酸を食べて、香り成分となるアルコール類を出します。これがみその風味の決め手となるのですが・・・
2012-05-08 17:47:14酵母菌はアルコール類以外に、二酸化炭素(炭酸ガス)も作り出します。できあがったみその中でも酵母菌は生きているので、もしみそをそのまま密封すると、酵母菌の出した炭酸ガスによって容器が膨張してしまうのです(さらに発酵が進むと、爆発寸前の風船みたいになります)。
2012-05-08 17:48:27ところが、酵母菌は自分でアルコールを作り出すくせに、自分の周囲のアルコール濃度が2%程度まで高くなると、自ら活動を停止してしまうという性質があります。この性質を利用して、酵母菌の動きを止め、みそを安定的に流通させるために、包装直前にこの「酒精」を加えているのです。
2012-05-08 17:49:15みそを出荷するときに、酒精(アルコール)を入れて酵母菌の動きを止めないと容器が膨張してしまう、というお話の続きです。アルコールを入れても、みその中の酵母菌は死ぬわけではありません。「活動を停止する」だけで、生き続けています。
2012-05-09 17:58:28したがって、酒精が加えられたみそに水などを加えると、アルコール濃度が薄まって酵母菌は活動を再開します。この性質により、ご購入いただいたみそに砂糖や酒などを入れて加工する場合、加熱しないと品質が不安定になりますのでご注意ください。
2012-05-09 17:59:08田楽みそなどのレシピを見ると「みそと調味料を鍋に入れ、加熱しながら混合する」と記載されている例が多いのですが、これは照りを出すなどの調理上の効果のほか、酵母菌を殺して品質を安定させる、という意味でも大切なことになります。
2012-05-09 17:59:56ちなみに、弊社の技術部長(現代の名工)は「アルコールを入れて酵母菌に眠っていただく」という言い方をよくします。お酒を飲みすぎると眠っちゃう人、皆さんのお近くにもいらっしゃいませんか? 酵母菌もそんな体質の持ち主なんですね、きっと。
2012-05-09 18:00:47みそ中の酵母菌の動きを止めて、炭酸ガスによる膨張を防ぐために入れている酒精(アルコール)ですが、もうひとつの効果として「ベストな時点で発酵を止められる」というメリットがあります。
2012-05-10 17:20:52先日もお話ししましたが、酵母菌は糖が大好きなので、みその中の甘み成分である糖をどんどん食べてしまいます。特に白系のみその場合、麹由来の糖分は大切な甘み成分なので、必要以上に酵母菌に食べられてしまうと、味のバランスが悪くなってしまいます。
2012-05-10 17:21:44酒精を入れて発酵を止めることによって、過発酵を防ぎ、味のバランスを保ったままお客様に商品をお届けすることができるのです。
2012-05-10 17:22:40一方で、酒精を入れることによる風味の変化が気になる方もいらっしゃると思います。もちろん、入れ過ぎれば異臭になります。しかし、みそにはもともと発酵によって発生したアルコールが含まれているので、適切な量の添加であれば酒精はみそになじみ、問題はないのです。
2012-05-10 17:23:34最後に余談っぽい話。酒精はそれなりに高価なので、メーカーとしても入れすぎるとコストが合わなくなります。その点からも、必要にして十分な量の酒精を使うことが大切なのです。
2012-05-10 17:23:58酒精=95度以上のアルコールって、体に良くないものではないのか、と思われる方もいらっしゃると思います。しかし、このアルコールは化学的に合成・製造されたものではなく、実はみその作り方と非常に似通った製造方法で得られているものなのです。
2012-05-11 12:38:30使用しているのは発酵アルコールといって、原料は「さとうきび」です。さとうきびの糖蜜を原料として、まず酵母菌にアルコールを作らせます。この発酵原理は、みその発酵と全く同じです。
2012-05-11 12:38:53出てきたアルコールを蒸留して得られたのが、弊社が使っている酒精、すなわち「非常に濃いさとうきび焼酎」です。結局、酵母菌が産生した=みその発酵で得られたアルコールと同じものを、包装時に少し加えているわけです。
2012-05-11 12:40:18もちろん、アルコールに過敏な体質の方は、生のままみそを召し上がらないように注意が必要です。しかし、みそ汁など加熱して調理する場合にはこのアルコールはほとんど揮発してしまいます。安心してお召し上がりください。
2012-05-11 12:41:17先週は、タケヤみその原材料名に記載されている「酒精」についてお話をしてきましたが、これと密接に関係している言葉(表示)があります。それは、特に最近みその売り場でも目立つようになってきた“無添加”という表示です。
2012-05-15 13:39:29“無添加”という言葉にはいろいろな意味合いがあるようですが、みその表示に関する公正競争規約によると、みその場合は【大豆、穀類、食塩、種麹菌及び発酵菌以外の原材料又はキャリーオーバー若しくは加工助剤を使用したものについて、「無添加」の表示をしてはならない】となっています。
2012-05-15 13:40:14例によって法律的でわかりにくい文章で申し訳ないのですが、この【 】の中を解釈すると、酒精を使っているみそに“無添加”と表示してはいけない、という意味になるのです。
2012-05-15 13:40:44実はタケヤみそは“無添加”と表示された商品は販売していません。それは、みそに関する限り、“無添加”表示にはあまり意味がないと考えているからです。そのことを、これから説明していきたいと思います。
2012-05-15 13:41:17みその添加物の歴史をたどると、確かに過去には漂白剤や保存料などの添加物が使われていた時代がありました。しかし、酵母菌の動きをアルコール(酒精)で制御する方法が普及してからは、こうした添加物を使用する必要性がなくなってきました。
2012-05-16 12:17:21タケヤみそでは現在、漂白剤や保存料等の添加物は一切使用しておりません。しかし、酒精を使っているので、商品に“無添加”と書くことはできないのです。
2012-05-16 12:17:51繰り返しになりますが、酒精の原料はさとうきびで、その糖蜜を酵母菌によって発酵させて得られたエタノールがすなわち酒精です。つまり、みその発酵過程でできたエタノールとまったく同じもので、その量を少し増やしてあげただけのことなのです。
2012-05-16 12:19:29もし人体に危険のある添加物を使っているのならば、タケヤみそはその使用をやめる方向で動きます。しかし、もともとみそに存在するものと同じものを加え、それでみその品質が安定するのであれば、酒精は悪いものではない、と私たちは考えているのです。
2012-05-16 12:20:20先日のツイートで、「酒精(アルコール)を入れないとみそ中の酵母菌が活動を停止しないので、酵母菌の産生する炭酸ガスで容器が膨張してしまう」というお話をしました。では、酒精が入っていない市販の“無添加みそ”は、この問題にどう対応しているのでしょうか。
2012-05-17 12:19:49