2012年9月4日、深夜から朝にかけての笠井潔さんのツイートまとめ

笠井潔 @kiyoshikasai

この対立関係は、日本だけでなく普遍的なものだろう。フランス革命でいえば、バスティーユ蜂起やヴェルサイユ行進などの大衆蜂起と、特権者やインテリによる三部会や国民議会の政治過程が併存していた。そして最後には、後者のヘゲモニーが前者のエネルギーを吸収し、あるいは簒奪する。

笠井潔 @kiyoshikasai

こうして革命は、憲法制定権力による共和国の樹立に終わった。簡単にいえば、インテリ集団が現場集団よりも最終的には優位なのだ。この矛盾を解決する方向は、明らかだと思う。インテリ集団が自己改善するのは不可能だから、現場の方がインテリ指導部など必要としないところまで成長するしかない。

笠井潔 @kiyoshikasai

松尾は両者の相互的な変革が必要だというような結論だが、これは優等生的回答で、なにもいっていないに等しい。今日では、そもそも古典的な知識人など存在しえない。同様に、その深みに神を宿したようなナロードも。

笠井潔 @kiyoshikasai

存在するのは大衆的知識人か知識人的大衆だけで、いずれにしても微細な濃淡の違いにすぎない。日本に限らず19世紀的な階級社会では、知識人は大衆に傲岸と卑屈の、大衆は知識人に憧憬と不信の二重の態度で臨んだ。この相互的なコンプレックスが順調に作動していれば、相互補完構造が可能となる。

笠井潔 @kiyoshikasai

しかし、いまやそうした前提は失われている。もう20年も前から、「教養の崩壊」が語られ続けてきたように。こうなった以上、インチキ知識人が大衆を取りこむのではなく、インチキ大衆が知識人の役割まで代行するしかない。松尾の結論とは違って、この順番は動きえないと思う。

笠井潔 @kiyoshikasai

時代が変わったから、こうなったわけではない。フランス革命の昔から、結論は同じだったはずだ。バスティーユ蜂起を実行した貧民プロレタリアが、貴族やインテリたちの政治過程を破砕して自己権力を樹立すること。

笠井潔 @kiyoshikasai

正統的な大学知識人の類に、グラムシは有機的知識人を対置した。インチキ大衆が知識人の役割まで代行すると、有機的知識人になる。グラムシが念頭に置いていたのはフォードのような人物だが、インターネット時代には誰もが有機的知識人だ。

笠井潔 @kiyoshikasai

無数の有機的知識人のあいだで競争が行われ、とりあえずのリーダーが生まれる。そのリーダーもまた競争にさらされ、別の人物にリーダーの地位を奪われる。あるいは、自分から譲る。このように不断に再組織化する組織がいまや可能だし、実際にあちこちで生じている。企業や政府が遅れているにすぎない。

笠井潔 @kiyoshikasai

19世紀のコミューンやアソシエーションやサンディカの理想も、ようやく実現できる条件が熟してきたのではないか。そのための試行錯誤、実例の蒐集と整理、教訓の共有が求められていると思う。

笠井潔 @kiyoshikasai

「右」とか「左」とかいう分類は、フランス革命時代の国民議会の議席配置に由来している。バスティーユ蜂起を敢行した人々は、右翼ないのはもちろん左翼でもない。左翼とは、原理的にも事実としても「議会内左翼」にすぎない。議会内左翼が街頭で闘う大衆の存在を簒奪し、主権国家の樹立に流しこんだ。

笠井潔 @kiyoshikasai

解放を求める大衆の闘争を、国家の問題に流しこもうとする「左翼」こそ、既成国家を保持しようとする「右翼」と並んで大衆蜂起の敵だ。左翼の党派主義と政治主義（国家権力奪取主義）は、必然的に革命党派と革命国家によるテロリズムの全面化に行き着く。

笠井潔 @kiyoshikasai

先に書いたように、社会民主主義的であろうとボリシェヴィズム的であろうと、国家を目指す左翼は公安権力（パブリックなセキュリティ権力）を否定しないばかりか、その全面化に邁進する必然性がある。ファシズム革命のような右翼革命も同じだが、これを乗りこえない限り先はない。