暗落亭苦来の怪談噺「猿の眼」(原作:岡本綺堂)
岡本綺堂の怪談作品「猿の眼」を、「じょしらく」の暗落亭苦来が怪談噺として語るという設定でアレンジしてみました。(原作初出:大正14年7月『苦楽』)
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@satakein
あくる日になって、父は孝平を呼びつけまして昨晩のできごとをすっかり語って聞かせますと、孝平も青くなって震え上がりました。こんなものを残しておくと良くない、打ち毀して焚いてしまおうと父が言い出しますと孝平も一も二もなく賛成して、薪割りの鉈でもってその猿の仮面を
2012-09-04 02:19:31
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@satakein
幾つにも打ち割っておいて、庭に熾した焚き火にくべてすっかり焚いてしまい、残った灰は隅田川に流してしまいました。
2012-09-04 02:22:05
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@satakein
「それにしてもあの夜店の奴はどうにも怪しいでげすな。宗匠に面を売った奴とおなじ者だか確かめてみましょう」と孝平は父を誘いだして、その日の夕刻に二人で連れ立って四谷まで出かけて行きましたが、その士族のひとの夜店はもうどこにも見当たりませんでした。
2012-09-04 02:30:44
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@satakein
ただ、孝平が「あそこで店を広げていました」と指差した場所があの亡くなった井田さんの実家の質屋のそばだったので、さすがに父もなんだか厭な気持ちになったそうでございます。
2012-09-04 02:34:26
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@satakein
母のほうはその後これといって変わったこともなかったのですが、だんだんに身体が弱くなりまして、それから三年後に亡くなりました。
2012-09-04 02:36:37
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@satakein
井田さんや母を脅かしたのは何物か、なぜあの猿の眼が青く光ったのか。またその面が失くなったり現れたりしたのはなぜか・・・。そうした事は結局何一つ分からずじまいでございました。
2012-09-04 02:40:53