第8話 「 Long 」
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Hika_Rarala
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【第8話の51】 「なんか、ありがとう!‥」(でも、あれ?)その紳士的な手は、指の太さはふつうなのに、力強く、そして清らかでした。「うそ! 私っ」(変身してたんだ)姿見の中の自分は、イリュージョン・ルビーでした。「えっと、つまり‥緊急事態っ?」「はい」手は、姿見から出ていました。
2012-09-16 16:10:25![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
【第8話の52】 その、手の人は、手短に説明しました。イリュージョン・ルビーは、秋本くんの機転と ささのみことの「ワープの能力」によって、斧と共に この部屋に移動し、変身してから目覚めたことを知りました。そして、その人にお礼を言うと、自覚に満ちた眼差しになり、きりりと言いました。
2012-09-17 14:47:00![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
【第8話の53】 「場所は? 地図見ても、わかんないと思うから」「気づきましたか」紳士的な声で言うと、手の人は姿見から、まっすぐ出てきました。とても真っすぐな背筋で、豊かな髪とマントだけが、そよ風になびいています。「不思議な人。あなたも、変身なの?」「いえ。私は、ふだん通りです」
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【第8話の54】 グラ‥ カタン。「地震か!?」大助が、カッと目を見開くと、未咲の部屋の木の天井が見えました――が、破られました。(!? 一瞬で!)バキッと天井を割いた魔物が1匹、続いて2匹。垂直に落ちるナイフのように、加速しながら迫ります。「しかも、巨体じゃねぇか!」――キン。
2012-09-17 15:12:32![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
【第8話の55】 仰向けのまま、カッと目を見開くと同時に剣を抜くシーララ。先頭の魔物の鼻先に触れる、切っ先。「あれ? 一時停止か!?」大助が左手をついて身を起こすと、コン。また何か、落ちました。部屋は揺れているのに、3匹とも、1ミリも動きません。「一体全体‥いや、まてよ?」
2012-09-17 15:29:46![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
【第8話の56】 先頭の魔物の2歩うしろで、2匹は、同時に青ざめました。「ヒェエエ~!」右の1匹が、田の字型の窓からビューッと逃げ去ると、「キエエエエーッ!」と、もう1匹も続きました。「逃げたのか?」「はい」ラファエルが答えたとたん、ボカンッと何かが砕け、放射線状に飛びました。
2012-09-18 15:07:35![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
【第8話の57】 ビュッ「危ね!」よけてから、大助は手を見ました。「血か!?」大助の目の前で少女が立ちあがり、カラン‥手から何か、足元の床に落ちました。それは、大助の両手を合わせたよりも大きな破片でした。「俺がよけた破片を、受け止めたのか!?」頷く少女をよく見ると、
2012-09-23 01:58:02![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
【第8話の58】 見覚えのある人物でした。「ブルー・ブーケ!」大助の脳裏に、お巡りさんと歩道橋をのぼるブルー・ブーケの姿が蘇りました。大助の手のひらの血は、その少女の手から落ちた小さな滴でした。「手‥」(大丈夫なのか!?)大助がバッとのばした手は、ラファエルの手の甲に触れました。
2012-09-23 10:23:06![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
【第8話の59】 それは、暖かな陽だまりのような、草木を揺らす涼風のような手でした。少女の手を包む両手は、力強い女性の手にも、優しく微笑む男性の手にも見えます。が、慈愛に満ちた女性的な横顔は、勇気と博愛に満ちあふれた若い紳士にしか見えませんでした。(これが、≪聖なる人≫なのか!)
2012-09-23 12:51:42![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
【第8話の60】 大助が手を放し、そういえば、という顔で見まわしますと、「残骸か!? 先頭のやつの」「そう。残骸よ」シーララは、透明なほうきと、ちりとりで、破片を集め終わりました。「吹っ飛んだのか‥」「そう。体は岩だから」――「見て!」ブルー・ブーケの手の傷が、完治しています!
2012-09-23 13:36:05![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
【第8話の61】 「すげぇな! 一瞬で」大助が驚いている間に、ブルー・ブーケはラファエルにお礼を言い、窓を開けようとしました。「その‥ですね、これを使ってください」ささのみことが白く光る物を置くと、扉になりました。「秋本くんをさがしに、いってきます!」ブーケは、旅立ちました。
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【第8話の62】 ――未咲のパパが部屋を出てドアを閉めた瞬間から、ブルー・ブーケが不思議な扉からワープで消える瞬間までにかかった時間。――それは、たったの3分27秒でした!
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【第8話の63】 未咲のパパとママは、窓のことで話し合っておりました。窓ガラスが無いのは不用心ですし、冬ですから、大事な娘が風邪をひくかもしれません。「う~ん‥。どの業者がいいんだろうねぇ?」「そうねぇ。もう一度、検索してみようかしら?」
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【第8話の64】 「ここは?」秋本くんは、瞬時に全体を見て、いつどうやって自分がワープしたのか、不思議に思いました。(!?)「ここは過去か! なるほど!」「そんなっ! 口に出したりしたら‥!」駆けてきたのは、ハルルでした。「ありがとう。来てくれる?」「はい。もしかして、わざと?」
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【第8話の65】 ささのみことは、≪不思議な扉≫が実は、≪ワープ路≫というゲートであることと、基本的な使い方を大助に告げました。「話は分かったけど、名前、紛らわしくないか?」「はい。わたくしも、そう思います」――「未咲と公嗣(こうし)は、突風で飛ばされたのかな? 今、どの辺だ?」
2012-09-23 15:17:53![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
【第8話の66】 息を切らして空中を走ってきたイリュージョン・ルビーは、のどの奥が渇き、足も疲れてきました。横にならんで走りながら、「少し、休みましょうか?」と声をかけたのは、あの、姿見から出てきた鎧の紳士でした。「でも、ハア‥助け‥に、ゼー‥ハア‥」「どうぞ」「え?」
2012-09-23 21:39:23![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
【第8話の67】 空中にしゃがみかけたイリュージョン・ルビーに差し出されたのは、花弁のように白い清楚なティーカップでした。「いい香り!」ごっくん「あ。いただきます」「これは、秋本くんと大助くんから いただいたものです」「2人から?」ルビーは、中の紅茶とティーカップを見つめました。
2012-09-23 21:47:38![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
【第8話の68】 ――「何やら話し合っているようですね」水色の小鳥が言うと、「良いことです」アキハノミコトが、威厳に満ちて言いました。――「じゃあ、ラファエルさんの?//」「はい。ティー・カップは、そのときに交換したものです」冬の冷たいそよ風が、2人の髪を揺らしました。
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【第8話の69】 (あれ? なんか、落ち着いた。これ、飲んだからかな?)「秋本くんが育てて収穫したハーブと、大助くんが買ってきたオリゴ糖です。紅茶、おいしかったですか?」「うん!」ごくん。イリュージョン・ルビーは、最後の一口を飲み干すと、真剣な瞳になって、尋ねました。
2012-09-23 22:35:23![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
【第8話の70】 「2つの力が合体すると、よりパワーUPするのかな?」紳士は、少し考えてから、言いました。「場合によります」「場合?」―「澄んだ水を見たとき、花を浮かべて優雅なひとときを過ごす少女もいれば、浮かべた おもちゃが沈んでしまい、考え込む少女もいます」――「選べるの?」
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【第8話の71】 「もちろんです!」鎧の紳士は、静かにそう断言すると、イリュージョン・ルビーの手をとり、その指にはめられている指輪を、金の鍵へと近づけました。(そういえば! 私っ‥)自分がペンダントをさげていて、そのペンダント・トップが例の≪金の鍵≫であることを思い出しました。
2012-09-23 22:54:20![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
【第8話の72】 ――指輪には、ルビーが1つ付いて、その左右には、細かな装飾が彫られていました。(お祖母ちゃんの指輪に、力が!?)カチ。指輪の中央のルビーがペンダントの鍵に触れたとたん、‥カッ! 辺りは光に包まれました。「うっ」2秒後、再び目を開けたイリュージョン・ルビーの前に、
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【第8話の73】 「てっ、敵!?」プスゥゥゥ‥煙が上がり、こんがりと――マンガのように黒こげになった魔物が2匹、浮かんでおりました。イリュージョン・ルビーは一瞬、目が点になりましたが、すぐにキリリとした表情になって、尋ねました。「いつ‥なんで、襲ってきたの?」「『あれ』のためさ」
2012-09-24 14:50:11![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
【第8話の74】 「『あれ』って? な、何をさがしてるの!?」―「正義の野郎め、毒も魔力も効かねえ‥」「フフフ」――この会話の隙に、鎧の紳士が気配を消し、ひらりと舞い、数メートル下の空中へまっすぐに降り立ちました。――「!」ラファエルは少女を抱え、ビルの屋上から見ていました。
2012-09-24 14:59:18![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
【第8話の75】 「大丈夫ですか?」ラファエルがそっと尋ねると、腕の中の少女は力強く首を振り、ラファエルの服にしがみつき、顔を埋めました。それに応えるように抱きしめながら、小学生の頃の未咲を思い出し、ラファエルは、現在の未咲=イリュージョン・ルビーに視線をもどしました。
2012-09-25 14:44:04