帝國憲法に據る統治權とは何ぞやの纏め

往々世間一般に云はれたる 天皇の統治權は、憲法の條文に據りて「君主の權力を制限せしもの」と實しやかに解され、其れがなにゆゑか信じらるゝに至れり。然るにそは「君主の權力の制限」とは正に國民主權的發想とならむや。  斯くの如き疑問に就きて、淸水澄博士は如何に之を說明せしか、著書「憲法」より統治權に關する部分の一部を拔粹し茲にて撰し公開せむ。
4
くゐかう(キコー) @kisling45

憲法・清水澄博士 http://t.co/uu7wgc0f 國法學第一編憲法篇・清水澄博士 http://t.co/iv6BuizM 國法學第一編行政篇・清水澄博士 http://t.co/C4D3hGVZ 國法學・美濃部達吉博士 http://t.co/zXUTh7Os 無効論

2012-09-05 23:12:24
くゐかう(キコー) @kisling45

淸水澄博士著「憲法」第一編總論、第十一節立憲國、五十一丁曰く、(畧)我二十二年發布の憲法は、立憲國たることを表彰する憲法たるなり。之を證する條文は憲法第四條なり、同絛に曰く、天皇は統治權を總覽し此憲法の條規に依り之を行ふと、―― 無効論

2012-09-06 13:57:11
くゐかう(キコー) @kisling45

――既ち此條文は統治權を行ふに各々形式あることを示すものにて、其形式に從て統治權を行ふは既ち立憲政體の本領たるなり。或は此條文に依りて立憲國の憲法は、君主の權力を制限するものと云ふ人あれども、若し他に君主を制限する力あるときは、其力の存する所權力の存する所にして、―― 無効論

2012-09-06 13:58:40
くゐかう(キコー) @kisling45

――君主は最早統治權の主體たらざることとなるなり。既ち憲法第一條の天皇之を統治するの明文に背くものなり。殊に、此憲法第四條も憲法中の一條として、君主に依りて制限せられたるものなれば、此條文が君主を制限するものとは考ふることを得ざるものなり。―― 無効論

2012-09-06 13:59:26
くゐかう(キコー) @kisling45

――或は又此條文に依り統治權の主體は制限を受けず、唯其作用のみ制限を受くるものと說く人ありと雖も、作用は主體の結果にして、主體は無制限にして作用のみ制限を受くることは想像し得られざることなり。―― 無効論

2012-09-06 14:00:40
くゐかう(キコー) @kisling45

――故に立憲政體の特色は、君主に制限を加ふるに非ずして、統治權の作用に一定の形式を定むるに在るなり。 無効論

2012-09-06 14:01:23
くゐかう(キコー) @kisling45

淸水澄博士著「憲法」第二統治權の主體、第二節統治權の要素、第三章統治權の主體としての天皇の性質、六十五丁より曰く、(畧)天皇は統治權の主體なるが故に、之を行使することを得るは言ふ俟たざるなり。既ち天皇は統治權の「體」と「用」とを倂せ有するものなり。―― 無効論

2012-09-06 16:32:14
くゐかう(キコー) @kisling45

――是れ憲法第四條後段に之を行ふと云ふ文字ある所以なりとす。(畧)統治權の「體」と「用」とは、相分離して存在すべきものにあらず、何となれば、權力とは凡て活動を意味し、一定人の意思が他人の意思を强制羈束するの謂に外ならざれば、活動せざる權力は之を想像する事を得ず。―― 無効論

2012-09-06 16:33:17
くゐかう(キコー) @kisling45

――活動せざる力あるとせば、權力にあらざるなり。隨て其權力の主體たるものは、同時に亦之を行使し得べきものならざる可らざるなり。既に斯の如く統治權は、體と用とを分ち得べきものにあらざるが故に、―― 無効論

2012-09-06 16:33:59
くゐかう(キコー) @kisling45

――統治權にして制限なきものとせば、其權力の行使に付ても亦制限せらるゝの理あらざるなり。憲法第四條に「憲法の條規に依りて之を行ふ」とあるに依り、天皇の權力(體)には固より制限なきも、之を行ふ(用)上に於て制限を有するものなりと說く者あれども、―― 無効論

2012-09-06 16:34:34
くゐかう(キコー) @kisling45

――是れ誤謬の見なり。憲法第四條に所謂憲法の條規に依りて之を行ふとあるは、決して論者の言ふが如き制限の意味を有するものにあらずして、此條項に依りて天皇の統治權の主體たる行爲は、天皇の一私人たる行爲と之を分たむとするの趣旨に出でたるものにして、―― 無効論

2012-09-06 16:35:13
くゐかう(キコー) @kisling45

――畢竟立憲君主國の特色を闡明したるに過ぎず、元來立憲君主國と專制君主國との差は、通俗に考ふる如き君主の權力に關する制限の有無にあらずして、統治權の主體たる君主と、一私人たる君主とを分つと否とに存するものなり。―― 無効論

2012-09-06 16:35:40
くゐかう(キコー) @kisling45

――既ち立憲君主國に於ては、憲法上統治作用の形式を明かにし、君主の統治行爲は總て其形式に依るものなることを示し、之に依らざる所の君主の行爲は、總て一私人たる君主の行爲と認むべきものなり。―― 無効論

2012-09-06 16:36:06
くゐかう(キコー) @kisling45

――之に反し專制君主國に於ては、憲法を以て斯の如く統治作用の形式を詳細に定むることなきが故に、一私人たる君主の行爲も、統治權の主體たる君主の行爲も、之を區別するの標準なく、隨て臣民は、君主が發したる命令は如何なる形式によるも凡て之を遵法すべきものなり。 無効論

2012-09-06 16:44:41