@i_rony_ #twnovel

12/10/01~
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いろにー @i_rony_

気まぐれな超能力者は言った。「何でも一つ願いを叶えてあげましょう」男は不老不死にしてくれと即答する。しかし、その背中からは翼が生えてきた。「なんでまた」男は驚きながら尋ねた。すると超能力者は答える。「正反対の願いを叶えようと思ったんですけどね」 #twnovel

2012-12-24 00:09:58
いろにー @i_rony_

夜なのに、君がいない。下ろしたての靴みたいに新鮮で、なのに身動きが取りにくくて、ちっとも君に出会えない。醒めた空気の中、歩き疲れた夜の底、立ち止まって見上げた空では、やっぱり雲が月を隠していた。僕は靴を脱ぎ捨て、夢だと信じて目を閉じた。 #twnovel

2012-12-17 00:25:09
いろにー @i_rony_

不思議なんだよ。登ろうと必死になっているその壁は、見上げる度に高くなっているんだ。君を忘れられないのは多分、その向こう側に君が居なくて、壁そのものが君だからなんだろう。今までとは違う。#twnovel ねぇ、その口を開いてよ。返事がよく聞こえなかったから。

2012-12-12 00:50:38
いろにー @i_rony_

図書館に、優秀な機能を備えた検索機が設置された。それは求めている本のあらすじは勿論、作品の主題や筆者の主張までも表示するというものだ。設置されて直ぐはその検索機を目指す長蛇の列が常に出来ていた。しかし利用者は次第に減り、ついには誰一人として使う者はいなくなった。 #twnovel

2012-12-02 06:53:58
いろにー @i_rony_

電気を消し、ベッドの上で伸びをすると、冷たい水に手が触れた。埃を被った卓上ライトを点けてそちらを見る。古本屋でまとめ買いをした、暫く手を付けていない本が積んであった。仰向けのまま手にしてページを捲ると、文字まで滲んでいる。もう泣き疲れていたのだと初めて気がついた。#twnovel

2012-11-27 00:05:58
いろにー @i_rony_

道の半ばに住んでいる、その灰色の子は誰ですか。もしかして僕にしか見えていませんか、いやあ貴方にも見えている筈です。勇敢な言葉で身を纏い、寒さを凌いでいるだけの貴方にも。道を歩く価値を問う疑念が。 #twnovel

2012-11-23 23:56:47
いろにー @i_rony_

涙。こちらから別れを告げたというのに、何故か涙が止まらない。左隣にまだぼんやりと残る君の影。そこへ懐かしい風が吹く。君と出逢ってから、涙を流したことは一度も無かった。それは、多分、幸せだったからなんだろうな。なんだか、悔しい。#twnovel 「振ってからおのみください」

2012-11-20 22:20:00
いろにー @i_rony_

眠れないのかい、それなら此方へおいで、大丈夫。何か気になるのかい、もう安心して、気にする必要は無いよ。これから夜が来るだろう、何もかもを包み込んでいくだろう、でも心配しなくて良い、どうせ何も見えやしないんだから。そう、いつもと変わらず目を瞑ってだけいればいいさ。 #twnovel

2012-11-18 23:35:42
いろにー @i_rony_

持ち時間は既に切れた。相手の妙手を前に、決断できずにいた。秒読みの声。今動かなければ、負ける。張り詰めた空気。しかし手が読みきれない。唾が喉を通る音。自分の負ける道筋ばかりが見える。諦めかけたちょうどその時、相手は自信に満ちた顔で持ち駒を手にした。 #twnovel

2012-11-16 16:31:20
いろにー @i_rony_

男には、その意図が分からなかった。国語の試験、問題文として載っている物語の主人公は紛れもなく男自身だった。そこには数日前男に起こった事が克明に描かれている。傍線は女性の台詞部分。女性の心情を答えよ、というのだが、それが分からないから物語は続いていくのではないか。 #twnovel

2012-11-14 08:32:34
いろにー @i_rony_

頬に残った水滴が風をきる。もう時間が無い。いっそうペダルを強く踏み込む。小学生の笑い声。身を乗り出した。道行く体を華麗によける。冬の朝を無心に進む僕は、魚のようだ。 #twnovel

2012-11-13 08:37:15
いろにー @i_rony_

数日ほど前から、部屋に奇妙な事が起きている。机の引き出しを引けども、僅かに隙間ができるだけでそれ以上は開かない。チョコレートが消えていたこともある。昨日は床に二本の黒い破線が続いていた。さて、学校へ行く為にリュックを背負ったが、背中がムズムズするのは何故だろう。 #twnovel

2012-11-12 00:10:14
いろにー @i_rony_

「もう戻ることはできないよ、それでも良いのかい?」もう何もかも退屈になったから、これくらいの刺激が必要なのさ。僕らは運命を決めようとしているのに、何処か楽しげなのは何故だろう。僕は立ち上がり、黒を混ぜた。 #twnovel

2012-11-11 08:59:57
いろにー @i_rony_

心の焦げ付いた臭いが鼻を突く。口を開けてみてもいつかのように笑える筈は無く、ただ端からふやけた言葉が漏れていくだけだ。両腕をぶらんとさせながら明後日を見て、爪先のほうから足が溶けていくのを見ない振りした。 #twnovel

2012-11-10 07:50:42
いろにー @i_rony_

舞台の幕があがる。愛を叫び、夢を語り、勇気を奮い、友と笑う。物語に色を塗る、その手には目に見えない何かが握られている。そうさ、絡繰人形なんかじゃない、僕は人間だ。そう言って静まり返った舞台に、客席からひとつの嗤い声が投げ入れられた。 #twnovel

2012-11-09 00:25:19
いろにー @i_rony_

合流する高速道路、君と僕。望むならばどこまでも続いていく。道の先だけを見て話をしよう、顔が見えてしまうから。それに、そこから落ちたらまっさかさま、夢から覚めてしまうよ。こうしていたいのは君だけじゃない、夜は二人のものなんだ。 #twnovel

2012-11-08 00:53:46
いろにー @i_rony_

「鍵盤の上へ布を掛けておくみたいに、君を不必要に外へ出したくないんだ。」勿論、休日に遊ぶという彼女の提案を断ったのには他に理由があるのだが、咄嗟にしては上手く誤魔化せたと思う。しかし、彼女の不満そうな声は飛んでくる。「じゃあ、私は自力で音を出せないってこと?」 #twnovel

2012-11-07 07:19:25
いろにー @i_rony_

「帰り道は明日へと続いている筈なのに、君は毎朝逆走している。変だと思わないかい? でもよく考えると、つまり、世界が変わらないまま、君が変わったってことなんだ。毎日、若しくは毎晩、君だけが変わっているんだ。そう、いつも道の先には明日があるってことなんだ。」 #twnovel

2012-11-06 00:24:53
いろにー @i_rony_

君の背中に付いた眼が、涙を溜めて僕を見つめる。空咳をするみたいに君が笑うと、その度に僕は苦しくなる。ようし、と言って立ち上がると「何かあったの」だなんて、気付いてないのは君の方だよ。僕は背中に付いた口で溜息をつく。 #twnovel

2012-11-05 00:19:23
いろにー @i_rony_

窓の向こう側、それは確かに、確かに美しい。だがしかし、押しのけられたカーテンが、ひだを作って泣いている。こんな筈では無かったのだ、こんな筈では。世界は残酷だ、幸せを喜ぶのは難しい。僕は今日も部屋に籠る、誰かを幸せにするために。 #twnovel

2012-11-03 23:48:03
いろにー @i_rony_

「そう、役に立つのは貴方だけ。さよなら。」そう言い残して君は捨てられた。僕だけが口に運ばれる。薄れゆく意識の中、僕は心の中で叫んだ。君が居なければ僕は此処に居なかったんだ。決して君は役に立たない存在なんかじゃない。いつかまた、一緒になろう。 #10MTWN

2012-11-02 23:10:12
いろにー @i_rony_

何処だ何処だ、明日は何処だ、見つからないまま陽が落ちる。何処へ何処へ、僕らは何処へ、何も知らされず進む時。家じゅうひっくり返したが、一度も姿を見ていない。何もできずにいる身体を、迫り来る過去が押し潰す。何処だ何処だ、明日は何処だ。 #twnovel

2012-11-01 21:36:39
いろにー @i_rony_

「もう戻ってはこれないよ」遠い声を背に、日付を超えた。目の前に広がる闇は紫を含み持っている。そのうち胸躍る暇も無いほどに加速して、一気に朝が押し寄せるだろう。鳴呼、楽しみだ。昨日への忘れ物にも慣れてしまった僕は、いつまでもこの瞬間を忘れないでいられるのだろうか。 #twnovel

2012-10-31 22:50:44
いろにー @i_rony_

言葉を売り歩いていると、静かに女性が近づいてきた。買いたいのかと問えど返事は無く、言葉一つ分の代金を黙って差し出してきた。成る程と思い、何を選ぶべきか迷っていると、彼女は急に口を開いた。「さて、貴方は今何を思っているのか教えてもらいましょうか」僕は言葉を失った。 #twnovel

2012-10-30 23:43:02
いろにー @i_rony_

夜空を見上げると、丸い穴がぽっかりとあいていた。長年調査を重ねて辿り着いたのは、自分はその穴から落ちてきたに違いない、ということ。姿を変える二十九回のうち、丸くなるその一回にだけ脱出するチャンスがある、ということ。空を飛ぶ方法については現在調査中である。 #twnovel

2012-10-29 23:30:45
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