ヨウカイスレイヤー第五話より「バット・フー・イズ・ザ・イービル・ヨウカイ」#4

第五話「フラワリング・サツバツ・ナイト」 ファンタズマゴリア・ケイム・フロム・ジゴク #1:http://togetter.com/li/352567 バット・フー・イズ・ザ・イービル・ヨウカイ #1:http://togetter.com/li/361069 続きを読む
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第五話「フラワリング・サツバツ・ナイト」より「バット・フー・イズ・ザ・イービル・ヨウカイ」#4

2012-09-15 23:13:13
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「アンタのとこは出不精ばかりね。今度は全員で焼き立てを食べに来なさいよ」「ではその時までにフライドチキンをよろしくお願いしますわ」サクヤはミスティアといくつか言葉を交わすと、カバンに蒲焼きを詰め込み屋台を後にした。彼女と入れ違いに二人のヨウカイが屋台へ入った。1

2012-09-15 23:14:49
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一人はアヤ・シャメイマル。「ウナギソバ」と力強い書体で書かれたノボリに身を預けるような体勢で立ち、トークンをカウンターに立てた。「早速入荷されたようですが」アヤは笑みを浮かべながら言った。「いらっしゃい。確かにアナタは美味しいかもしれないわね」「お褒めに与り至極光栄」2

2012-09-15 23:16:08
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ミスティアやカラス天狗・ヨウカイであるアヤたちにとって、ヤキトリなど同族が食糧とされていることは死活問題であった。現在はバイオ猛禽が食用に飼われているのだが、それを知らないミスティアの怒りは実際甚だしい。ウナギ屋台を始めたのもヤキトリ屋台を潰すことが目的だ。3

2012-09-15 23:18:35
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リヤカーを改造した屋台の向こうには小型のソバ茹で機があり、大量の水蒸気を放出している。機械の上には竹筒が何本かぶら下がっており、サヴァイヴァルめいた方法でコメを炊いているようだ。隣の屋台にも客がまばらにおり、オーガニック・ウナギが香ばしく焼けている匂いが漂う。4

2012-09-15 23:21:33
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やがてすぐに、ウナギの乗ったソバ・スシがアヤともう一人のヨウカイの前に出された。食欲をそそるアミノ酸の匂いが湯気とともに辺りを支配し、客を磁石めいて引き付ける。(イヤーッ!)(グワーッ!)ノレンの向こうでサンシタの悲鳴が上がるが、誰も気に留める者はいない。5

2012-09-15 23:23:45
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「……何も頼んでないのだけれど?」湯気の向こうからもう一人のヨウカイが怪訝そうに尋ねた。「そもそもメニューすらないとは一体」不満をこぼすそのヨウカイは、違法改造されたブレザーを身に纏っており、その頭にはウサギ耳めいたアタッチメントが取り付けられ垂れ下がっている。6

2012-09-15 23:26:36
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「そういう所ですからね、ここは。それは私の奢りです」アヤは箸を二組取り出し、一組をそのヨウカイに手渡す。「ドーモ。ところで取材とは」「とりあえず食べましょう。話はそれからでも」アヤはすでにそれらをもぐもぐと咀嚼している。スシはその半分が皿の上から消えていた。7

2012-09-15 23:28:48
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「そうですね」彼女は胸ポケットから取り出しかけた『まろやかさ十八』と印字されたタバコをしまい、奇妙な組み合わせのソバを食べ始めた。キョート風と呼ばれる色の薄い汁に脂ののったウナギが浮かんでいる。ウナギスシにすれば良いのでは、とそのヨウカイは思ったが黙っていた。8

2012-09-15 23:30:47
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彼女は横目でアヤを見る。左手に箸を持ち、ソバ・スシを丁寧に口に運んでいる。浮遊しているドンブリの下には超常的な風が渦巻き、食べやすい角度に調整されている。これはアヤのユニーク・ジツによるものだ。自由な右手でペンを持ち、何かをノートに書きつけているのが見える。9

2012-09-15 23:33:26
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((おそらく取材内容はあの日の異変についてか……))このヨウカイ、ウドンゲインはスシを咀嚼しながら思いを巡らせる。((あの事件は世間的に無かったこととなっているはずだ。我らが計画は成功し異変はすぐに終わり、それを知る者すら稀。今ここで始末しておくべきか……))10

2012-09-15 23:34:59
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ウドンゲインは立ち上がり、アヤを店主ごとゲンソウ・ジツで幻覚を見せると、頭を掴み目と目を合わせゲンワク・ジツを最大解放。目、鼻、耳、口から血を流すアヤを地へ打ち倒し、心臓へダンマクを打ち込み結界ごと破壊して殺す。そして……否。彼女は邪悪なイメージを打ち消す。11

2012-09-15 23:37:06
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殺してはならぬ。あの師匠と姫様を打ち倒した忌むべきスキマ・ヨウカイが見ている可能性は否めない。そもそもこの天狗がどこまで知っているかさえ不明だ。エイエン・テイの話の可能性の方が圧倒的に高い。しかしヨウカイスレイヤーと実際裏で繋がっている可能性もある。12

2012-09-15 23:41:25
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((自分の境遇も考えろ。今勝手な行動を起こしてムラハチにあえば、待っているのは今度こそ死だけだ))ウドンゲインは気を紛らわすようにソバをかきこんだ。続いてスシをマッチャで流し込む。そして大きく深呼吸を繰り返した。胸ポケットに手が伸びたが、五秒考えた後その手を引っ込めた。13

2012-09-15 23:43:19
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「ところで、お仕事は順調にいっておられますかな?ウドンゲイン=サン」アヤはタマゴ・スシを一つ食べながら訊いた。ソバの入っていたドンブリはすでに空だ。「アイエッ!ああ、いやおかげさまで順調であります」不意に声を投げかけられたウドンゲインの思考が一瞬停止し、すぐ回復した。14

2012-09-15 23:47:13
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ミスティアは隣の屋台に出向いていていない。タイミングを狙ったのだろう。「ここ数ヶ月の販売実績は凄まじいものがありますね。やはり訪問販売が功を奏したと言えるでしょうか?」「訪問販売は実際好評です。商業的施設内にある病院からの大量注文が特に」ウドンゲインは落ち着いた調子で答える。15

2012-09-15 23:49:38
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インタビュー中、ペンを握っているアヤの右手は残像を残しながら動き続けている。ノートにはウドンゲインらしき絵やバイオミミズが這いずった跡めいて繋がった文字、奇怪な記号や「バリキボーイ」「モリヤ」「大都会」「ナックル」などの意味をなさない文字列が次々と形成されてゆく。16

2012-09-15 23:52:08
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ウドンゲインは安堵の息をつく。隣の屋台にいる数人の客からは妙な動きは感じられず、ソバを啜る音しか聞こえない(隣は人間客の専用である)。どうやら自分の思いすぎのようだろう。彼女は最後に残っていた好物であるイカのスシを食べ、マッチャを飲み干した。17

2012-09-15 23:54:56
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屋台の近くでマケグミ達の喧騒が聞こえてくる。(ナマッコラー!)(アバーッ!)ヨタモノの悲鳴が近くでするが、アヤは気にも留めない。彼女もカースト最下層でのチャメシ・インシデントを新聞記事として発行するほど暇はないのだ。アヤは紙を小さく折りたたみ、帽子の中に詰めた。18

2012-09-15 23:55:28
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「本日はこれで。また後日そちらへ寄らせていただきたく」「え……ア、ドーモ」「それでは」アヤは去って行った。「……」取り残されたウドンゲインはあっけにとられていたが、自身の危惧していたインシデントが起こらなかった事に気付き、胸をなでおろした。その頭上をナイフが通過する。19

2012-09-15 23:58:59
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カラン。青いグリップのナイフがウドンゲインのタタミ五枚分向こうに落ちる。ナイフは瞬間的に消失したが、異常に発達した彼女のヨウカイ視力はそのナイフに小さく刻印された文字を読み取る!だらしなく垂れ下がっていたウサギ耳がピンと跳ね上がった!ウドンゲインは後方へ駆け出す!20

2012-09-16 13:25:13
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「イヤーッ!」「アバーッ!」背後にいたヨッパライを殴り飛ばすと、ウドンゲインはダンマクを発射!チャカ・ガンを模った指の先から大陸破壊ニューク・ミサイルめいた弾道で飛ぶダンマクは、五つに分裂しながら屋台の向こう側に消え……炸裂!KABOOOOM!爆風が辺りを覆う!21

2012-09-16 13:28:51
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「……おや、これは一体」ダンマクの着弾点付近にいた、ナイフを構えた長身の少女は訝しむ。その姿は一瞬で消え、先ほどまで彼女がいた場所を銀色の煌めきが通過した。さらに飛来するウドンゲインのダンマク!「イヤーッ!」そこに再度銀色の煌めき!カタナだ!カタナがダンマクを切断!22

2012-09-16 13:38:28
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「イヤーッ!」「イヤーッ!」ナイフの少女、イザヨイ・サクヤは頭上からのトビゲリ・アンブッシュを二連続バク転で回避!着地と同時にナイフを投擲!「イヤーッ!」アンブッシュの主であるウドンゲインは残像を残しながら空中で前方宙返りをし、後方からの斬撃とともにナイフを回避!23

2012-09-16 13:42:28
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ウドンゲインは倒れ伏すヨタモノたちの間に着地し、因縁の二者を睨む。「ドーモ、ウドンゲイン=サン。イザヨイ・サクヤです」サクヤは西洋の甲冑騎士的なオジギでアイサツをした。「ドーモ……コンパク・ヨウムです」カタナを手にし、目を真っ赤にさせた少女もアイサツをする。24

2012-09-16 13:44:37