【さらに稲妻が】福間健二 2factory11

福間健二 @acasaazul

きみは雷が嫌いだった。稲妻が光ってその首筋とＴシャツの胸から水晶を奪いとってから怒る機械の音が鳴りひびくまでの時間を測るのは、手首を「ぜつぼう」でつかむ見知らぬ娘。その距離を、幽霊列車の窓からぼくと飛びおりる赤いレインシューズの残像が縫う。（さらに稲妻が１）＃2factory11

福間健二 @acasaazul

もう普通じゃない。ちがう、普通に戻ろうとしてる。どっちだとしても、残像の赤がまだガラス管のなかで跳ねかえる。バス停の標識の変わった国立市東四丁目の、実験室。「混沌、宇宙、浸透」をひとつにつないで、謎。きみのなかの見知らぬ娘が夢見るすべて。（さらに稲妻が２）＃2factory11

福間健二 @acasaazul

きみと見知らぬ娘。信じる力と発明する力。どちらもまったく輝きのない季節を生きる必要があった。たとえば、ぼんやりと進学クラスのいちばん後の席にきみ。計算の途中で彼女は眠っていた。問題。大きな虫と遊ぶ。花を食べる。どっちがおいしい仕事？（さらに稲妻が３）＃2factory11

福間健二 @acasaazul

罠だと見抜き、答えをはぐらかしていると、最後は包帯をまいた「ぜつぼう」に打ち明け話を聞かされる。いつまでも迷えということか、この現実。ショートパンツとスカート。どちらも機能に限界があり、匂わないもうひとつの現実が平然と笑みを浮かべている。（さらに稲妻が４）＃2factory11

福間健二 @acasaazul

手首と手首。首筋と首筋。胸と胸。だれのでも、そして大きさはどうでも、棒状のものが夢見るすべてに愛撫の詩が隠されている。作られるものと生まれるもの。問題はどう複雑になるのか。三人の姉を殺す。三人の姉の男たちを誘惑する。どっちが大変？（さらに稲妻が５）＃2factory11

福間健二 @acasaazul

攻撃する。誘惑する。意欲的なふりして両方を選ぶ。でも、いちばん地味なズボンに負ける。必要以上に払ってもお釣りをくれないリアリズムだ。赤みをおびる「主体」を曖昧にして、暗い空、雲がゆっくりと動く潜伏期。ドアをあけない方の手は何をする？（さらに稲妻が６）＃2factory11

福間健二 @acasaazul

世界に自分を入れる。でも、その第一頁は、寝椅子と壊れたテーブルとラジオがあるだけの部屋。目をつむる。自由にしていい「少年」が報酬だ。もう何がおこってもおかしくないけど、I wanna be made myself とラジオのレディー・ガガ。（さらに稲妻が７）＃2factory11

福間健二 @acasaazul

きみが行方不明になって、秋。見知らぬ娘がぼくに会いにきた。ヒントは、アマゾンで買えるＣ・Ｂの本の一〇九頁に。赤いレインシューズ、七九〇〇円。幽霊列車、雷鳴がＪＲ中央線を地獄行きにした。その闇から、でも、彼女と飛びおりる体は盗めない。（さらに稲妻が８）＃2factory11

福間健二 @acasaazul

目をあける。つまずく赤。「気がつかなかった。もう秋だったのね」と言う人の、影に、雑音がこびりつく。むりに恋をしていた、その副作用。でも、自分の愚かさに復讐される夢は終わって、野菜スープの味がわかってくる。ここからは、手品が通じない。（さらに稲妻が９）＃2factory11

福間健二 @acasaazul

さらに稲妻が。「それでも、愛している」。それでも、逃げる。落ちてくる巨大な鳥と火薬の匂い、過剰という病いをくぐって、来てしまった最終頁。最後の音で、小さな水晶の耳がよみがえる。ほんとうに楽しいのはこれからなのに、きみは何を怖がってる？（さらに稲妻が10）＃2factory11