〔AR〕その14
「まぁ、仕方ないんじゃない? そもそも、連中は地底から出てくることは多くないから、情報の重要度としてはそれほど高くないでしょう」 そこで話は一度途切れ、阿求とアリスは、同時に紅茶の残りを干した。 「そうですね。危険性さえわかれば良いだろうと言うことで、幾分かは妥協しています」
2012-10-05 22:28:06「まぁ、仕方ないんじゃない? そもそも、連中は地底から出てくることは多くないから、情報の重要度としてはそれほど高くないでしょう」 そこで話は一度途切れ、阿求とアリスは、同時に紅茶の残りを干した。 「そうですね。危険性さえわかれば良いだろうと言うことで、幾分かは妥協しています」
2012-10-05 22:28:06同時にカップをソーサーに置いた阿求とアリスだったが、アリスはカップから手を離すとともに、ふと自らの滑らかな細い顎を撫でた。 「地底……地底ねぇ」 「どうかされましたか?」 「いえね……地底から怨霊が沸いて出たときの事を思い出して……うん……あっ」 「あ?」
2012-10-05 22:28:29同時にカップをソーサーに置いた阿求とアリスだったが、アリスはカップから手を離すとともに、ふと自らの滑らかな細い顎を撫でた。 「地底……地底ねぇ」 「どうかされましたか?」 「いえね……地底から怨霊が沸いて出たときの事を思い出して……うん……あっ」 「あ?」
2012-10-05 22:28:29「ちょっとね、次にやる人形劇がまだ決まってなくて、どうしようかなっと」 アリスの人形劇は、人里のイベントとしてはもはや定番の一つであり、固定ファンも多い。開催は不定期であり、催されるときは里の掲示板に告知が張り出される。
2012-10-05 22:31:21「ちょっとね、次にやる人形劇がまだ決まってなくて、どうしようかなっと」 アリスの人形劇は、人里のイベントとしてはもはや定番の一つであり、固定ファンも多い。開催は不定期であり、催されるときは里の掲示板に告知が張り出される。
2012-10-05 22:31:21「次の開催タイミングは今度の秋祭りでしょうかね。去年もやられましたよね?」 「そうね。まだ準備期間はあるんだけど……最近、湖の近くで芝居をやっている芸人の話を聞いて、ちょっと気にかかるのよ。芸の形は違うけれど、もし人里でやられるとしたら、ライバルになるわね」
2012-10-05 22:34:42「次の開催タイミングは今度の秋祭りでしょうかね。去年もやられましたよね?」 「そうね。まだ準備期間はあるんだけど……最近、湖の近くで芝居をやっている芸人の話を聞いて、ちょっと気にかかるのよ。芸の形は違うけれど、もし人里でやられるとしたら、ライバルになるわね」
2012-10-05 22:34:42その話は阿求も耳にしている。紅魔館近くの霧の湖のほとりで、子供妖怪達を相手に紙芝居という演劇を行う謎の男のことだ。極めて怪しい人物だが、子供達には人気者らしく、最近では紅魔館の主人が出向くほどだという。
2012-10-05 22:35:41その話は阿求も耳にしている。紅魔館近くの霧の湖のほとりで、子供妖怪達を相手に紙芝居という演劇を行う謎の男のことだ。極めて怪しい人物だが、子供達には人気者らしく、最近では紅魔館の主人が出向くほどだという。
2012-10-05 22:35:41「そんなわけで、今回はちょっと違う試みをしてみようと思って、珍しく悩んでいるのよ」 「なるほどー。しかしアリスさんの人形劇は、いつもので既に達人芸ですから、技巧で目新しさを見せるのは難しいかもしれませんね」 「その評価はありがたいけれど、だからこそ難しいのよね」
2012-10-05 22:36:17「そんなわけで、今回はちょっと違う試みをしてみようと思って、珍しく悩んでいるのよ」 「なるほどー。しかしアリスさんの人形劇は、いつもので既に達人芸ですから、技巧で目新しさを見せるのは難しいかもしれませんね」 「その評価はありがたいけれど、だからこそ難しいのよね」
2012-10-05 22:36:17二人はお互いに口を閉じて、ポットから紅茶のおかわりをそれぞれのカップに注ぐ。既に頼んだ新作のケーキは食べ終えたので、静寂をつなぐのは紅茶だけだ。 「……あ、こういうのはどうでしょう」 「何?」 二杯目の紅茶の渋さを舌で転がしていたところで、阿求はふとした事を思いついた。
2012-10-05 22:41:55二人はお互いに口を閉じて、ポットから紅茶のおかわりをそれぞれのカップに注ぐ。既に頼んだ新作のケーキは食べ終えたので、静寂をつなぐのは紅茶だけだ。 「……あ、こういうのはどうでしょう」 「何?」 二杯目の紅茶の渋さを舌で転がしていたところで、阿求はふとした事を思いついた。
2012-10-05 22:41:55「やることはいつもと同じですけど、演目をちょっと変わったものにしてみませんか?」 「何か、当てはあるのかしら」 「はい、こちらとかどうでしょう」 阿求は、脇に置いていた魔法の巻物を、テーブルの紅茶器に引っかからないよう展開する。
2012-10-05 22:43:38「やることはいつもと同じですけど、演目をちょっと変わったものにしてみませんか?」 「何か、当てはあるのかしら」 「はい、こちらとかどうでしょう」 阿求は、脇に置いていた魔法の巻物を、テーブルの紅茶器に引っかからないよう展開する。
2012-10-05 22:43:38「バイオネット、ご存じでしょう? そこにはいくつもの創作作品が投稿されているのですが、その中でおすすめがあるんですよ」 まじまじと巻物を見つめるアリスに、阿求は口早に説明しだした。
2012-10-05 22:45:08「バイオネット、ご存じでしょう? そこにはいくつもの創作作品が投稿されているのですが、その中でおすすめがあるんですよ」 まじまじと巻物を見つめるアリスに、阿求は口早に説明しだした。
2012-10-05 22:45:08「いやぁとにかく素晴らしい作品ばかりでしてねーまず物語に一切の破綻がなく緻密に構成されていましてそれでいて登場人物達の心理描写の巧みさといったらなくてウィットの聞いた台詞回しとかにも痺れちゃいますよほんと――」 「あ、ええ、うん――」
2012-10-05 22:45:19「いやぁとにかく素晴らしい作品ばかりでしてねーまず物語に一切の破綻がなく緻密に構成されていましてそれでいて登場人物達の心理描写の巧みさといったらなくてウィットの聞いた台詞回しとかにも痺れちゃいますよほんと――」 「あ、ええ、うん――」
2012-10-05 22:45:19突如として始まった阿求の長口上に、アリスは目を白黒させるしかなかった。阿求は解説していくうちにテンションがあがってきたのか、席を立ち上がって演説するかの如く朗々と話し続ける。 「――というわけなのですよ。アリスさんも是非お読みになられてはいかがでしょうか?」
2012-10-05 22:49:24突如として始まった阿求の長口上に、アリスは目を白黒させるしかなかった。阿求は解説していくうちにテンションがあがってきたのか、席を立ち上がって演説するかの如く朗々と話し続ける。 「――というわけなのですよ。アリスさんも是非お読みになられてはいかがでしょうか?」
2012-10-05 22:49:24「え、えーと、そうね、参考にさせてもらおうかしら」 話がズレた感覚を引きずりながら、アリスはかろうじてそう返答した。 「バイオネットねぇ……そういえば、少しも触れたことがないわ」 「アリスさんの家の近所だと、香霖堂が最寄りの端末になりますか」
2012-10-05 22:53:33「え、えーと、そうね、参考にさせてもらおうかしら」 話がズレた感覚を引きずりながら、アリスはかろうじてそう返答した。 「バイオネットねぇ……そういえば、少しも触れたことがないわ」 「アリスさんの家の近所だと、香霖堂が最寄りの端末になりますか」
2012-10-05 22:53:33「とはいっても、何か用事があるときは相手の場所に直接出向くし、私の実家はまた別の連絡手段があるから、全然使う機会がないのよね」 「使い道は色々ありますよ。宣伝や告知をしたり、新聞みたいに自分のコーナーを開いたり……」
2012-10-05 22:54:46