【きょうの出口】福間健二 2factory12

福間健二 @acasaazul

きみの「記憶」が盗まれ、棄てられ、曇り空の下、つめたい風の吹く岬を歩いている。怖がらずに、その箱あけてごらん。あかない。でも、中から音が聞こえる。不死身の怪物に挑まれた人の、折れた心。何にあたって鳴っているのか。倍速、ぎこちないキスの音。（きょうの出口１）＃2factory12

福間健二 @acasaazul

数字の嘘を見抜くトロンボーンが鳴って、通り雨のアジア。作りたい配色がわからないけど、この絵のなかに見え隠れする妖精には、だれもが微笑む。不注意でも、髪を何色にしても、行先にうんざりしても、自転車のペダルを踏む足は生きている。虹だ。実験だ。（きょうの出口２）＃2factory12

福間健二 @acasaazul

そうか、この「収縮」のなかでは生きられない。人間じゃないものになる、かもしれない。虹の丘をこえ、草地をこっそり抜けて、黄ばんだ記事のなかの、興奮しない村。隙間を見つける。食べものと毛布、やさしい手に出会い、キツネも見た。まだ小さいけど。（きょうの出口３）＃2factory12

福間健二 @acasaazul

何に比べてそうなのか。海のように音をたてる「彼女の悲しみ」の大きさだろうか。階段の町に入る。台風一過、青空と落葉の地面。翼と耳をもつものが仕事をはじめている。だれかに理解される必要がない。だれの上にも立たない。そういう影ってセクシーだね。（きょうの出口４）＃2factory12

福間健二 @acasaazul

老いた足。ふくらはぎから下がむくんでいる。階段をおりるのが大変なそれをどう始末して、果実を食べるか。豚を入れるなとドアに言わない。掃除の終わった小屋のなかで楽しいことをするときも。秋のなかに秋が、二人の秋のなかに二人でいられない秋が来る。（きょうの出口５）＃2factory12

福間健二 @acasaazul

落ち着いて、欲望について率直に語る壜の周囲、ねじを切る動き。そこに、再会をよろこぶ幽霊と子どもたち。おたがいに知りたいこと、聞きたいことがたくさんある。オレンジやレモンの効果は一瞬でも、生きかえったような気持ち。ほんとによみがえって！（きょうの出口６）＃2factory12

福間健二 @acasaazul

わかった。ビヨンセもリアーナもきのうの出口だ。新しい袋に入れて運ばれた変種が弱って、折れた心をつなぐ装置にしがみつく。そのための音楽、読書、授業。自分の力でやったこと、これからやりたいこと。数字と色に囲まれ、思い出すのに時間がかかる。（きょうの出口７）＃2factory12

福間健二 @acasaazul

いたずら好きのクイーンがたくさんいる。悪いことじゃないとしても、その一部の行状の報告を追うだけで、血と骨、肉からなる自分は使いはたして、このぼくはかさかさと鳴る。新しい切り札なしの、きょうのテーブル。窓からの風が何枚ものぼくを吹き飛ばす。（きょうの出口８）＃2factory12

福間健二 @acasaazul

戦争について。そのあとの新しい規則、混乱、暴かれた「秘密」について。あれっ、よくおぼえていない。いいのさ。その、肉ではない自分からも脱出したきみの使うカードになったぼくは棄てていい。新鮮な空気が欲しい。なら、自分がこの秋の風になるんだよ。（きょうの出口９）＃2factory12

福間健二 @acasaazul

消えない部分。袋からとりだされ、石のように投げられ、きょうという出口。ジーン・グレーがきこえる。することはいろいろある、という物語。どこに帰るのでも何に化けるのでもない。ぼくのやった失敗の数々。全部知っているきみに会って、空に星を運ぶ。（きょうの出口10）＃2factory12