おりはさんの鵺についての発言

興味深かったので備忘録としてまとめました。
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銅折葉 @domioriha

ぬえちゃんと鵺についてしばし語る。途中でPC止まったら超人「聖白蓮」で南無三。

2012-10-11 22:24:33
銅折葉 @domioriha

とりあえず鵺と言えば平家物語の源頼政の鵺退治。原本が無料で読めるそうなので目を通さにゃならんのですが、今のところwikiとかニコニコ大百科とかpixiv辞典あたりを浚った程度しか前知識が無いので詳しい人から見ると非常にアレかも。

2012-10-11 22:25:52
銅折葉 @domioriha

結局のところ、平安の末期に都を脅かした「頭は猿、身体は虎、尾は蛇、声はトラツグミ」なんていう「鵺」って妖怪は源頼政が弓矢で退治しなければ存在しなかったということに尽きるわけで。

2012-10-11 22:27:35
銅折葉 @domioriha

鵺退治の時期は平家物語にあたると2回あるそうで、1回目が1150年代の近衛帝の御代、2回目が1160年代の二条帝の御代。異説も含めてそもそも鵺退治の時期ははっきりせんのですが、頼政が生涯を終えたのだ1180年なのでそれよりは前ってことになりましょう。

2012-10-11 22:30:39
銅折葉 @domioriha

で、この時に都を騒がした妖怪が鵺ってことになっておりますが、実際のところ最初から鵺と言う妖怪が目撃されていたわけではなく、頼政に退治された妖怪が、あとから「鵺=トラツグミ」のような声で鳴くばけものだった、と言われるようになったという経緯であります。

2012-10-11 22:32:24
銅折葉 @domioriha

それゆえにぬえちゃんの能力は雷獣の側面ではなく、正体不明の能力であることになるわけですが。時系列を考えてみると頼政が弓を射たのは鵺の存在を確信していたわけではないっぽい。

2012-10-11 22:33:21
銅折葉 @domioriha

むしろ、都を騒がす不可解な現象があることを恐れた人々が、昔も同じように怪異が都を騒がしたんで、当時の名だたる武人であった義家を連れてきて「お前これなんとかしーやー」と命じたら義家が「こいつが暴れてたッス」と化け物を退治した、みたいな経緯があったので

2012-10-11 22:35:31
銅折葉 @domioriha

じゃあ今回も武士に任せればよくね? みたいな感じで頼政が前例踏襲を命じられたというような流れのようです。

2012-10-11 22:36:28
銅折葉 @domioriha

で、この平安の末期……と言うよりもう平氏政権の最中にして、鎌倉時代の直前のこの時期は、そろそろ日本が神話の時代の名残りを失いつつあった時期であるように思います。

2012-10-11 22:37:28
銅折葉 @domioriha

源氏も平氏も昔の武人は源頼光みたいに酒呑童子退治したり藤原秀郷の大百足退治みたいな、ばけものを退治した逸話を多く持っているのですが、このへんの人達が生きていた時代から、徐々に人と人が争う時代になってゆく時期。

2012-10-11 22:40:15
銅折葉 @domioriha

かの義経ですら、有名なのは天狗が彼に稽古をつけた程度で。武人の相手として鬼やら土蜘蛛やらが退治されるような時期ではなくなってきていたのではないかと思うのですな。

2012-10-11 22:41:38
銅折葉 @domioriha

頼政はちょうどそんな頃に、平氏政権真っ盛りの京都に残っていた源氏のまとめ役的立場の人(多少誇張入ってます)。一部では後にそのあたりの確執があって反乱起こしたとされたりしますが。

2012-10-11 22:43:09
銅折葉 @domioriha

比叡山の僧侶が仏法を持ち出して政治的要求を通したり、平氏が長年の藤原氏全盛の政権を奪おうとしたり、頼政はちょうど時代の流れ目が変わるのを肌で感じていたんじゃないかと思います。

2012-10-11 22:44:37
銅折葉 @domioriha

そこへ降ってわいたこの怪異。武人だから解決にと指名された頼政、とはいえもうそんなばけものが本当にいるのかどうかは怪しいくらい、神話の御代は過去のもの。宮廷も本当にそんな化け物の存在を期待していたわけではなかった。

2012-10-11 22:46:12
銅折葉 @domioriha

実際に必要なのは、過去と同じようにこの怪異の説明を付けること。何が起きているのかよく分からないからこそ不気味なので、それに説明をつけてしまえばいい。要するに、適当なばけものの死骸を用意して、「こいつのせいでした」とやってしまえば済む話。

2012-10-11 22:47:28
銅折葉 @domioriha

かくして、気の利いた宮廷の人間が一計を案じた。そこらへんの路地に転がっていた娘を適当に選び、怪異の正体として殺すことにしたのだ。これで怪異は退けられ、頼政はその討伐者として名を成すことになる。どちらもWin-Winの素晴らしい解決策。

2012-10-11 22:50:37
銅折葉 @domioriha

武人もここまで堕ちたかと頼政は悩み、ためらうも逆らえない。かくして退治の舞台は整い、大勢のものが見守る中で怪物退治の茶番が始まる。しかし頼政、ためらいの中なんと弓を外す。まさかの事態に見守る人々は大騒ぎ。ここで化け物が退治されて貰えないと困るのだ。

2012-10-11 22:54:21
銅折葉 @domioriha

ここで構わず飛び出したのが従者の猪早太。逃げる娘の首をはね落としてドヤ顔で「化け物討ち取ったり!!」と名乗りを上げる。ここで乗り遅れてはならんとその場にいた者たちも次々に、いもしない化け物がどれだけ恐ろしかったかを口々に語り始める。

2012-10-11 22:54:58
銅折葉 @domioriha

「おお、なんと恐ろしい、まるであの頭は猿のよう」「虎のように逞しい爪と脚じゃ」「みろ、尾が蛇になっていたぞ」「声はまるでトラツグミ、不吉じゃ」等々。かくして頼政の退治したばけものは不可解な「鵺:となった。

2012-10-11 22:57:02
銅折葉 @domioriha

さて、そんな具合に名声を得たものの、もう色々とどうでも良くなり始めた頼政。しかし数年を経て再び、同じような怪異が都を騒がす。再び引っ張り出された頼政の前に現れたのは、あの時死んだはずの少女であった。

2012-10-11 22:58:55
銅折葉 @domioriha

しかしいったい如何なる理由か。頼政以外には彼女は娘ではなく、恐ろしい姿はまさにあの夜の化け物の姿に尾ヒレついて広まった「鵺」として映っていたのだ。

2012-10-11 23:00:02
銅折葉 @domioriha

娘は頼政によって殺され、そして同時に鵺という妖怪として生まれ直した。頼政は胸中の蟠りを告白し、彼女に詫びる。いまさら謝るなと叫ぶぬえ。もはや彼女はかつての人間の娘ではなく、人々の怖れる正体不明の妖怪・鵺なのだ。

2012-10-11 23:01:51
銅折葉 @domioriha

妖怪らしい振る舞いを強いられたぬえは、人を襲い喰らわねばならない。頼政は因果を噛みしめながらもぬえに弓を向ける。ぬえはそれを避けなかった。……再び鵺は退治され、都に平穏が戻る。二度の鵺退治を経て、この時代になお化け物を射殺した頼政の名は広く知られることとなった。

2012-10-11 23:03:17
銅折葉 @domioriha

その前後から、頼政は木の下(このした)という少女を引き取り共に暮らすようになる。彼女はかつて彼が鵺として殺した娘に良く似ていた。そう、誰あろう彼女こそが討伐されたはずの妖怪「鵺」である。頼政は怪異としての鵺を射殺し、彼女に人間としての立場を与えたのだ。

2012-10-11 23:05:30
銅折葉 @domioriha

木の下という新しい名前を貰い、鵺とは違うありかたを許容されたぬえは、もはや妖怪ではなかった。人間の娘として認識されている彼女が、鵺として夜を脅かし人を殺す必要はない。

2012-10-11 23:06:25