広井良典『コミュニティを問い直す』まとめ

広井良典『コミュニティを問い直す』(2009)まとめ
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H.Takano @midwhite

ヨーロッパや中国の都市は「城壁」を持ち、予め農村などから明確に区切られた存在として認識されていた。それは無秩序な市街地の拡張を押し止め、都市計画が早くから政策として取り入れられた。また物理的な囲いが、城壁内部の共同体感情を形成した。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-12 08:44:28
H.Takano @midwhite

対して日本は世界でも珍しく城壁を持たない都市を形成してきたため、都市と農村の明確な区分が無い。城壁内部では城下町が城郭から見て「外部」と見なされ、その為か現在の都市においても個々のビルが全体の景観などと調和せず独立して乱立している。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-12 08:52:46
H.Takano @midwhite

和辻哲郎『風土』は、日本社会における「家」の「垣根」が、ヨーロッパにおける「都市」の「城壁」とパラレルな存在であると指摘する。つまりヨーロッパの都市において「城壁」の内部に共有される共同体感情が、日本では「家」の内部に限定される。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-12 08:57:38
H.Takano @midwhite

マックス・ウェーバーによれば、都市とは一定以上の規模を持つ1つの「集落」であり、かつそこでは「財貨の交換」が行われるが、それは都市の一面に過ぎず、本質的には何らかの範囲の自律権を持ち政治的・行政的制度を備えた共同体として理解される。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-12 09:07:48
H.Takano @midwhite

経済学者の岩井克人によれば「法人」という概念の歴史的起源は、ローマ時代の自治都市や植民地に遡る。都市自治体は現在の株式会社とよく似ていて、例えば市民は株主に対応し、市の行政機構は経営組織に対応し、市長は代表取締役の役割を果たす。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-12 10:46:30
H.Takano @midwhite

北欧は地方自治の単位となる地域の中心部に必ず教会が位置している。中世に教会の福祉的な事業や税の徴収が国家に引き継がれたという歴史的な経緯が、高水準の福祉国家が生まれた背景となっている。「福祉」と「文化」は深く結びついているのである。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-12 14:56:39
H.Takano @midwhite

都市の基本的な性格は、神殿を中心とする「神の都市」、宮殿を中心とする「王の都市」、広場を中心とする「商人の都市」、大企業の本社や銀行・百貨店などを中心とする「企業の都市」を経由して、中心の無い「個人の都市」へと歴史的に変遷してきた。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-12 17:54:15
H.Takano @midwhite

伝統的な日本社会における共同体の中心は神社や寺であった。それらは宗教の機能だけでなく、子どもに読み書きなどを教える教育の機能、周辺で市場が開かれるという経済の機能をも兼ね備えていた。これは人間にとって重要な「聖・俗・遊」に対応する。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-12 18:00:18
H.Takano @midwhite

様々な分野で今後の時代における異なるコンセプトの都市像が提案され議論されてきた。環境政策の分野で「サステナブル・シティ」、文化政策の分野で「創造都市」、医療政策の分野で「健康都市」、交通政策の分野で「コンパクト・シティ」等である。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-12 18:09:53
H.Takano @midwhite

共同体の中心は、同時に「外部」との接点でもある。例えば宗教施設は「彼岸」「異世界」、学校は「新しい知識」、商店街は交換相手としての「他の共同体」と、それぞれ「外部」に対する窓として機能する。共同体は、その中心点で「外部」へと反転する。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-13 12:55:39
H.Takano @midwhite

農地改革は土地の再分配を通じて「共通のスタートライン」として機能した反面、私的所有の対象としての土地(ひいては投機的な財としての土地)という観念が強化された。それは所有の絶対性という近代的な価値が遅れて日本に浸透するプロセスだった。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-13 21:13:31
H.Takano @midwhite

格差問題が議論されているが、注目されがちなのは所得、つまりフロー面での格差問題である。しかし実は資産、つまりストック面での格差問題の方が大きく、ジニ係数は年収が0.308に対して貯蓄が0.556、住宅・宅地資産で0.573である。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-13 21:25:01
H.Takano @midwhite

福祉国家は、資本主義と社会主義のシステム対立に際して、その中間の社会モデルとして発展した。それは個人の自由な競争としての市場経済を前提として、そこで生じる経済格差ないし富の分配の不平等を社会保障などによって事後的に是正する考え方だ。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-13 21:36:43
H.Takano @midwhite

現在、福祉国家は2つの基本的な問題に直面している。第一は社会保障の規模が大きくなるほど、経済活動のインセンティブが損なわれること。第二は、資産面を含む格差の拡大によって、機会の平等が揺らぎ、自由な競争という前提が崩壊しつつあること。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-13 21:42:14
H.Takano @midwhite

この2つの問題に対して、市場経済に対する「事後的な再分配」よりも上流に遡った「事前的な再分配」が必要ではないか。真の意味で個人の機会の平等を保障しようとすれば、そこには相当の制度的な介入、或いは再分配のシステムが必要になってくる。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-13 21:49:42
H.Takano @midwhite

定常型社会は「労働生産性から環境効率性へのシフト」に関連している。即ち、以前は人が足りず、自然資源が余っていたが、今では逆に人が余り、むしろ自然資源が足りていない。そのため人を積極的に使い資源消費を節約する経済パターンが重要である。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-13 22:07:10
H.Takano @midwhite

このような視点から、介護や福祉、教育といった「人」が鍵となる領域へ積極的に投資することこそ効果的である。介護などの分野は従来の生産性概念から生産性が低いと言われてきたが、環境効率性の観点から言えばむしろ生産性が高いとすら言える。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-13 22:11:10
H.Takano @midwhite

介護や福祉は労働集約型産業の典型であり、それは雇用創出効果が大きいことをも意味する。興味深いことに、産業別の雇用誘発効果は介護・福祉分野が際立って高い。いずれにせよ、定常型社会においては「生産性」の概念を根本から問い直す必要がある。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-13 22:17:00
H.Takano @midwhite

一方、経済の成熟化は富の源泉をフローからストックへ移行させる。18世紀以来の産業化は、富の源泉である労働の生産性を向上し、フローを拡大してきた。しかし定常化の時代においては、フローの拡大が止まるためストックの重要性が相対的に増す。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-13 22:26:18
H.Takano @midwhite

科学と共同体との関連について考える際に重要なのは、第一にこれからの科学において共同体が中核的な主題となること、第二に従来の科学の在り方が大きく問い直されること、第三に文理や人文・社会・自然といった境界は無くなることである。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-14 09:27:03
H.Takano @midwhite

西欧近代科学は17世紀の科学革命によって成立したが、それは自然や世界の理解に一定の枠組みを基盤としていた。特に人間と自然の明確な分離(ないし自然支配)、要素還元主義(或いは経験的・実証的な客観性)が基本的な特徴として挙げられる。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-14 09:33:14
H.Takano @midwhite

そうした近代科学は、まず力学を中心とする物理学、そして化学において展開し、やがて最も複雑な自然現象である生命にまでアプローチが及ぶ。医療分野においては19世紀に「1つの病気には1つの原因物質が対応する」という特定病因論が成立した。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-14 09:37:04
H.Takano @midwhite

特定病因論は「基本的に身体内部の物理化学的関係によって病気のメカニズムが説明される」、また「原因物質と病気との関係を比較的単線的な因果関係として把握し、その原因物質を同定して除去すれば病気は治癒される」と考えることに特徴がある。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-14 09:41:44
H.Takano @midwhite

そうしたパラダイム成立には、当時のヨーロッパにおいて、戦争の連続と世界制覇に伴う感染症が医学に外傷と感染症の治療の有効性を要請していた背景がある。このように医学の在り方は、その時代や社会において最も優先度の高い疾病に規定される。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-14 09:47:24
H.Takano @midwhite

しかし時代は変わり、現在では身体的要因のみならず、ストレスなど心理的要因、労働など社会的要因、自然との関わりなど環境的要因といった無数の要因が複雑に絡んだ病が一般的となった。文字通り「複雑系としての病」という理解が求められている。(広井良典『コミュニティを問い直す』2009)

2012-10-14 09:57:28