h_sinonomeの#twnovelまとめ 2010

発言済#twnovelまとめ 2010.1~2010.12
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ハジメ @h_sinonome

昼下がりの薄暗い部屋にいる。湿った土に雨粒が落ち始め、徐々に強くなっていく雨が歪んだ雨どいに溜まりじゃばじゃばと流れ落ちる音を、たっぷりの毛布にくるまって聞いている。雨音に反して室内は静かだ。今、私の時は止まっている。 #twnovel

2010-12-02 13:38:34
ハジメ @h_sinonome

近いのに遠い。肩を並べている彼女は今にも掻き消えてしまいそうだ。川辺の外灯もない遊歩道でしか彼女は存在できない。「連れて行ってくれないの?」いつもの問い。「貴方を連れて行きたいなんて思わないわ」いつもの答え。なら何故ここに留まっているの?いつも口に出せない疑問。 #twnovel

2010-11-30 12:57:37
ハジメ @h_sinonome

『死ね死にたい殺せ愛して憎め妬ましい』耳の後ろで延々と喚く声。これを悪魔というのだろうか。身の内に悪魔を飼うことができるなら飼ってやろう、と喚く声が存在していることを認めると声は消えてしまった。まぁいい、どうせすぐに戻ってくる。こいつは私の闇の中から湧くのだ。 #twnovel

2010-10-13 14:02:21
ハジメ @h_sinonome

地獄の底はどこだと、聞く奴が居やがった。誰でも自分の居る地獄が底の底。それより下があるなんざ考えられるわけがねぇ。それでも底まで行きたいというから、知ってる中で一番悲惨な地獄を教えてやった。底なんぞあるのか?地獄の底は抜けていてバラバラと闇に落ちるだけだろうに。 #twnovel

2010-09-27 09:30:32
ハジメ @h_sinonome

この国は子供を見ない。老人も見ない。新しく産まれるはずの子供の魂を、命のストックとして蓄え、働き盛りの人間は、少し老化すると命のストックを使い、記憶や経験そのままに若さを維持し続けるからだ。子を産み、老いて死ぬ人達は宗教として生死を崇め、ひっそりと暮らしている。 #twnovel

2010-09-22 18:33:47
ハジメ @h_sinonome

異世界に居た。自分の部屋。いつもの天井。いつもの扉。ベッド。机。何一つ違うものはないのに、普段と全く同じなはずの部屋で、私は裸になることができない。見慣れない部屋に居るような緊張感をひしひしと感じる。もはやここに住むことはできないので、身体一つだけで部屋を出た。 #twnovel

2010-09-11 21:55:00
ハジメ @h_sinonome

知ってる、知っているから、囁かないで、私の耳元で、貴方が一言を発する度に、膨れ上がるこの殺意を抑えられないから、お願いだから、言わないで、「君が好きだ」と。 #twnovel

2010-08-21 22:48:24
ハジメ @h_sinonome

「流星なんて眺めてなんになる?」と言うと、社会科教師の彼女は「歴史を見るのよ」と言う。「貴方と私の人生も、あの流れる星のようなもの」人生が一瞬で流れるほどの速さならば、俺と先生の、いくつかの年齢差も大した事はない、と思えるなら、流星を眺めるのも悪くはない。 #twnovel

2010-08-15 14:11:28
ハジメ @h_sinonome

彼の歩く道はぬかるんだ泥道で、私の歩く道は乾いているから、同じ道を歩いているなど認めようとはしないだろう。泥の中に足を沈めてもいいのだけれど、やめておく。いずれ動けなくなる彼を見送る人が居なくなってしまうから。私は彼の屍を拾うために彼の後を追う。 #twnovel

2010-08-05 12:46:43
ハジメ @h_sinonome

まとわりつく泥を掻き分けるように進んでいる。楽な道を選ぶのは裏切りだ。何に対しての?たぶん自分に対しての。何故か頭のイカレた女が後ろを軽快についてきている。女を泥の中に引き倒したい衝動に駆られるけれど、やめておく。俺の道に誰も踏み入る権利などはないのだから。 #twnovel

2010-08-05 12:46:14
ハジメ @h_sinonome

僕はベッドの下に友達がいる。姿は見えないけど、なんでも話すことができる、いちばんの友達だ。ちかごろ僕は、ベッドから起き上がれなくなったので、友達に話しかけてばかりいる。そろそろベッドの上にも飽きてきたから、友達がベッドの下に連れて行ってくれるらしい。楽しみだ。 #twnovel

2010-07-26 10:39:49
ハジメ @h_sinonome

非常階段から吹き抜けのホールへ出ると、上階の手すりからぶら下がった塊に相対する。首が無かったせいで、一瞬、人だと気づけなかった。恐怖で身体が強張る。吊られている肉塊の後ろ、足場などない吹き抜けの中心から……、というところで必要なアイテムを忘たのでロードした。 #twnovel

2010-05-08 18:53:48
ハジメ @h_sinonome

いつもの通り、毎朝8時の満員電車に乗りこんだ。僕は、触れた人間が災厄に見舞われる体質を持っている。知らず接触し、不幸になる他人に思い巡らせることもあるが、世の中は神といえども働かなければ生活ができない。電車を降り職場である結婚式場へ急いだ。人は僕を貧乏神と呼ぶ。 #twnovel

2010-04-02 11:15:00
ハジメ @h_sinonome

じっとその場に座ったまま、いずれ向かう空を眺めていた。時に白く、時に虹色、時に暗く先が見えない。歩き出すと、穏やかだった空気が波立ち、向かい風が強く吹くので、また座り込むと風は止んだ。向かう先の道を眺めている。正しい道なのかは分からない。 #twnovel

2010-03-24 10:09:05
ハジメ @h_sinonome

花を咲かせた。綺麗な花。貴方の咲かせた花。一枚一枚花弁を摘み取って、植木鉢の中に散らす。貴方が一生懸命咲かせた花だから、貴方がまだ見ぬうちに散らした。それからスーツケースを持って、部屋の鍵をテーブルに置く。心残りは、悔しがる貴方の顔を見られないこと。それだけ。 #twnovel

2010-03-08 01:40:44
ハジメ @h_sinonome

人の意識や思考を決定しているのは「身体」と「記憶」です。それで、脳を違う人間の身体に載せ替えて、記憶を丸ごと消去しました。前の貴方とどれだけ違ってくるのか、思考データをとらせてもらいます。逃げても無駄ですよ?僕は貴方を全てしってるんですから、研究対象としてね。 #twnovel

2010-02-26 13:20:02
ハジメ @h_sinonome

アナタを、アナタを、なんて言ったらいいかな?なんて、ぐるぐる。ごめん、わかんないよね。えーと、これだけ、好きです。って、ごめん。忘れて。目の前に居ないから打てた言葉なの。だから、明日には口からちゃんと伝えます。言えるかな?ううん、きっと、言うよ。アナタの前で。 #twnovel

2010-02-25 22:41:58
ハジメ @h_sinonome

明日のために飯を食らい、明日のための他人を殺し、明日のために惰眠を貪り、明日のために家族を殺し、明日のために風呂に浸り、明日のために首をくくる。 世はつつがなし。 #twnovel

2010-02-22 12:08:59
ハジメ @h_sinonome

電車に乗り、扉に正面を向けて立っている。駅に着いて扉が開くと、ホームと電車の間には黒い隙間ができる。そこに、腕があった。真っ白で血が通っていない。そして肘から先の無い腕だった。扉が閉まる。私は、見なかったことにした。けれど、腕の白さだけが目に焼きついて離れない。 #twnovel

2010-02-19 10:37:51
ハジメ @h_sinonome

か細い言葉ばかりを発している。誰かに掬い上げてもらうのを、待っているような待っていないような。そんな、消えてしまうほど微かな言葉ばかりをつぶやいている。 #twnovel

2010-02-15 12:24:34
ハジメ @h_sinonome

雨が降っていたが、そんなことは問題ではなかった。傘が無いので濡れていたが、そんなことは問題ではなかった。風邪をひきそうなほど寒かったが、そんなことは問題ではなかった。ただ一つの問題は、嘆いても戻らないものがあるということ。 #twnovel

2010-02-09 14:35:54
ハジメ @h_sinonome

窓の外は、雪が降り出す前の静けさに満ちている。私は炬燵に深く潜ると、庭を眺めて、じっとその時を待っていた。やがて、空から白い雪の結晶が降ってきたのをみとめると、これでもかというほど防寒着を着込み外に出る。さぁ雪と遊びに行こう。 #twnovel

2010-02-01 11:48:03
ハジメ @h_sinonome

料理をしている妻の背に手を当てると、心臓の音がする。僕の胸に手を当てると、なんの音もしなかった。何故かすんなりと、ついさっきまで交差点に居たはずの自分がここに居るのかが理解できる。電話が鳴り、妻は鍋から離れた。車の運転手は無事だっただろうか。少し気にかかった。 #twnovel

2010-01-28 15:52:32
ハジメ @h_sinonome

丑三つ時に鐘の幻聴。癇癇。粟立つ鳥肌の居心地よさ。狂っていく。狂狂。楽しい。楽しいね。離れていく。たまらなく楽しく離れていく。天井の隅で猫が笑う。丑三つの鐘が鳴り止まぬ。癇癇。 #twnovel

2010-01-25 03:45:01
ハジメ @h_sinonome

音楽の詰まった箱を手に入れた。耳を当てると古今東西ありとあらゆる音楽が流れ出してくる。音の波に身をゆだねると、いつしか身体は波となって、箱の奥へ奥へと引き込まれていくのだった。私は、那由多の音と一つの海になっていく。 #twnovel

2010-01-22 12:25:06