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長谷敏司『円環少女』感想

主に自分用のメモです。 『BEATLESS』刊行以来、『円環少女』についての感想を呟くことが増えたので、改めて過去の感想をまとめてみることに。 ○関連 「『BEATLESS』読了直後の感想をややまとまりなく」http://d.hatena.ne.jp/skipturnreset/20121011 「『円環少女』13巻再読。『BEATLESS』との相関についてもいろいろと」http://d.hatena.ne.jp/skipturnreset/20121028/ 続きを読む
メモ 円環少女 長谷敏司
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相楽 @sagara1
長谷敏司『円環少女』再読、ようやく10巻まで終えた。11~13巻は途中で折りに触れつまみ食い的に読み返しながら来てもいるから、あと少し……。以下、書いているうちにやたら長くなったけど、途上での整理も兼ねて連投。
相楽 @sagara1
『円環少女』は基本、「24歳の迷える青年・武原仁がメイゼル・アリューシャ(12歳)と倉本きずな(17歳)のどちらを選ぶか」という話で、「それぞれの選択がどんな業と欲を代表しているか」というシンプルといえばシンプルな物語なのだけど。つまり……
相楽 @sagara1
武原仁が<可能性を追究し苛み尽くすことに全てを賭け、その果てに世界も神も壊して悔いない欲と業の権化な「奇跡の子」>メイゼルと<翻弄され侵され利用し尽くされようと、身近な手の届く幸せと「生き残ること」を求めてやまない欲と業の権化な「太母」>倉本きずなのどちらを選ぶか……
相楽 @sagara1
その選択がそのまま「人と神」「人と世界」「人と社会」といった巨大な問いに繋がる構造。で、最終解答が出されるまでに実にバリエーション豊かな「答え」と「その否定」が錯綜して積み重ねられる上、各々随分間を置いて応答が為されるから諸々厄介なんだということが再読でよく分かる……ように思う。
相楽 @sagara1
例えば10巻で《雷神》を下してのメイゼルの「あたし、せんせとふたりでも、きっと《神》と世界に立ち向かえる」が、3巻でのグレンの慨嘆「世界と神に挑んだ者は数あれど、ふたりでそれをやり遂げた者などない」への応答になっているとか。
相楽 @sagara1
前後も含め3巻p286-287と10巻p346-347は比べてみれば意図的な対比と分かるけど、最後まで流れを把握した後の読み返しでないと見えて来なかった。他にも例えば(最重要のものとして)再演と神音、各々の魔法と体系と「救い」への対抗軸が一巻の時点から入念に置かれていることとか。
相楽 @sagara1
再演魔法は仕草で過去の魔法使いたちの行動を操り、そのことで心を踏みにじる。一方、1巻そして13巻でメイゼルが仁に贈るのは魔法ではない仕草(共にカラーイラストでも描かれる)。なんの行動も強制も操作もしない。ただ、心に届き、捕まえて決して離さない。
相楽 @sagara1
(※やや話が逸れるけど「心と行動」「心と物語」「フィクションの成し得ること」「自由意志」といった問題は同じく長谷敏司『あなたのための物語』において突き詰めて描かれていて、それを踏まえて『円環少女』を読むと面白い。また、特に「愛」について傑作短編「allo,toi,toi」が……)
相楽 @sagara1
再演魔法と「魔法でない仕草」の対比が1巻⇒13巻とえらい射程で仕込まれているように、「神音魔法」と「魔法でない歌」という対比も非常に目立つ。なんせ、始まりの始まりから仕込まれている。小学校の偽教師・武原仁が生徒たちに合唱させる場面。
相楽 @sagara1
「その昔、歌は人と神との仲立ちで、巫術者は歌うことで役割を果たした。歌は、神と人をつなぐ神の言葉。だが武原仁は、神聖さも祈りもなくただ楽しく歌う授業を悪くないと、ついポケットに煙草を探してしまう」(『円環少女』1巻p7)
相楽 @sagara1
「魔法でない歌」は作中において幾度も響く。例えば敗北したエレオノールが歌った、神音魔法にならない恋歌。多彩な「魔法」に属する地下都市住民の歌。そして、機械化された新世代の騎士・ジェイク・フェニックスが愛したジャズ。神と人でなく、人と人とをつなぐ歌たち。
相楽 @sagara1
アンゼロッタが機械化神音という属する世界の新たな扉を開け、絶対の正義と救いを約束する「預言者」であるのに対し、エレオノールが「歌姫」であるという対比もそうした構図の中にある。
相楽 @sagara1
また、再演魔法、神音魔法からの流れで「救い」や、「英雄」が掲げ(あるいは否定する)「正義」や「理想」について。13巻最終盤での「《魔炎》のともしびは、アフリカの一部のような貧困地域ではあがらなかったという」(p464)というくだりは……
相楽 @sagara1
「幾多の生き方を選んだ魔法使いたちのすべてが声を聞いたわけではない。/悪鬼を友とし、恋人とし、家族として魔法消去に常時さらされている、完全にその社会に埋没した者には太陽のごときグレンも魔力の銀弦をつなぎ得なかったのだ」(3巻p115)と対になるものだろう。
相楽 @sagara1
なお、一巻から60億人という数とその力が強調されることの意味こそは『円環少女』の中でも最もユニークなところでもあり、きずながこだわる「普通」と併せ世界観の中核でもあって……とか諸々書いていくとキリが無い。13巻まで全部読み返せたあとで、なんかしら、まとめられるといいな。
相楽 @sagara1
あと、妙な補足をするとメイゼルを「奇跡の子」、きずなを「太母」とか書いたのだけど。その流れを進めると王子護ハウゼンを「トリックスター」、浅利ケイツを「シャドウ」と見立てたり、メイゼルときずなを最初の神人が繋いでいることに注目したりすることになったりもする。
相楽 @sagara1
あと作中における重要組織として「ワイズマン警備調査会社」というのも登場するよね、と(理念的にもやり口から見ても、10巻でグラフェーラが口にする(英語は作中で卑語なので歪んだ意味になる)「wiseman(役立たず)」「business(ムダ)」からもイリーズ夫の影を感じたりする)。
説明不足を感じたので、以下数回分、補足tweet
相楽 @sagara1
青灰色 blog「円環少女・質問企画の回答をアップロードしました(後半)」http://t.co/2hTbwXXX にある、「ワイズマンのトップは、経済に特化した魔法使いです。背景に関しては、想像がつく人もいるかもしれませんが私のほうからはノーコメントで」について。
相楽 @sagara1
グラフェーラによるイリーズの夫とその事業への言及。「メイゼルちゃ~ん。メイゼルちゃんなら、なぁんにもできないwiseman(役立たず)を大事にはしないよね~」(『円環少女』10巻p150)「メイゼルちゃんのお母さんがやっていることはbusiness(ムダ)ですよ~」(同p151)
相楽 @sagara1
同じく10巻より、イリーズの語る彼。「《地獄》の《悪鬼》が使う電子機器を山ほど輸入してきてさ。その回路をパクって、下手な魔法使いでも一万人も集まって自分の仕事さえしてりゃ、集積回路を構成できるようにしてな」(p172) 圧倒的な個人の特権性を奪う、彼の理論と理念と計画。
相楽 @sagara1
「wiseman」「business」。円環大系に属するアラクネが経済に強い魔導師として描写されたこと。諸々考え合わせるに、ワイズマンのトップは「カネとモノと人の動きを円環を為すものとして見て取り、操ることに長けた円環体系の魔法使いなのでは」と推測するのですが、どうなのかな、と。
「ワイズマンのトップ」についての補足tweet終わり。
相楽 @sagara1
他にも勿論、『天になき星々の群れ―フリーダの世界』『あなたのための物語』といった著者の別作品との関わりについても思うことは多い。武原仁が「真なる悪鬼」という英雄になった描写(12巻)は「天になき~」のアリスの逸脱と重なるなぁ、とか。
相楽 @sagara1
「彼がヒーローになったのではない。世界は色を転じたが、仁は変わらなかった。古い世界は異世界になり果て、人々はすこしずつ異世界人になり、彼は取り残された。/こうして相対的に、彼は"世界"から逸脱した」(『円環少女』12巻p245)。
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コメント

相楽 @sagara1 2012年10月26日
まとめを更新しました(「ワイズマンのトップ」に関するtweetを補足)
相楽 @sagara1 2012年11月2日
まとめを更新しました(『時間的無限大』読了につき、途中に感想追加)