長谷敏司『円環少女』感想
「「この手で」と云う自意識」 twitter.com/Swishwood/stat… は強烈な駆動力、キャラクターの魅力、そして呪いとして描かれることがままあって。 『円環少女』の武原仁が迷走しまくる理由は彼がヘタレだからというより、まさにその執着ゆえのことだよなあ、と。
2014-04-30 15:28:52「この手で」と云う自意識こそがただの現象に留まらない救済の原動力なので、その部分の欠落を現象の筈の"理"がどう受け止めるか。ただの現象では、それは救済たり得ない。 twitter.com/kareruanteru/s…
2014-04-30 12:29:31かつて護るべき妹に伸ばした手を弾かれ足蹴にされ、逆に彼女に護られようとし、喪ったことがトラウマとして武原仁を縛っている。『円環少女』を二部に分けたとき、一部完結篇といえる六巻クライマックスに至る複雑な構図も、武原仁の「この手」への妄執を中心にみることで一定の整理が出来はする。
2014-04-30 15:29:04「この手」に一切こだわらず、それこそ猫の手だろうと幼子の手だろうと、それら皆を血に汚そうとそれも手段の内と割り切る/切れる王子護ハウゼンと十崎京香、願いを抱き効率的に冷酷に戦う方法を教えたかつての師と、上官であり姉のよう……喪われた家族の残り香のような女性を二大敵としつつ……
2014-04-30 15:29:34望む生き方と「この手で」というスタイルが完璧に一致するもう一人の師・東郷永光が(この時点では)結局乗り越え得ない壁として立ちはだかり、固く握り締め振り上げ続けた「この手」が空振りにしかならない時代に取り残された憤りを炸裂させようとするテロリスト国城田が形式上の敵役を務め……
2014-04-30 15:29:48武原仁を含む複雑に交錯する全勢力を決戦の場へ道案内するのは、彼の「この手で護る」という執着の根源たる彼の妹、その残滓であるという構図になっている。
2014-04-30 15:30:02そして、決戦において武原仁を支えたのは彼が迷いに迷いながらも「この手で」触れてきたものの集大成のような、メイゼルと地下世界の子どもたちの援護。メイゼルの一言は師が弟子に教えた最も重大な偽りを暴き、無力な子どもたちの怖れや感覚が精緻極まる王子護の戦術を打ち崩す。
2014-04-30 15:30:14こうして触れてきた以外にもそれはもうめいいっぱいいろんなものを積みまくった話だからこう切り捨てられるのも twitter.com/ethica/status/… ある程度仕方ないとはファンですら思ってしまうところはあるのだけど、一応、こういう切り口は示してみたいとは思った。
2014-04-30 15:30:31無論、(例えば自分のような)読者にとってはこうして積み上げすぎるほど積み上げたものが一気に収束してカタルシスとなる部分こそがたまらない、ということになる。
2014-04-30 15:30:42あと例のイベントの質疑応答で出た「ストーリー展開上、特定のキャラがここに出たり動いたりして欲しくないのだが出てきてしまう」、長谷せんせ曰く「コイツがここで話すと「終わって」しまう」問題についても、この流れですこし。
2014-04-30 15:30:49「作家は皆、作家である限り苦労し続ける難問。悩んでください」「いっそ、乱暴にシカトして押し通すのも手」「ただし、ここは芸の見せ所、一般的な答えはない」と語られた問題、『円環少女』では後半における舞花に対する各キャラクターの振る舞い、特に武原仁とそして倉本きずなのそれが面白い。
2014-04-30 15:31:19あれだけ情報戦、騙しあい、主導権の握り合いが行われキャラクター全員がその重要性を否応なく認識する中、あまりにも怪し過ぎる武原舞花に武原仁一派はまるで探りをいれない。特に、倉本きずなは世界最強の覗き能力を有しているのに、それをしなかった。
2014-04-30 15:31:45当たり前だけど、幻影城でのあの決定的瞬間の前に舞花の目的が探られてしまえば、あのストーリーは成立しない。そして、もし倉本きずなが試みたなら、舞花にそれを防ぐ方策は存在しなかった。それをさせなかったロジックは何か。
2014-04-30 15:32:29舞花は仁の心の聖域であり、彼女が「発病」して以降、武原仁の「今」はいつでもまさにそうであるがゆえにそうした形となったのであり、その中で彼はメイゼルと、きずなと出会い、それぞれの関係を築いていくことになった。
2014-04-30 15:32:50その構図において倉本きずなと武原仁の関係は彼がきずなの聖域だった父を壊したということが決定的に重要で、二人はそれをよく知っている。ここで彼女が彼の聖域を侵せば、きずなが仁に対してもっているある種の支配力は相殺されてしまう。
2014-04-30 15:33:09きずなにとって、再演魔法を操ることそれ自体への抵抗に加え(しかし彼女は「父」倉本慈雄と仁を巡る真実はとっくに覗き見ていた)、仁をめぐるライバル・メイゼルを見据えたとき、舞花という彼の聖域を汚すことは決して採り得ない選択だったのでは、と思う。
2014-04-30 15:33:49○2014-05-02のログ
『円環少女』の武原仁と妹・舞花 twitter.com/sagara1/status… FFTのディリータと妹・アルマ d.hatena.ne.jp/skipturnreset/… 『WHITE ALBUM2』の北原春希と母親との関係 d.hatena.ne.jp/skipturnreset/… と……(続く
2014-05-02 13:39:54続き)最近キャラクターについて掘り下げたくならずにいられなかったケース考えると、自分の好みってあまりに分かりやすすぎる気もする。 理性的で現実的な判断ができる有能な人物が、しばしば家族絡みのトラウマである「掛け替えのない弱点」に引きずられ堕ちて落ちて堕ちまくる話って素敵です。
2014-05-02 13:42:40劇場で観た蜷川幸雄演出、野村萬斎のオイディプス、麻実れいのイオカステの2002年の舞台 amazon.co.jp/dp/B00006RTGEも素晴らしくて。あれに惹かれてその後数年、蜷川演出の劇をいろいろ観ることになったりもした。
2014-05-02 13:53:19○2014-08-07のログ
はてブのトップにある「いつまでも原爆原爆うるせえよ」というエントリ名を見て、「あ、五七五だ」って思ったし、原爆は夏の季語っぽいよね。
2014-08-07 11:56:57『円環少女』に登場した、自分が恐怖するもの以外では一切のダメージを受け付けないほとんど無敵の魔導師、王子護ハウゼン。その王子護に核爆発の炎を浴びせて倒したときに主人公が言った「おまえ、この国に長くいすぎて、日本人になってたんだ」ってセリフ、何度読んでも素敵すぎる。
2014-08-06 16:25:25