ワンピースリレー小説

twitter上で不特定多数の人間で小説を書き進めていく先の見えない小説。設定も特にないのでどう転ぶかは発案者にも不明。
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マッスルきりい @mkirii

最後の一滴を舐め取り、身体の奥深くへと流し込む。口内に広がる味に、思わず眉根を寄せた。何かが、違う。辰砂も水銀も患者に使う前に口に含んだ事はあった。しかし、その記憶とそれは一致しない。もっと身近な、鉄の香り。「全て得たか?」 #ワンピースリレー小説

2012-11-29 00:56:57
@wavoow

ローの視線が男の肌を滑る。丁度心臓の辺りに引っ掻き傷、にしては深い痕を認めた。そこから滴る、白銀。もう一度舌を這わせれば、男は小さく嗤い、舌先で抉るように穿れば噛むように呻いた。「血か、お前の」啜れば口内に甘く、白濁にも似た弾力を以ってローを楽しませる。 #ワンピースリレー小説

2012-11-29 01:06:30
@wavoow

「其が命、捧げるか」歯、にしては酷く凶悪な鋭さを持った牙を口内から見せつけてローを見下ろすのは、脅迫か、警戒か。「条件による」口を離しても溢れる白銀を、白の上で弄びながらローは応えた。当初感じていた縛られるような空気を既に感じる事はなく、ただ男を見ていた。 #ワンピースリレー小説

2012-11-29 01:10:46
@wavoow

刹那にも似た一瞬、男の動きが止まる。息も、目も、全ての情動が止まった。ややあって、男は懐かしい者を思い起こすように、その瞼で辰砂を隠す。「貴様のような人間は、二匹目だ」何の事かと問いただそうとしたローだったが、男は言葉を続けた。「息は宵々…孵りは、強い」 #ワンピースリレー小説

2012-11-29 01:15:00
マッスルきりい @mkirii

懐かしげに語る声。同じ言葉をこれまで幾度となく聞いたが、これほど優しい声色はなかった。「かつて貴様のように雨を已ませようとした人間が迷い込んだわ。彼の者は臓腑を病んでいた。しかし、それ以上に外にいるという人間たちを酷く心配しておったわ」 #ワンピースリレー小説

2012-11-29 18:44:17
マッスルきりい @mkirii

コトリと、座敷に転がる鉱石の欠片を指で転がす。開かれた両の眼に互いの辰砂の色が溶け合う。そこにローの姿は映る事はない。「我は問うた。『其が命、捧げるか』と。貴様が已めば、雨を已ませてやろうとな。彼の者は応えた。『是』と。然し」 #ワンピースリレー小説

2012-11-29 18:44:26
マッスルきりい @mkirii

カツンと弾かれた石がローの手に当たって止まる。「彼の者は約束を違えおった。彼の者は已まず、病まず、ここには誰もいない」聞こえた声は深い悲しみの色を滲ませていた。見やれば常より寄せられていた眉根は更に深い谷を作り、怒りとも悲しみとも言えない苦悶を飾っている。 #ワンピースリレー小説

2012-11-29 18:44:41
マッスルきりい @mkirii

思わず伸ばした手が男の頬に触れる。長い睫毛で縁取られた辰砂が向けられるが、映り込む姿はゆらゆらと儚い。「そいつは誰かを救うために俺のようにお前の血を飲んだのか?『雨』とは一体、なんだ」繰り返された問答。問う度に躱されたこの問いも今ならば応えてくれよう。 #ワンピースリレー小説

2012-11-29 18:44:51
マッスルきりい @mkirii

「命よ」男は深く息をついた。「ここは『見世』であり現世とは理が異なる。見世の物を外へ出せるのは、見世の住人だけよ。決められた命数を、雨を繰ろうとする貴様の様な酔狂な人間が欲しがる誠の賢者の石も、ここでこそおのが働きを思い出そう」 #ワンピースリレー小説

2012-11-29 18:44:59
@wavoow

しかし、ローは確信にも似た感覚で言葉を吐いた。「嘘、だな。俺が聴くべきは何れだ」いい終わる前より男の目元が綻びる。ああ、この人成らざる者は本当に言葉が好きなようだ。「…げに…人間よ、理に抗うと宣うが其も善かろう…」男の手がローの短髪を撫でるように梳く。 #ワンピースリレー小説

2012-11-29 19:16:17
@wavoow

ひたひたと、ローの鼓動を確かめるように、男の手が浅黒い肌の上を蹂躙する。「息は宵々、孵りは…」男の手を注視していたローの視界が突如暗くなる。唇に触れる柔い肉厚と、僅かに狂気の片鱗を見せる牙。薄い唇を誘うように舌でなぞられては開き、開けば混ざり合うしかない。 #ワンピースリレー小説

2012-11-29 19:22:51
@wavoow

下顎を犯さんとする舌に己のそれを絡めれば、訴えるようにくぐもったのは男か、自分だったか。いっそ溶け合うように、息も疎らなままに行為を続ける。不意に、胸に置かれていた手が何かを掴み、抜き取るように蠢いた。違和感を覚えて目を開いたのは、間違いだったのだろう。 #ワンピースリレー小説

2012-11-29 19:27:32
@wavoow

愛しい、愉しい、狂おしい。快を全面に表し、ともすれば気を遣ってしまいそうな程に恍惚に満ちた男の顔に、漏らされた吐息に、理性ごと本能も引き摺り出されたような感覚に陥る。「お孵り」痛みもないまま奪われた心は、男の全てを赤で穢しながら脈動を打つ。赤と、白の世界。 #ワンピースリレー小説

2012-11-29 19:34:06
@wavoow

「此は我が物ぞ、我が物ぞ…」紅潮する頬も、白く滑らかな指も、今は赤に染め上げられ酷く妖艶だ。「雨、已…自然の摂理を、失う…か」心臓を取られて尚呼吸を辞める事のない己を、どう現して良いかは解らない。「お帰り」胸を、押された。一気に傾く思考、風鈴の音、男の顔。 #ワンピースリレー小説

2012-11-29 19:42:10
@wavoow

気付けば男を見掛けた最初の場所に立っていた。白昼夢、にしては随分鮮明で熱烈で、当分夜な夜な想うのも仕方ないほどだったように思える。ただ、脈動を感じない身体だけが、全て事実だと訴える。風鈴の音が響く。失った心臓に、男の唇を確かに感じていた。 #ワンピースリレー小説

2012-11-29 19:46:00
@wavoow

『昏々と石を転がす』ー 完 ー #ワンピースリレー小説

2012-11-29 19:49:03