ワンピースリレー小説

twitter上で不特定多数の人間で小説を書き進めていく先の見えない小説。設定も特にないのでどう転ぶかは発案者にも不明。
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マッスルきりい @mkirii

【リレー小説とか】季節外れの音色に目を向けると、色づいた葉よりも美しい赤が目に飛び込んできた。紅葉の陰に見え隠れするそれは、一層艶やかに輝いて見える。一瞬視線が絡み合うが、ローはそれを紅葉を見ているように装ってしまった。【面白そうですよね】

2012-10-27 03:35:55
マッスルきりい @mkirii

【続き】赤を纏う人物はその様子に声なく笑うと、涼やかに風鈴を一鳴させて静かに室内へと姿を消した。夢幻を見たかのような淡い一時。それがトラファルガー・ローとユースタス・キッドの出会いであった。【ゆる募】 #ワンピースリレー小説

2012-10-27 03:36:25
@wavoow

【こういう】軟く木霊する高音は、ローの足を進めるのに充分な魅力を持っていた。だが、それ以上に辰砂の名残に惹かれていた。あの一瞬で奪われた何かを取り戻そうと躍起になっていたのか、それが単なる好奇心なのか、未だローの理解する範疇に答えは見当たらない。【事か】 #ワンピースリレー小説

2012-10-27 03:44:23
@wavoow

【言い出しっぺの】常より僅かばかり早打つ鼓動がローを急かす。ああ、あの赤に触れたい。目新しいの一言で片付けられないそれを、何と言えば適切だろうか。風鈴の高音の歌が木霊し、耳に心地好い。誘うような音色に聴覚を委ねながら、ローの背中もまた室内へ隠れた。【法則】 #ワンピースリレー小説

2012-10-27 03:56:26
マッスルきりい @mkirii

室内には独特の匂いが籠もっていた。粉っぽい、とも言い切れぬそれは、壁面に備え付けられた棚や梁から吊された薬草類からなのだろう。見渡せば棚には瓶が所狭しと並べられ、その中には気の弱い者であれば気を失いかねないようなおぞましい姿が見受けられた。 #ワンピースリレー小説

2012-10-27 17:45:54
マッスルきりい @mkirii

しかしローにとってはそんな物は日常的に見ている物で、さして珍しくはない。しかし、それでも見事に揃えられた薬事品には自然と感嘆の息が漏れてしまった。 #ワンピースリレー小説

2012-10-27 17:46:54
マッスルきりい @mkirii

「いらっしゃいませ。何をお探しで」再び響く透き通った音色。狭い室内に木霊するそれは屋外で聞いたときよりは些か低く聞こえる。しかしそれよりも、低く響く男の声が静かな夜の湖面を揺らすかのようにローの耳を強く打った。 #ワンピースリレー小説

2012-10-27 17:47:08
@wavoow

【お腹が】声に導かれ振り向いた先に先程の辰砂を認める。声は確かにローに向けられていた、が、男は薬草を調合している最中であった。擦り潰される音、薬草の断末魔と、風鈴の音色。止まない、已まない、しかし病む如く研ぎ澄まされる聴覚は、その凡てを舐める。【空いたよ】 #ワンピースリレー小説

2012-10-27 17:57:40
@wavoow

【カルビ弁当】「息は宵々、孵りは強い」呟きながら立ち上がった男は、ローより幾ばかりか背が高いようにも思えた。「雨が已まねえのかい?」ヒタヒタとローの周囲を歩きながら男は呟く。何の揶揄なのか、意図するものは読めない。ただその声を聴いていたかった。【温卵乗せ】 #ワンピースリレー小説

2012-10-27 18:04:23
@wavoow

【誰か私を】徐に首を摩られローは全身が粟立たせた。想像よりも、しかしこの空気に伴った低温を感じる。背に感じる温度は静止したが、男の両の手はローを弄る。敵意は感じないが得体も知れない。暫くそうして、男は詰まらなさそうに呟いた。「ああ、降ってやがる」【飼って】 #ワンピースリレー小説

2012-10-27 18:11:22
マッスルきりい @mkirii

「雨?何のことだ?」触れられた心地よさに恐れを感じ、ローは男の手を払った。薬の染み込んだその手は、その冷やかさとは対照的にローの体に痺れと熱を残す。この店に入るべきではなかった。そう後悔してもすでに遅い。 #ワンピースリレー小説

2012-10-28 13:01:31
マッスルきりい @mkirii

美しく感じた赤も、仄暗い室内では心もとない燈火に揺られ、いっそ妖艶に見える。「息は宵々、孵りは強い」。童謡は一種の警告だ。それを口遊むこの男にさらに興味を持つと同時に、これ以上深入りすべきではないと頭の中では警鐘が鳴り響いていた。 #ワンピースリレー小説

2012-10-28 13:01:40
マッスルきりい @mkirii

「薬をくれないか。鎮静剤を切らしたんだ」ローはこの男から少しでも早く離れようと、話を切り替えた。客として接すれば用が済めばこの店を出られる。「…何か指定はあるかい?」男は気だるげに問い、「この店の勧めの品で良い」と答えると男は無言で暗い店奥へと姿を消した。 #ワンピースリレー小説

2012-10-28 13:01:48
@wavoow

【トイレ】男の手が辿った跡を思わず摩る。たかが呼吸に喘ぐ感覚というのは正にあの状態の事だろう。店内にローの少しばかり荒い息遣いが響く。早く落ち着かなければ、と思うが、思うように呼吸と動悸は収まらない。そして、いくら待てども男は戻って来なかった。【いきたい】 #ワンピースリレー小説

2012-10-28 14:46:32
@wavoow

【原稿】重苦しい空気に入口から吹き込んだ風が交じる。謂われもない焦燥に襲われ、ローは思わず奥へと足を進めた。帰れなくなるぞ、と頭の中で声が響いた、かもしれない。「生けない人間だ」突如鼓膜に落ちてきた音に、ローの身体の全ての動きが縫い付けられた。【終わらん】 #ワンピースリレー小説

2012-10-28 15:32:58
@wavoow

【眠い】「頼んだ、薬は」辛うじて動いた口が、漸くそれだけを紡いだ。鼓動が煩い。動脈が忙しなく音を響かせる。身体の全てが麻痺したように、それでも目まぐるしく脈打っていた。「雨を已ませたいとな。奇怪な人間だの」男はそれだけを言い、奥の座敷に横になった。【です】 #ワンピースリレー小説

2012-10-28 15:42:40
マッスルきりい @mkirii

【ちょっと間が】そのまま男のテリトリーである座敷に足を踏み入れても良いのだろうか。それでもローは履物を脱ぎ、男の傍らへと鎮座した。男は赤く縁取られた唇の端を上げ、その様を見つめていた。「頼んだ薬は、まだか」そう再び問いを繰り返す。【あきすぎた】 #ワンピースリレー小説

2012-11-20 21:50:07
マッスルきりい @mkirii

乾いた口内から絞り出した声は壁に吸われて儚く消える。ただ己の鼓動と嚥下した唾液が喉を鳴らす音だけが、虚ろに室内へと響いた。店表とは違う空気を肌で感じる。ピリピリと肌を刺すその感覚は、縄張りを侵したものに対する警告か。はたまた己の内を探ろうとしているのか。 #ワンピースリレー小説

2012-11-20 21:50:17
マッスルきりい @mkirii

その感覚に思わず先程摩られた首筋ざわついた。それでも辰砂の髪と同色の瞳を見続ければ、男はふっと息を吐いて視線を逸らした。「已ませるには、何とも惜しい」そう言うと、ついとローに向かって腕を伸ばす。眼前で開かれた掌には、瞳とよく似た硬質の赤石が握られていた。 #ワンピースリレー小説

2012-11-20 21:50:27
@wavoow

【鼻から】どうにも男の言葉はローにとって形容し難い重厚さを持っていた。それはローの躊躇を現しているのか。「人間よ、此が何ぞ解るか」男の掌から辰砂の硬質が落とされた。辰砂。染料として用いられながらも、古くは鎮静剤の一種として用いられてきた鉱石だ。【涙が】 #ワンピースリレー小説

2012-11-20 22:00:56
@wavoow

【これが】「已まぬ方が、良い」それを見下ろす男の瞳は無。何も映さず、それに酷似するのは海の虎、その眼のように思えた。「…言葉遊びに付き合っている暇はない」ローがそう唸ると、男は地に響かんとする声で低く、嗤う。背に冷や汗が伝うが、それ以上動けない。【涙…!】 #ワンピースリレー小説

2012-11-20 22:04:55
@wavoow

何がおかしい、何かがおかしい、そもそも店内ではローこそが異質であった。店自体がイレギュラーだとするなら、恐らくローは迷い込んでしまったのだ。「哀も変らず人間は斯様に愚かか…げに、げに…」ローの脳裏にここまでの道程がフラッシュバックする。ああ、失念していた。 #ワンピースリレー小説

2012-11-20 22:08:35
マッスルきりい @mkirii

風鈴の音は波紋。空を伝わりこの世とは別の世界の狭間を揺らしたのか。敷居は結界。世界に受け入れられぬものはそこで篩に掛けられる。ローはその網目を抜けてしまったのだ。粉にした辰砂の中に混ざった異物。降り続ける辰砂の雨。抜けてしまえば、あとには戻れない。 #ワンピースリレー小説

2012-11-22 12:47:31
マッスルきりい @mkirii

風鈴の音を耳にした時点で、ローは迷い込んでいたのだ。涼やかな音色が揺らした境界線。居るべき世界に、辰砂を纏う男など居なかったのかもしれない。全ては夢幻。そう思っていればよかったものを。惹かれて踏み込んだローは、まさに火中に舞い込む羽虫の様な愚かさ。 #ワンピースリレー小説

2012-11-22 12:47:40
マッスルきりい @mkirii

【急展開してて】そして踏み込んだ先で、男の手にするものを欲してしまった。男を、欲してしまった。もう、還れはしない。孵れはしない。「お前はいったい、なんなんだ」恐れから零れた言葉は辰砂の後を追って空しく座敷へ転がる。【ビックリ】 #ワンピースリレー小説

2012-11-22 12:47:49