unpeu_k #twnovel 2012/9 「ヤギなので二言めには」

twnovelまとめ:その⑩(9月分)
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二月大笑 @unpeu_G

始まりはものもらいだった。わずかな黄色ブドウ球菌。しかしどんどん繁殖した。それを食べに粘菌が来て、粘菌の後に苔が生えた。苔の間の種子が発芽し一年草と多年草が茂る。鳥が来て遂に木が生え出す。この辺りから動けなくなる。陽樹が茂り陰樹が伸びる。私は極相林になった。 #twnovel

2012-09-03 17:24:33
二月大笑 @unpeu_G

光あるところに闇も集まる。よって公爵家のメイドには悪魔払いも仕込まれる。使えると認められた者だけ残され銃を渡される。もちろん銀の聖杯を鋳潰した弾丸である。使用人全員に支給されそのためにこの屋敷には輝く礼拝堂がある。なんだか誘蛾灯みたい、と思うが当然口にはしない。 #twnovel

2012-09-04 00:06:41
二月大笑 @unpeu_G

私の魔法のステッキで世界の闇を駆け抜ける。小さい頃にテレビの中の魔法少女に憧れて父親にねだった物だ。その頃の手にはまだ少し重かったセミオートマチック。初めては父が殺された時。画面の彼女達のようにキラキラとではなかったが光が跳ねて敵が倒れた。絶対に諦めない。私も。 #twnovel

2012-09-04 21:21:47
二月大笑 @unpeu_G

彼女は剽窃を恐れない。「大丈夫。もし利益を得てたら歩合をきっちり取り立てる。私はアイディアを出すだけ。誰かが頑張って売ってくれた私の分はちゃんと貰う。」どうやって取り立てるのだろう。「えーそれは企業秘密だよ。あ、やった。また引っかかった。この話自信あったんだ。」 #twnovel

2012-09-06 00:47:02
二月大笑 @unpeu_G

「犯人は唐揚げ好きとのことですが。」「下味に時間がかかります。計画性が伺えますね。」「小麦粉で衣をつけます。」「チラリズム嗜好なんでしょう。」「さらに油で」「加虐的です。」「再現したものがこちらです。」「おいしい。これははまりますね。」「快楽に溺れ易かったと…」 #twnovel

2012-09-07 00:22:00
二月大笑 @unpeu_G

夏越し物でも日焼けや脚の切り傷は勿論ございません。綺麗なだけでは物足りないと?さすがお客様御眼が高い。蚊に刺され跡などどうでしょう。くっきりと膨らんだ跡が熱を持ち少し赤くなります。 好きな所にお付けしますよ。脛や内腿、二の腕の内側、うなじなどには如何でしょう。 #twnovel

2012-09-10 00:56:17
二月大笑 @unpeu_G

今回の被害者である生徒の成績は非常に優秀で…ただ以前から遊びと称して「将棋でロボットに勝つようにアンドロイドにプログラムされたいわゆるロボット三原則を出し抜く」行為を繰り返すことでストレスの…そうです一昨年の教員B-302型のリコールの原因の事故もこの生徒です。 #twnovel

2012-09-12 19:03:49
二月大笑 @unpeu_G

比重が軽くてさらりとした油を釜で温める。適度に高温になったところで縁からそっと滑り込む。全身から立ち昇る泡が無数に皮膚をくすぐっていく。関節の動きはなめらかになり表面の汚れは焼き切れる。こんなに気持ちいいことなのに蛋白質と水でできてる人間はやれなくてかわいそう。 #twnovel

2012-09-16 21:17:47
二月大笑 @unpeu_G

#twnovel ロッジにはカマドウマがいた。かわいくきゃあと言うべきかしらと思ったが既に遅かった。都会育ちの全員が男も含め逃げ出していた。キャンプを言い出したのは誰よ。ため息を付いて摘み出す。ティッシュに包んだのがせめてもの文明アピールだったのだがもちろん誰も見ていなかった。

2012-09-19 00:53:34
二月大笑 @unpeu_G

#twnovel 東京の朝のラッシュといえどもこの路線はまだ人間的だ。精々荷物が触れ合うくらい。隣に立った女の人を見るともなしに見下ろしていた。小さい頭に華奢な肩。黒い睫が重たそう。不意に彼女が頭を回す。首筋を伸ばすようゆっくりと。ガゴッバキバキゴゴゴゴゴ。私だけがその音を聞く。

2012-09-19 19:44:34
二月大笑 @unpeu_G

#twnovel 変哲もない池だった。深さは人の膝くらい。広さはともかく全然浅い。ぴーちゃんはこんなに大きいのに。なのに姉は口に指を当て静かにしろというばかり。やがて水面が凪ぎ月と周りの樹々が映り込む。現れた深さを指し示し「ここに隠せばいいでしょう?」ぴーちゃんが喜んで滑り込む。

2012-09-20 01:52:47
二月大笑 @unpeu_G

#twnovel ヤギなので二言目には「それで手紙は食べるんですか」など言われてニヤニヤされる。あれは牧歌的な昔の話。手紙なんて長らく見かけない。稀にこのように貰ったとしてももちろんちゃんと読んで返信。その返信に返事が来る。それをまた読んで返信を…そういえばこれはいつ終わるのだ?

2012-09-21 00:32:48
二月大笑 @unpeu_G

#twnovel 胸の谷間を横目に見ながら「キュウリ好きっしょ?」と話を振る。もう大分酔っぱらっている谷間はゆるゆると首を振る。「カタツムリのにおいするじゃない」隣の男がサラダを吹いた。「子供の時に飼ってたけどあれって雌雄同体で卵産むときこーやって…」違う。求めてた下ネタと違う。

2012-09-22 00:08:47
二月大笑 @unpeu_G

#twnovel 手足に付けた鉤爪をガシャガシャ数回開閉する。手首足首でしっかり締める。そして頭上の崖を見上げる。岩肌。所々に草。大丈夫行ける。勢いで行く。ゴーグルをつけ溜めてから跳ぶ。手足の爪が崖を捉える。自分を上に放り投げる。全身を上に上に意識して崖を一気に駆け上がる。

2012-09-22 16:42:45
二月大笑 @unpeu_G

#twnovel 携帯を充電器につなぐ。夜でも直接話せるのが携帯の便利な所なのにあいつが携帯を持ってないからこんな手段が必要になる。携帯を握って意識する。電線→電柱→分電盤→あいつの部屋の卓上ランプ。点滅させて合図を送る。家電から了解のワン切り。十五分後に駅で落ち合う。

2012-09-23 01:56:11
二月大笑 @unpeu_G

#twnovel 脚が砕けるほど踏みしめても心臓を破くほど走ってもすぐに再生するのだから超回復細胞体への改造手術は大いに流行る。自分の脚で、手で限界の先を体験できるのだ。ただドーピングと見なされるためスポーツ選手は使用できない。オリンピックは繊細で嗜好性の高い大会となる。

2012-09-24 22:06:10
二月大笑 @unpeu_G

#twnovel 犬を衛星で打ち上げた。宇宙開発黎明期の最早伝説か神話である。被実験役を全うした犬は回収されなかった。衛星は漂い続けある恒星の惑星となる。犬の体は朽ち果てたが滅ばなかった菌類その他が繁殖と進化を続け知的生命体になった。生命体達はその星を地球と呼んでいるらしい。

2012-09-25 00:46:34
二月大笑 @unpeu_G

#twnovel 面食いなのでごめんなさい、と言う人は優しいのです。面食いじゃないけど無理、と言われるよりはマシでしょう?そんなに泣かないで下さい。この辛い経験で成長して次回に活かせると良いですね。真似をしてみてはいかがです?好きなタイプは優しい人と言う人も多いことですし。

2012-09-27 01:41:38
二月大笑 @unpeu_G

#twnovel 晴れて中学生となった加藤光宙少年はとある理由により潔く賢く健気にならざるをえず、その運命をチャンス捉えブランド研鑽を惜しまない。進学祝いに犬を貰った。つまりあれをしなくてはいけない。名前を付けるという行為。揺るぎない声でこう叫ぶ。「君の名前はサトシに決めた!」

2012-09-28 00:46:22
二月大笑 @unpeu_G

#twnovel 私の「太郎」という名前が嫌だった時ももちろんあった。しかし今では感謝している。世の人は「弟は二郎?」とか「やだうちの犬の名前と同じw」なんて事を口にするような人とそうではない人に分けられる。相手がどちらかすぐわかる。両親からのすごく便利な一生物の贈り物だ。

2012-09-29 02:21:52