濡らした指を固定化する 冷たい風が足元から湧き上がるのは 偽りの笑顔と吐息に 愛を凍らせてしまったから #冬の衝動
2012-11-01 02:14:11帰れない落ち葉の その踏む音がひどく みみざわりで 折り重なり 窮屈そうに 冷えていく 一枚の手紙の上に載せられた季節が また やってくるのだ #冬の衝動
2012-11-01 02:17:01乾いて切れたくちびるを舐めて ここにあったはずの残像を破る 醜く歪めた約束を燃やして 舌の上で石ころに変えた 笑いながらこぼれてゆく 冷たい砂で埋まれよ世界 #冬の衝動
2012-11-01 02:30:18長く編みすぎた マフラーのほどけた先を ただ、見つめている 乗り過ごしたバスが戻ってくるまで ずっと凍えながら待っている 風がすぎ 夜半過ぎ きっと迎えに来てくれる かじかみと そんな嘘を 知らぬふりして #冬の衝動
2012-11-01 02:30:46もう昔のこと。それでもさむい夜に思い出すのは、君のぬくもり。今にも消えてしまいそうな、ロウソクみたいな、でも太陽みたいに暖かな、君だった。 #冬の衝動
2012-11-01 02:47:02重ねたのは温度だけ 冷えきった爪先を暖めて 声も出せずに意識を混ぜあう 飛び降りる感覚が痛みを誤魔化して 途切れた記憶 目を閉じて 目を閉じて なにもない孤独の散らばる部屋で 目を覚ましたら 喪失の穴から逃げだすための悪足掻き やり直し #冬の衝動
2012-11-01 03:09:24冷たくなる 鼻先や手先 ぐるりとマフラーを巻いてうずくまる きりきりと痛む つらいつらいと口の中で呟く 君はいない 私は ここに一人だ 都会の真ん中 暗い路地 輝きの消えたネオンの数々 ちかり、と目の前がまたたいて思った ああ、ここはどこだっけ #冬の衝動 (忘却)
2012-11-01 06:55:13鳴り響く鳴動、鼓動、嬌声。雪降る窓辺でその行為を聴くの。貴方と誰かの睦み合い。ばかみたいに醜いね。精々その子と楽しんでね。私は美しく雪に咲いているから、触れないで。(そんな私が好きと言ったのは貴方よ、酷い人)いっそ貴方への激情で私が溶けてしまえばいい。裂いたのは手首。 #冬の衝動
2012-11-01 11:18:33明け方の 純度の高い 白い息 吐いた僕から 冬の衝動 木枯らしに 椿の首が 処刑され 冬の衝動 伝播していく ひとりきり 冬の衝動 探して歩く 君はいないか 探して歩く #冬の衝動
2012-11-01 11:33:35きみを置き去りにした太陽がオリオンを燃やして、白く光るかの存在を羨んでいる。世界をゆるやかに押し上げていく透明な両腕と、睫毛の先に振り落ちる涙の痕跡をピンで射止めて。美しく羽根を広げる記憶の奥に、探していた銀の砂。たとえこのまま終わっても、永遠をここに宿せるように。 #冬の衝動
2012-11-01 13:24:28消え入りかける面影、変わらない口騙し。知らないうちに変わっては、目を盗んではそこは亡骸。最後には辿った足跡さえ遺さない。手で掴んだのは雪溶け水。(これがあなただったのね) 春よ芽吹け。 #冬の衝動
2012-11-01 13:34:56さくり、さくり。一面に、ふわり、冷たく、敷き詰められた、白。さくり、さくり。僕の後について歩く僕の跡は ふわり、ふわり。落ちてくる白に消されてく。ばたり、どさり。どうか、僕は、 消さないで。 #冬の衝動
2012-11-01 14:42:08人肌恋しくなる季節だから、大した意味なんてないの。だから。だから、今私の頬を伝っている液体なんて、君のせいじゃないの。 #冬の衝動
2012-11-01 14:42:18この白が溶けるように。この白に溶けるように、君のことを。一面の白に 散る赤。嗚呼 なんてきれいなのだろう。私が忘れられないなら、どうか私を(この世界から忘れ去られたくて) #冬の衝動 (11/01 お題,忘却)
2012-11-01 14:53:41冷たいベンチに身を横たえて 乗り遅れる予定のバスを待つ 息を白くするのは 季節のせいじゃない 鳥を失った鳥籠が 胸の中でからから揺れる、4時。 #冬の衝動
2012-11-01 16:01:06暖かな場所に潜っていた。出るのが難しくて、縮こまる手足。祈りは儚くて、揺れる意志。どうか責めないでと願った君。月曜日の朝、揺れる木漏れ日。太陽は低く。一体、何が真実だったのだろう。積もる枯葉の上、今も分からないでいるよ。 #冬の衝動
2012-11-01 16:28:40知らないことが多すぎて 合わなくなった鍵穴から木枯らしが吹いた 抜け落ちた鍵は役目を終えて 急に古びたみたいに黒ずんでゆく ありがとう、ごめんね 呟きながら水に沈めた もうこのドアを開けることはないから 部屋の片隅の氷河期で 安らかな眠りに就いて #冬の衝動
2012-11-01 16:35:46夕陽に照らされた雲がとても綺麗で可愛らしいピンク色。どうしても見せたくて写真を撮るけれど、悴む手ではあらわれない。この色じゃない。美しいものを共有できないもどかしさと、指先の冷たさに溜息。伝えたかったと伝えたい、忘れる前に。 #冬の衝動
2012-11-01 17:52:54割ったそれから立ち上がる曇 真ん丸を半分ずっこ 両手にもって頬張る 財布のなかは残り20円 (だって、中華まん全品100円って…) 赤く染まった鼻先と頬が ほんのり肌色に戻る #冬の衝動
2012-11-01 18:03:56白く脆い硝子の森を どこまでも歩いてゆきたかった つなぐ手で温もりを奪い合い かじかむ指に血が滲んでも 辿りつく場所がほしかった。 ひび割れた南十字の向こう 届かない終着駅 線路は二度と交わらない。 ふたり 傷痕を手離せば ひとりに戻れますか。 #冬の衝動
2012-11-01 19:51:26この冬の舗道の上、ふいに君への想いを投げ捨てたくなったのは、余りに報われないそれが止め処無く僕の熱を奪っていくと気付いたからだ。今まで目を逸らしていたこと。せめて、立ち止まりたかった。もう一歩も歩けないと呟いてしまう前に。 #冬の衝動
2012-11-01 21:33:24冷たい風に吹かれると、不思議な切なさに心が揉み絞られる。「思い出してよ、思い出してよ。」声にならない無数の叫びが沸き立って、胸の中に呼びかける。いつの事かも判らない。あれは本当だったのか、それすらも判らない。忘れた夢のかたちを掴みたくて、口を噤んだ空に挑みかかる。 #冬の衝動
2012-11-01 22:43:17紅蓮に染まる木々の眠りに小鳥が切望の空を辿る。僕は食いつぶされた秋を踏みつけ、一等星を凍らせた。澄んだ夜空に浮かぶものは地上を見下ろしダンマリを繰り返す。 #冬の衝動
2012-11-01 22:47:59