ももの連載まとめ

もも @momomoga

黄瀬[41]でも、以前とは変わったこともある。黄瀬くんは、私が練習を見に行くと必ず何度かこちらを見るようになった。邪魔しないように見張っているのかな。見られている間、私もじっと見つめ返すから、目が合ってるみたいでドキドキする。やっぱり黄瀬くんは格好いい。 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[40]本当に、よかったのかな。私はあれから毎日バスケ部を見学している。相変わらず黄瀬くんは大人気で、黄色い声援は止むことを知らない。そんな女の子たちを掻き分ける度胸を私は持ち合わせていないから、最近では体育館二階の隅っこが私の定位置になりつつある。 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[39]調子乗りすぎた、かな。黄瀬くんはこちらを見ない。「えっと、あ、ごめんね、」「あー、」彼はおもむろに髪をわしゃわしゃかき混ぜて、「…来ていい。」そう言い、すぐに立ち上がって走り去る。私は、今起こったことをしばらくの間うまく飲み込めずにいた。 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[38]「あ、あの、私、好きっ、です…」噛んだ。噛んだ。恥ずかしい。私、焦りすぎ。顔に熱が集まる。「あ、そ。」一瞬、彼が微かに笑ったように見えた。それからぱっと目を逸らされる。「じゃあ、練習、見にくれば。」「あ、うん…行く。毎日、行ってもいい、かな、」 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[37]「…え、黄瀬、くん、」項垂れていた顔が、ゆっくりとこちらを向く。私を捉えた瞳が、僅かに揺れた気がした。「…あの、練習、は…？」緊張で喉が乾く。「…練習、見にこないんスか。」「…え？」「それとも…もう、俺のこと、好きじゃないんスか、」え？え？ #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[36]私が会いに行こうとしなければ、見ることもできないんだ。…そうだ、勇気出さなきゃ。怒られてもいいから、一目だけでも見に行こう。頑張れ、私。よし、と意思を固めてぱっと顔を上げると同時に、私は言葉を失った。昇降口に、練習着姿の黄瀬くんが座り込んでいた #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[35]でも、もし本気で怒っているのだとしたら、と思うと怖くて会いに行けずにいる。「はあ…帰ろ。」随分前に授業は終わっていたから、校舎の人は既にまばらだ。「泣いたりして、絶対ウザかったよね…」落ち込む。ここ数日、黄瀬くんを見ていない。 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[34]数日前、黄瀬くんに触れられてから私はずっと混乱していて、どうしたらいいのか分からずにいた。あれは何だったのか。慰めようとしてくれた？それとも…叩こうとした、とか？…だめだ、一人で考え込むとすぐにマイナス思考になってしまう。私の悪い癖。 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[33]「あ…」何やってんだ、何やってんだ俺。すぐに手を引っ込めると、あいつは目を見開いて俺を凝視していた。居た堪れなくなってくるりと背を向け、そのまま歩きだす。なんだこれ、顔が、死ぬほど熱い。心臓がドクドク煩くて、ぎゅうっと胸を押さえて目をつむった。 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[32]その声は俺の鼓膜に張り付いて、じわじわと俺の脳を侵食する。頭がおかしくなりそうだ。実際、おかしくなってしまったのかもしれない。今、こいつを抱きしめたくて仕方ない。熱に浮かされたまま、頬に手を伸ばす。その濡れた頬に触れた瞬間、肩がびくりと揺れた。 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[31]そんなこと、絶対に認めたくない。だけど、こいつが笠松先輩と一緒にいたとき、いやだ、と思った。思ってしまった。俺は、「…俺のこと、本当に好きなんスか。」その言葉に、また俯いて、「……はい。」消え入りそうな声で呟いた。 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[30]「…」助けたとか、今思い出した。「でも、好きとか、黄瀬くんには迷惑なだけなんだよね、ごめんね、…好きになって、本当にごめん。」そう言って、涙を流したまま困ったように笑った。その痛々しい笑顔に、俺の胸も痛む。…俺は、こいつに絆されてしまったのか。 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[29]「うまく説明できない…でも、黄瀬くんは覚えてないだろうけど、私が電車で痴漢にあったとき黄瀬くん、助けてくれたんだ。すごく怖かったから、助けてくれて本当に嬉しかった。それから、学校でも時々話したりしてくれて…いつのまにか好きになってて…。」 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[28]こいつは、本当に俺のことが好きなのか。こんな風に言われると信じてしまいそうになる。でも、「俺の、どこが好きなんスか。」顔だけで好きになられても、今まで散々言われ続けた俺の心は動く気がしない。あいつの目からは未だ、涙が流れ続ける。「…どこ、…」 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[27]目の前の女は、目からぽろぽろと涙を落とす。俺の言葉にいつもあいつは俯くだけで、泣くのはこれが初めてだってことに今気が付いた。なんで、今。「…なんで、泣いてんスか。」なんで。「…ごめんなさい…黄瀬くんに、信じてもらえないのが、悲しい、から、」 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[26]私は黄瀬くんが、黄瀬だけが、好きなのに。あ、また涙が出そうだ。もう泣きたくない。黄瀬くんの前では、泣きたくない。「私が好きなのは、黄瀬くんだけ、です、」俯いて、涙が出ないように目に力を込める。「…そうやって、誰にでも言ってんだろ。」ああ、もう、 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[25]「…え？笠松先輩…？」「何とぼけてんスか。俺から笠松先輩に乗り換えたんでしょ。今日一緒にいたし。」どうやら今日話してたのを見られたらしい。「あの、違う、笠松先輩は私を心配してくれただけ、で、」…私、もの凄く軽い女だと思われてたんだ、な… #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[24]「あ、あの、黄瀬くん…？」「…なんスか」「…あの、手…」無言で手を振り払われた。「アンタ、笠松先輩にも手出しておいて何簡単にナンパされてんの？ああ、それとも、あいつとも楽しむつもりだった？」今までで一番冷たい視線を向けられる。軽蔑、されてる。 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[23]「こいつはやめといたほうがいいっスよ、お兄さん。」「…え？」私の手を掴んだのは黄瀬くんで、「それじゃあ、」そのまま歩きだす。慌てて男の人に会釈すると、苦笑いで手を降ってくれた。一方の黄瀬くんは、これは笠松先輩のため、とかぶつぶつ言っている。 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[22]「…あ、大丈夫です。」よかった、相手の男の人、優しそう。「本当？痛いとこない？」そう言って腕を掴まれ立たされる。「本当に大丈夫です。ぶつかってすみませんでした。」「そっか、ならいいんだけど。」その言葉に曖昧に笑うと、突然もう片方の手が掴まれた。 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[21]そろそろ落ち着いてきたし、外も暗いし、帰ろう。目が真っ赤なのが恥ずかしくて、俯いて歩く。この顔で電車乗るの、いやだな。そうやって俯いていたから、目の前に人がいるのに気が付かなかった。「わっ！」尻もちをつく。今日はほんとに最悪だ。「…大丈夫！？」 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[20]笠松先輩の前で、泣いてしまった。「…恥ずかしい。」私もまさか自分が泣くなんて思ってなくて、驚いてとっさに逃げてしまった。「はぁ…」私が泣いたって、何も変わらない。できるだけ泣かないようにしてたのになあ。あの優しさは不意打ちすぎる。 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[19]あの女は、ああやってすぐ男乗り換えるようなやつだ。あんなやつに俺が何か思うなんてことはあり得ない。あっちゃいけない。そうだ、これは何かの間違いなんだ。もしかしたら、笠松先輩を取られたみたいで悔しいのかもしれない。「…消えろ。」俺の前から。 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[18]暫くして意を決したように、あいつの頭に手を伸ばす。そして、恐る恐る頭を撫でた。ああ、先輩絶対緊張してんなーあれは。今まで女の子に触ったこともないんじゃねーの。それにしてもなにこれ。俺、なんでこんなにズキズキしてんの。なんでちょっと泣きそうなの。 #黒バスプラス #桃缶

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黄瀬[17]もし先輩と付き合っちゃったら気まずいなー。あ、想像したら吐き気する。本気でやめてほしい。あいつ、本当に顔が良けりゃ誰でもいいんだな。つまんない女。……え、なんか泣き出したんだけど。なにあれ。修羅場っスか。笠松先輩が見るからにあたふたしてるし。 #黒バスプラス #桃缶