狙撃手の昔語り

相変わらず続いておりますゾンサバ二次創作。 凄腕スナイパー椿の過去話です。 本文ではあまり触れられていませんが、前提としてBL要素あります、ご注意を。
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ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 小さくなった藤野宮中将殿は、暗い所が苦手。「半分あげるね」チョコを半分こにしようとして……失敗したようです。大きさに葛藤しています。 http://t.co/8gtGuxM7 中将殿はどの名前でやっても可愛かった…!

2012-11-04 21:56:32
ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 夜は嫌い、傍にいて頂戴。警備に当たった貴族の屋敷で、令嬢が俺を見上げながら命じてくる。お父様もお母様もお忙しいの、ねえいいでしょう?ご命令とあれば。俺の言葉ににこりと笑って令嬢はチョコを差し出す。お前になら半分上げても良いわ。ありがたき幸せ。

2012-11-04 21:45:20
ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 俺の言葉に満足げに頷いた令嬢は板チョコを力任せにぱきりと割る。…これじゃあ駄目、半分こにならない。令嬢の手元を見るといびつに割れたチョコレート。お嬢様、自分はこれで充分でございます。一番小さな欠片を手に取ると首を横に振る。それではお前の仕事に報いていないわ。

2012-11-04 21:48:14
ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep いいえ、お嬢様が自分を選んで下さった、それだけで充分でございますよ。…では、これからずっとお前を選ぶわ。はい。どこまでもついてきてくれるのね?はい、お嬢様。嬉しい。令嬢は満面の笑みで言う。それだけで充分すぎる報酬だ。

2012-11-04 21:52:05
ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep はい。何です、このチョコレートは。今はもう半分にちゃんと割れる。お見事ですな中将殿。そうだろう。美味しいですな。全くだ。ただあの時のチョコレートは確かミルクチョコレート。今のチョコレートはビターチョコレート。大人なのだろうお前は。中将殿はゆったり微笑む。

2012-11-04 21:55:37
ゆき。 @Yukilinus

@itsumonoTL 小腹減った、何か甘いもの食わね。悪くないな。蓮見が出してきたのはチョコレート。嫌いだっけ。俺の顔を見て不思議そうに蓮見は訊く。いいや、昨日妙な夢を見たものだから。蓮見は乱雑に板チョコを割り当然の様に自分が大きい方を取る。俺、子供だもん。楽しげに笑う。

2012-11-05 09:36:07
ゆき。 @Yukilinus

@itsumonoTL どんな夢見たの。気になるか。たかだか板チョコ一枚でそこまであんたの顔が百面相になるなんてさ。昔の話だ。ふうん。蓮見はそれ以上何も訊かず板チョコを齧る。何か俺を驚かせたら話してやってもいい。そんなことなかなか思いつかねえよ。教師の話とっときゃ良かった。

2012-11-05 09:46:40
ゆき。 @Yukilinus

@itsumonoTL 鼻先にでなく眉間に皺を寄せて唸る蓮見の頬に唐突に赤い直線が生じる。いって!ふと周りを見ると銃を構えた男達がこちらに向けて叫んでいる。その食べ物寄越せ。出たよ乞食。板チョコを齧りながら蓮見は呟く。皺は眉間ではなく鼻先。何でこいつらいつも偉そうなの馬鹿なの。

2012-11-05 10:05:46
ゆき。 @Yukilinus

@itsumonoTL なあ椿さんこれびっくりした?頬に滲む血を指差し蓮見は暢気に訊いてくる。いや別に。体張ってるのに。そういう問題か。お前ら人の話を聞いてんのか!あれまだいたの。周りの温度を一気に下げる冷え冷えとした声で蓮見は呟く。やるわけねえだろ、失せろクズ共。

2012-11-05 10:11:19
ゆき。 @Yukilinus

@itsumonoTL これが見えねえのか!男達がこれ見よがしに銃をちらつかせるがそれがどうしたと蓮見はにべもない。この野郎!やけくその様にこちらに放たれた銃弾を蓮見は怯まなかった。無造作に日本刀を振るう。ぱちん。銃弾が真っ二つに割れる音が響いた。おう。本人が目を丸くしている。

2012-11-05 10:17:28
ゆき。 @Yukilinus

@itsumonoTL いやーやれば出来るもんだね。馬鹿、どうせ紛い物の弾だったからだろう。…びっくりした?…ああ。やり。暴徒どもはまだ銃を構えているので俺は呆れながらも引き金を引く。奴らの手から一瞬で銃は弾けとんだ。なあ。蓮見は獣の様な物騒な笑顔で続ける。まだやるの。

2012-11-05 10:22:08
ゆき。 @Yukilinus

@itsumonoTL あのね、俺、何の努力もしないで食い物手に入れようとする奴が最近大っっ嫌いなんだよ。今面白いこと出来たからかろうじてお前ら切り刻むの我慢してやってるけど。どーする?失せる?それともこの世から失せる?日本刀を目の高さに翳しながら蓮見は言う。冷え冷えとした怒り。

2012-11-05 10:39:23
ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep いてえ、と蓮見は頬の傷を乱雑に手で拭く。あ、やばいまた説教される、まあいっか。手についた血を舐めながら蓮見はこちらを見る。…やりすぎた?いいや。首を横に振る。俺ですら連中には冷えた怒りを覚える。蓮見の心境など計り知れない。なあそれよりさっきの話。ん?夢の話。

2012-11-05 10:53:57
ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 驚かせたら教えてくれるっつったよな?…ああ、お前の勝ちだ、ゆっくり話してやる。俺の言葉に蓮見の黒い目が丸くなった。マジで?何がだ。てっきりはぐらかされると。椿さん大人だから。大人でも喋りたくなる時もある。そう言うと俺は板チョコを齧った。苦味が今は懐かしい。

2012-11-05 11:05:20
ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep なあ、野暮なこと訊いていい?昔語りとも言える夢の話を聞いて俺は口を開く。何だ。俺の問いの内容なんか予想済なんだろう。椿は口元に笑みすら浮かべてる。そのお姫様とは結局夜明けのコーヒーを飲んだの?いいや。だよな、あんたそういうのは不器用そう。お前は遠慮がないな。

2012-11-07 12:03:10
ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 椿の気持ちは何となく分かる気がする。何故なら俺にも大事なお姫様がいるから。俺はちはやがどんなに綺麗に成長して、俺好みの女になって現れたとしても絶対に抱けない。ベニーのことを抜きにしても。(まあベニーがいたら容赦なく俺は切り刻まれ、ちはやを説得にかかるだろうが)

2012-11-07 12:04:36
ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 俺より良い男は掃いて捨てる程いる、余所を当たれ。そう言うだろう。お姫様にはお姫様のままでいてほしい。お姫様が汚れるところを見たくないし、自分で汚したくない。何とも身勝手極まりない言い分。子どもだ獣だ馬鹿だと散々言われてる俺ですらこうだ。

2012-11-07 12:05:48
ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 椿みたいな分別のある大人からしたらもっと 有り得ない話だろう。それがお姫様にとって幸せかはまた別問題になるだろうが。そもそも再会のきっかけは何。貴族の子女は一定期間軍に属する慣習があるだろう。ああ、あれだ、「位高ければ徳高きを要す」ってやつ。詳しいな。

2012-11-07 12:06:38
ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 蓮見の家はそうでもないけどな、豊島の家は一応貴族なんだよ。その時に向こうが俺を探し出して、副官に指名してきた。驚いたぞ、副官の辞令を受けて訳も分からず上官に会いに行ったら首根っこに飛びつかれた。やっと見つけたと言われてな。

2012-11-07 12:07:18
ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep チョコレートひとかけらの次に与えられたのは椿という名前。もうすぐ嫁に行くのだと彼女は言った。凄いだろう、私を嫁にもらうという奇特な男が現れた。そう言って笑う美しい上官をどういう惚気ですかと部隊皆で祝福した。婚約者も軍人だったが、軍人らしくない静かな男だった。

2012-11-07 12:08:33
ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 二人が一緒にいても大体中将殿の話す声しか聞こえない。けれども笑い声は密やかに二人分響く。両家の親が決めた縁談とは思えぬ程、仲睦まじかった。夜が嫌いだと怯えていた少女が何と成長したのかと、おこがましいが兄や父の様な気分になっていた。俺はその背中を守ろうと思った。

2012-11-07 12:10:33
ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 横に立つのは俺ではないから。いつだったか、言われたことがある。椿、私は幸せになるぞ。お前と約束しよう。私なんぞと約束せずに、神にお誓い下さい中将殿。目に見えぬ神より、あの夜一緒にいてくれたお前の方が当てになるではないか。

2012-11-07 12:11:57
ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep なあ、煙草。話が重い方向へ行くのを察したのだろう。久し振りに蓮見から煙草を催促される。禁煙はどうした。明日から。その婚約者が、軍部の派閥闘争に巻き込まれて殺された。上司と同乗していた車に細工されていてな。完全な巻き添えだ。俺はその日は非番で、官舎で寝てた。

2012-11-07 12:12:51
ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep そこに電話がかかってきて事故のことを知らされた。とにかく来てくれ。中将殿が、と言われて背筋が凍った。あの方も巻き込まれたのかと思ってな。現場に行ってみたら、遺体を静かに抱きしめてる中将殿がいた。小柄なあの方が血まみれになっていてな。

2012-11-07 12:14:12
ゆき。 @Yukilinus

@sasa_sep 俺が呼ばれたのはこの為だと分かったよ。 俺は何しろこの図体だろう。力ずくで引き離してくれ、ということだ。…あんたに、そんなこと出来る訳ない。蓮見の声は重い。そうだ、後ろから話しかけることしか出来なかった。中将殿はただ静かに婚約者の髪を撫でていた。愛おしそうに。

2012-11-07 12:15:18