オバケスレイヤー第1部『中国化する日本病でも恋がしたい!』より『あなたの子供はオンラインで何をしているのか?』

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ファック文芸部 @Neonote

「もういい……」ミナゲドは、仲間たちとオバケの不毛な議論を止めた。聞いているだけで、はらわたがモツ煮込みになりそうだった。もう時間稼ぎをする気も失せた。「殺してやるよ、オチムシャヒコ」

2012-11-11 19:38:21
ファック文芸部 @Neonote

「ウラメシヤ、人間サン」ナイフを抜いたオチムシャヒコが満面の笑みで近づいてくる。ミナゲドはアジャイル美濃囲いで中段の急所を守りながらTCP棒銀を狙う。新世紀カラテの定跡だ。ただし今夜は若干アレンジ。オチムシャヒコのナイフをかわしざま上段蹴りをくりだした。

2012-11-11 19:39:52
ファック文芸部 @Neonote

「足で棒銀?!」オチムシャヒコは驚きながらも、きっちりとその蹴り脚をナイフでいじめる。わずか0.27秒間でたくさん切った。重篤な血管をやられてミナゲドは大量出血。

2012-11-11 19:40:49
ファック文芸部 @Neonote

「勝負あった?」オチムシャヒコは首をかしげた。ミナゲドは、出血によるカラテの冷えこみで、下半身だけサンチンするのがやっとの状態だ。「かかっておいでよ。君のカラテは面白いよ。君に脳を揺らされたら、僕はまだまだ伸びそうな気がするよ」

2012-11-11 19:42:07
ファック文芸部 @Neonote

降りしきる雪の中、ミナゲドは口元を歪めた。笑った。ゆっくりと両腕を上げた。「あれ?」オチムシャヒコが首をかしげた。ミナゲドの手袋が、ダラリと寝そべった。「君、手は?」

2012-11-11 19:43:20
ファック文芸部 @Neonote

「俺の拳は、ポストしてきた」ミナゲドには両手が無かった。カラテに捧げ尽すはずだったその拳は、もう無かった。ポストしてきた。「もちろんオバケポストにな!」キュ、キュ、キュ、キュ。雪を踏んで、何者かが近づいてくる。

2012-11-11 19:44:15
ファック文芸部 @Neonote

「このシュラインは、何本もの邪悪なライン――ナメラスジの交点にある。だからこそ、おまえもネグラにしていたのだろうが……」「まさか」「そう、ここは〈彼〉への情報が通りやすい地点でもある――」

2012-11-11 19:45:28
ファック文芸部 @Neonote

キュ、キュ、キュ、キュ。オチムシャヒコは振り向いた。雪のせいで、特徴的なゲタの音に気づくのが遅れた。シュラインズ・ゲートを、〈奴〉はもうくぐっている。「ひとーつ、人の幸せが憎い」カウントソングが始まった。

2012-11-11 19:46:45
ファック文芸部 @Neonote

「ふたーつ、二言目には「死にたい」」小柄な体軀。素足にゲタ。

2012-11-11 19:47:31
ファック文芸部 @Neonote

「みっつ、みるみるうちにこの世が通りすぎてゆく」片眼を隠す髪の毛。

2012-11-11 19:48:08
ファック文芸部 @Neonote

「まあ、そんな奴らの人生は、そんな奴らの人生として――」黄色と黒の、スズメバチめいたチャヌチャヌコ。「ウラメシヤ、オチムシャヒコ=サン。鬼から生まれたオバケスレイヤーです」オバケスレイヤーであった。

2012-11-11 19:48:50
ファック文芸部 @Neonote

「ウラメシヤ、オバケスレイヤー=サン。オチムシャヒコです」オチムシャヒコも、やむをえず宣戦布告を返した。「おまえがオチムシャヒコ」そう言ってオバケスレイヤーは指差確認。「この手首をポストしたのは?」そう言ってチャヌチャヌコから2つの手首をとりだした。

2012-11-11 19:50:29
ファック文芸部 @Neonote

「俺だ。ミナゲド・バンジだ」ミナゲドの言葉に、オバケスレイヤーはうなずいた。ミナゲドの指をポリポリかじった。「こいつぁうめえや」オバケスレイヤーの体が青白い鬼火で包まれる。

2012-11-11 19:52:12
ファック文芸部 @Neonote

「させるか!」オチムシャヒコは、オバケスレイヤーが手首を完食する前に固有地獄を展開した。フハッ! 境内テリトリにオチムシャヒコの地獄がアップロードされる!

2012-11-11 19:53:23
ファック文芸部 @Neonote

戦場! 戦場! ホラ貝のブルータルな旋律! 全身に鉄砲穴を開けられながら突進するアシガル部隊!「うわーっ、化物だーーっ」首無騎馬ライダーに蹴散らされ、ミナゲドの仲間たちが逃げまどう。

2012-11-11 19:54:21
ファック文芸部 @Neonote

「ミシルシチョウダイ!」カオスの隙間を縫って、オチムシャヒコの竹槍がくりだされた。明治の百姓一揆で猛威をふるった近代兵器が、オバケスレイヤーを襲う!

2012-11-11 19:55:12
ファック文芸部 @Neonote

「おっと」オバケスレイヤーは竹槍をかわした。しかしながら!「ファイヤー!」オチムシャヒコの両手から発する何らかの高温で、竹槍が爆ぜた。フハッ! 刺突と散弾の二段構え! さしものオバケスレイヤーも当たった。

2012-11-11 19:56:25
ファック文芸部 @Neonote

「ははははは、これで終わりだ!」オチムシャヒコは両手と股間で三挺の火縄銃をかまえた。鉄砲三段撃ちを三段同時に叩きこむ構え!「ファイヤー!」

2012-11-11 19:57:58
ファック文芸部 @Neonote

「おっと」オバケスレイヤーは素早く脱いだチャヌチャヌコを振り回した。からめとられた3発の弾丸は、向きを変えてオチムシャヒコの両手両足を撃ちぬいた!「ぎゃーーっ」「1発おまけだ」

2012-11-11 19:58:54
ファック文芸部 @Neonote

「クソーっ」オチムシャヒコは大地に倒れふした。しかし叫んだ。「異国の神々よ! もっと僕に力をよこせ! オチムシャヒコは今こそ買いだ!」

2012-11-11 20:00:21
ファック文芸部 @Neonote

「ムダだよ」オバケスレイヤーは冷たく言いはなった。「おまえは負けたんだ」ゲタでオチムシャヒコの顔面を踏んだ。オチムシャヒコの地獄は、みるみる弱まっていく。「くそう……」

2012-11-11 20:01:49
ファック文芸部 @Neonote

「やったー」「バンザーイ」地獄から解放された歓喜の声がシュラインにこだまする。しかしミナゲドはまだ喜べなかった。「オバケスレイヤー、そこをどいてくれ」「オチムシャヒコを殺すんですか?」「君の助力には感謝する。だが、トドメは俺が刺す」「それはやめてください」

2012-11-11 20:03:10
ファック文芸部 @Neonote

「殺させはしませんよ」とオバケスレイヤーは言った。「まさか……」ミナゲドはうめいた。「本当だったのか。君がオバケを殺さないという噂はっ……」

2012-11-11 20:04:06
ファック文芸部 @Neonote

「殺してどうなるんですか? 死んだ恋人が生きかえりますか?」オバケスレイヤーは、オチムシャヒコの顔を踏みにじりながら言った。「こいつらオバケは、負けることが何よりも辛いんです。このまま負け恥をさらしてもらいましょうよ」

2012-11-11 20:06:04
ファック文芸部 @Neonote

「しかし」ミナゲドは食いさがった。「人を殺したオバケは、殺されなければならない」「それは道理だ。でも、あなたが本当に望んでいるのは、そんな道理の遂行じゃない。むしろ――」オバケスレイヤーは、ミナゲドの耳元に口をよせた。

2012-11-11 20:07:56