「まさか……」ミナゲドは両目を見開いた。「そんなことがっ……」「信じるか信じないかは、あなたの自由です」オバケスレイヤーはチャヌチャヌコを羽織った。「あなたの手首はおいしかった。残りは塩漬けにしておきます」ミナゲドは、目を見開いたままコクリとうなずいた。
2012-11-11 20:09:57「〈その日〉がくるまで、僕があなたの拳になります」オバケスレイヤーはそう言って、低空アッパーでオチムシャヒコを殴りとばした。オチムシャヒコは森の彼方まで飛んでいった。
2012-11-11 20:11:35「ぎょっ、委員長だ。勘が良すぎるよ」「委員長?」「僕がいるクラスの委員長です」「クラス?! もしかしてコロシロウというのは……」「僕の政府名です」「君は政府名を持っているのか!」驚かされることばかりであった。
2012-11-11 20:14:28「あっ、こんなところにいた!」シュラインズ・ゲートの向こうから、1人の少女が現われた。男子用の学生服をまとい、漆黒の学帽まで装着しているが、腰の形は明らかに女子だ。
2012-11-11 20:20:00「こんなところで遊んでたら、オバケに殺されちゃうよ!」「委員長こそ何でここに……」「駅のそばで会ったじゃない!」「で、でしたっけ?」「明らかに無視したよね」「あー……」「し、た、よ、ね!」「ごめんなさい」
2012-11-11 20:20:50「まったくもう。脳の血管がたやすく炸裂するかと思った」「そういえば、脚の血管が厄い人もいるんだけどね」「そんなの知らない! わたしはお医者さんじゃないもん!」ミナゲドはセルフで医者を呼んだ。
2012-11-11 20:22:07「無視したのは悪かったけど、こんなとこまで猛追してこなくても……」「や、怒髪天ゆえにってわけじゃ…ないんだけどね……」「え?」
2012-11-11 20:23:00「今日、クリスマスだし…コロシロウくん、何してるのかなーって……」「フハッ」「か、かんちがヌドロメッシャア!」「落ちついて」「い、違法薬物でもキメてないかと思って見に来ただけなんだからね!」「フハッ」「阿片は国を滅ぼす悪魔の煙なんだからね!」「……アグリーです」「よろしい」
2012-11-11 20:24:13委員長は、オバケスレイヤーのチャヌチャヌコをつまんだ。そのまま引きずるように連行していく。「オバ……コロシロウくん!」ミナゲドは叫んだ。「君は、君自身は、何を望んでいるんだ。聞かせてくれ! いろいろ差し障りがあるなら抽象的な感じでかまわない!」
2012-11-11 20:26:07オバケスレイヤーは、連行されながら振り向いた。そして言った。「僕はね――幸せになりたいんですよ」委員長が足を止めた。すぐにまた、よりいっそう力強く連行していく。少年と少女の姿は、ほどなくして雪の彼方に消えた。
2012-11-11 20:27:21――諸外国のアレにアレされ、瀕死の淵にあった21世紀の日本。その国には、1人の不思議な少年がいた。彼は、オバケをも殺す力を持ちながら、オバケを殺そうとはしなかった。人々は彼を、未知なるものへの恐怖と、揶揄と、わずかな希望を込めて、「オバケスレイヤー」と呼んだ。
2012-11-11 20:29:04