赤司征十郎の独白

赤司征十郎の独白 @aksryouki

だけどそれを知る事は、今の僕にとって最優先事項では無い。僕の掌握する現実世界を失うリスクを負ってまで、求めるべき真実ではないからね。…僕が目の前に見ているお前達は確かに人間で、共にバスケを行う仲間だ。それだけで十分だ。だから言おう、お前が人間であろうと犬であろうと、僕は構わない。

赤司征十郎の独白 @aksryouki

…話が変わるが、そんなに犬として扱われる事が嫌かい。でばお前が次に試合で失点した際には犬の仮装をして町内を巡る罰を課したい所だ。序でだから次回への抱負を書いて背中に貼っておくといい。羞恥と屈辱はお前を成長させる糧になるだろう。金銭の心配はいらない、道具は僕の方で準備しておこう。

赤司征十郎の独白 @aksryouki

僕の言葉が本気かどうか…、お前の判断に任せるよ。脅しというのは実行しないから価値があるんだ。認識するだけで成果を発揮する。実行すれば全てはお終いだ。後には何も残らない。…だけど、僕が其の場凌ぎのブラフを好むと思うかい。僕に全てを失わせる気が無いなら、どうか僕を失望させないでくれ。

赤司征十郎の独白 @aksryouki

さて、人体で一番感じやすく、弱い場所は何処だと思う？……正解は勿論舌だ。何を考えていたかは聞かないでおく。舌は1mm程離れた二つの点に与えられた刺激を正しく理解し、正確に認知する事が出来る。感触、温度、味を感知出来る優秀な部位だ。また、舌は脳の出力器官とも言うのを知っているかい。

赤司征十郎の独白 @aksryouki

敦、お前はいつも飴を舐めたりスナック菓子を食べたりしているね。口を動かし舌を動かす事は脳に良い刺激を与えるんだ。お前は普段自分の意識していない所で頭を動かしているのかもしれないな。だから味と感触を絶えず求めずにはいられない。…解ったよ敦。お前の大切な物は、つまり「舌」なんだろう。

赤司征十郎の独白 @aksryouki

おいで、敦。お前が敗北を喫した時に捧げる物がつまりそれだ。丁度良く此処に鋏がある。長いからお前の口腔にも合うだろう。難しい作業じゃないからお前にも出来るよ。この鋏を喉まで入れて、奥で刃先を開き、其処に舌を挟むだけでいい。後は鋏のハンドルをぱちんと元通りに合わせるだけでいいんだよ。

赤司征十郎の独白 @aksryouki

躊躇うと余計に痛いから一気にやってしまう事をお勧めする。両手を大きく拡げて手を合わせるように、リングの部分を内側へ押しやってしまえばいいんだ。それだけでお前の大切な長い敏感な舌はもうお前の物ではなくなる。…練習でもしてみるかい。ほら手を取って…、…敦？指が震えているね。…怖い…？

赤司征十郎の独白 @aksryouki

そう…、怖いんだな、お前は。ああ、もっと触らせてくれ。お前の脈拍が、迸る潮が僕にも伝わるよ。その感覚を忘れずにいてほしい。お前にとって夜眠り、朝起きて、お菓子を頬張って甘さを感じられるのは当たり前の事だろう？舌を無くすなんて考えてもみないだろうね。その位、勝利とは当然の事なんだ。

赤司征十郎の独白 @aksryouki

僕の抱く感情を、どうか一欠でもお前に解ってほしい。だからお前を脅かすんだ、赦してほしい。…なんて…、実は僕の為でもあるのだけれど。そうだろう、だってお前に此処まで言っておきながら、僕が失態を犯す事なんてあってはならないのだから。ああ怖い、怖いよ敦。僕は絶対に負けられないんだ。

赤司征十郎の独白 @aksryouki

恐怖は人を生かす。野生を呼び起こす。死に掛ける事は強い生を促し、眠る力を目覚めさせる。だけど試しに死んでみるという訳にはいかないだろう？だから今の内にその恐怖を少し前借する必要があるんだ。それが僕を、お前を強くする。どうか僕の話を聞いて戦慄し、強く生きてくれ。僕の愛するお前達よ。

赤司征十郎の独白 @aksryouki

少し話が長引いてしまったからおさらいしよう。僕はお前達の失態や敗北の代償に捧げられる物を探している。僕は「目」、真太郎は「指」、涼太は「顔」、敦は「舌」だ。此処まで決めた。残りは大輝とテツヤだね。僕の方でも良く考えておくから、お前達から何か提案があれば僕にも教えてくれると嬉しい。

赤司征十郎の独白 @aksryouki

…今日は何だか頭が重いな。少し疲れているのかもしれない。最近は気温も安定しないから、温度差に身体をやられてしまったか。…風邪を治す為の民間療法は色々あるけど、あれって実際効くんだろうか。自分が試す気は無いから誰かが風邪を引いたら色々と研究してみるか。

赤司征十郎の独白 @aksryouki

勿論お前は風邪を引こうが骨を折ろうが学校を休んだりしないだろう？僕が求める時お前はいつでも此処にいる筈だ。血反吐を吐いても来い。僕が癒してあげるから。…さて、そろそろ休むか。こういう時に眠ると夢見が余りよくないのだけれど。大抵妙な夢を見る…。…でも眠らない訳にもいかないからね…。

赤司征十郎の独白 @aksryouki

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赤司征十郎の独白 @aksryouki

『……………………　　　　。　　　　………って…　　　　、　　　　…………が　　　　……、　　　　ると　　　　か　？　　　　　オレが　　　　……　だと……　　　　　黒　　　　　　　　と　　　　…………　　　　って　　　　　だから、　　　峰、お前が……　　　　。』

赤司征十郎の独白 @aksryouki

『　　　……………………　　　　　　　　　　　　　　　　　。』

赤司征十郎の独白 @aksryouki

おはよう。……夢見は、頗る悪い。体調とは関係無くいつもの事だ。見るのは昔の夢だったり、繰り返し繰り返し僕を呼ぶ誰かの夢だったりする。伸びる手とその声に、僕は見覚えがある気がするのだけれど、如何しても思い出せないし…、…思い出さない方がいい気も、する。…所詮、ただの夢だからね。

赤司征十郎の独白 @aksryouki

昨晩は寝付きが良くなかった。偶にああして妙な夢を見るのだけれど、夢だと解るまでが厄介だな。夢の中でもこれは夢だとはっきり認識する事さえ出来れば、悪夢に悩まされる事も無いのに。……そう言えば、『明晰夢』という物を知っているかい。これは正しく、夢の中で夢だと気付ける夢の事を指す。

赤司征十郎の独白 @aksryouki

人は繰返し夢を自覚する為の訓練を行う事で夢の中での自分の行動を理性によりコントロールし、自由な夢を体験する事が出来る。この体験を行う上で大事な事は「夢を夢として自覚する」事だ。その為のトレーニングとして最も知られている方法は、「見た夢の内容を日記のように毎日メモに取る事」だね。

赤司征十郎の独白 @aksryouki

或いは「夢から覚めそうになった時周囲の物に触れる」「寝る前に夢と現実を区別する為の目印を作る」…なんていう方法がある。これを極めれば不当な悪夢に苦しめられる事も、好きな夢を思いのまま見る事も可能になるかもしれない。…こら、大輝。にやにやしない。一体どんな夢を見る気だい。

赤司征十郎の独白 @aksryouki

……だけど、ね。そもそも夢とは、脳の一部を休めつつ、起きている時に集めた情報を寝ている最中に整理する為に、ほんの少しだけの脳を寝ながらにして稼働させて起こす現象だ。明晰夢を見ている間は、脳の眠りと記憶の整理を阻害する事になる。それがどんな風に悪影響を及ぼすか…良く考えてみないと。

赤司征十郎の独白 @aksryouki

脳が疲れる、という事も勿論あるだろう。だけど一番怖いのは、夢と現実の境が解らなくなってしまう事だ。明晰夢と現実で記憶の量が二倍になって、しかもそれを整理する筈の時間も明晰夢で邪魔されてしまっている。記憶が果たして夢の物なのか、現実なのか。解らなくなってしまうかもしれない。