この週末は『高熱隧道』読んでたんだけど,むちゃくちゃな時代だわね。いつか行きたい黒部下ノ廊下の予習だったり,(正確性に難があるとされるけどほぼ唯一の)泡雪崩の記述を読むためだったんだけど,そんなことは抜きにしても面白かった。(続
2012-11-19 02:41:23下ノ廊下っていうのはどんなところかはyoutubeでもみるとすぐにわかると思うけど,例えばこれ https://t.co/r6ccLJM1 今でも崩壊し続けていてたまに人死んだりしてます。こんなところに水力発電所を作った話。黒部川第三発電所。
2012-11-19 02:50:35クロヨンの話はプロジェクトXでお馴染みですが,この話は戦前の1930年代。時代背景としては,戦争に突き進んでく中で電力たりねぇぞってところなんでしょう。黒部みたいな地形は工事が難しいけど,発電所としては効率がいい。
2012-11-19 02:54:23で,さっきのyoutubeみたいな道を50キロとか100キロとか背負って建築資材をボッカする訳ですが,たまに落っこちて死ぬ。運が良いと死体は引き上げてもらえるけど沢の中に入ってしまうとそのまま行方不明になったり。
2012-11-19 02:56:03ボッカの単価(重さあたりで決まるらしい)はどんどん釣り上がっていくけど,人夫も死にたくないので荷物に穴あけて,現場に到着する頃にはセメントが半分くらいしかなかったりw でも,どんだけ金かけていいから発電所つくりましょっていう感じ。
2012-11-19 02:58:42で,肝心のトンネルを掘り出すと温度がどんどん上がっていく。法律では40度とかでダイナマイトは使えなくなるけど,そんなことも言ってられないでしょ,ってなわけで掘っていく。
2012-11-19 03:00:41ついに自然発火して作業していた人夫が8人死ぬんだけど,その時は100度くらいになっていて水かけるとジュウジュウ音を立てるような状態。富山県警がでてきて,工事を中止させようとするけど,中央から圧力かかって「対策を立てて工事を続行」みたいなところに落ち着く。
2012-11-19 03:04:38結局,エボナイト管にダイナマイトをいれて温度が上がるまでの時間をかせぐ形で工事継続。そろそろ温度下がるんじゃない?下がるんじゃない?っていいながら掘っていって最後は165度にまでなる。
2012-11-19 03:07:17途中から黒部川からポンプで水を組んで作業する人夫にホースで水をかけながら作業してるんだけど,水が腰まで溜まってその温度が45度とか。20分で交代するけどお湯につかってる部分は水ぶくれになっていたり。熱射病で気を失うのは日常茶飯事でそのまま死んでしまうことも。
2012-11-19 03:10:35全工区で300人とか死んでるんだけど,そのうち84人が一度の雪崩で死んでる。深夜に宿舎の方から爆発音がしたのでよくよく見てみると宿舎がなくなっている。
2012-11-19 03:14:21ものすごい吹雪で救助活動はしばらくできず,宿舎にいた人たちはほぼ絶望なんだけど,雪を掘っていく2週間くらいしてやっと宿舎が会った場所までほったけど1階部分しか残っていなくて,そこは飯場などで居住スペースはないのでだれもいない。
2012-11-19 03:17:09宿舎の裏側斜面に埋まってると思って掘るけど1ヶ月掘っても,2ヶ月掘っても遺体どころか宿舎の欠片もでてこない。なんかおかしくね?と雪崩について調べだしたら出てきたのが「泡雪崩」
2012-11-19 03:20:08泡雪崩は普通の雪崩と違って,障害物に当たると爆風を生むらしい。つまり宿舎は雪に押しつぶされたのではなく泡雪崩の爆風にふっとばされたのでは?と思って遠くのピークに生えてる木を見るとポッキリ折れてる。あの木秋には折れてなかったよね,と見に行くと真新しい折れ口。
2012-11-19 03:24:02じゃあ爆風はこのあたり通ったんだねと,そのピークから対岸を見るとなにやら人工物が。結局宿舎は尾根を越える形で500m以上ふっとばされていましたとさ。
2012-11-19 03:25:26(今の雪崩研究者は雪崩が超音速の爆風を生むっていうのはありえないと考えているらしく,この記述は間違いらしいんだよね。ともかく500m移動したのはたぶんホントで,すごく気になる)
2012-11-19 03:27:33富山県警は今度こそ工事は中止にすべきと主張して中央と対立するわけだけど,電力たりないし,さすがの日本電力も結構金使っちゃったので発電所できないとまずいぞみたいなところ,泡雪崩の犠牲者遺族に天皇陛下から見舞金が下賜され,さすがに富山県警もこのあとは何も言わなくなる。
2012-11-19 03:31:44しかし次の年も別の宿舎が200年振りの雪崩にやられて,この時の雪崩は火事になって遺体の判別ができなくなってしまった。とりあえず体格から推測して名札つけて遺族に引きあわせたら,遺族もよく分からないけど引き取らないと行方不明扱いで保険金がおりないので引き取っていった。
2012-11-19 03:37:03春になって雪が溶けてきたら,既に火葬されて墓に入ってるはずの人間の死体がでてきてしまう。遺体の損傷が激しかったので適当に組み合わせてるうちに一体多く作ってしまったのだろうけど,今更警察に言っても,じゃあ墓に入ってるのは誰ってことになって面倒くさいので山に埋葬。
2012-11-19 03:40:00ちなみに,泡雪崩があった場所は今はトンネルのおかげで,冬季に素人でもたどり着け電気も使えるので雪崩研究に使われてるみたいですね。10日間くらいテレビもネットもないところで一人で過ごすらしく,泡雪崩の慰霊碑が怖いとか怖くないとか。
2012-11-19 03:49:51こういう話ってマッチョイズムで語られがちだけど,吉村昭の描写は「現場で働いてる人夫は基本低所得で一生に一度の金を貯めるチャンスに怯えながら働いてる」という形で,たぶんこれが真実だろうな。今の原発と重なる。
2012-11-19 03:56:44読後にプロジェクトXの黒四ダム編を見た感想を
『高熱隧道』を読んだ後でプロジェクトXの黒四ダムをもう一度みてみたわけですが,あまりの切り口の違いに面白かったです。プロジェクトXは難工事を成し遂げた成果を強調するあまり150人も死んでることはほとんどおまけ。
2012-11-20 23:34:39