テニプリでDQパロ~導かれし者たち1~

運命に導かれし勇者リョーマと仲間たちの愛と友情の冒険記~旅立ちからヒョウテール王国まで。(DQ4第五章のパロディ)
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煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

とある国の山奥に、小さな村がありました。そんな場所に村があることすらほとんどの国民が知らない、名前すらない山奥の小さな村でした。そんな村に、一人の少年が住んでいました。彼の名前はリョーマ。艶のある黒髪に真っ直ぐ強い光をたたえた瞳を持つ少年でした。 #テニプリDQパロ

2012-07-20 12:30:27
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

リョーマは生まれた時からこの村で暮らしていました。他の場所のことは知りません。父親と母親と幼馴染みとほんの僅かな心優しい村人たちだけが彼の世界でした。リョーマはそんな小さいけれど暖かい場所で、畑を耕し家畜を育て、剣の稽古や魔法の勉強をしながら過ごしていました。 #テニプリDQパロ

2012-07-20 12:35:18
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

母親が小さな包みを手渡します。「リョーマ、このお弁当をお父さんに渡してきておくれ。川で釣りをしているはずだから」「わかった」「太陽がてっぺんに来たら私たちも昼御飯にしようね、良い天気だからそれまで散歩でもしてきなさいな」「はーい。いってきまーす」 #テニプリDQパロ

2012-07-20 12:39:44
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

リョーマは家を出て、空を眺めました。青い空、僅かな真っ白い雲、さんさんと照りつける太陽。今日は本当に良い天気で、村人たちもにこやかに農作業や日向ぼっこを楽しんでいました。リョーマはひとまず、父親を探して川に向かいます。 #テニプリDQパロ

2012-07-20 12:41:42
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

「親父」「おお、リョーマ。弁当を持ってきてくれたのか」川辺で釣糸を垂らす父親に声をかけると、父親は笑顔で弁当を受けとりました。ちらりと見たバケツには大きくて活きのいい魚が二匹、ぐるぐると泳いでいました。「今日は調子がいいから、晩飯には期待していろよ」 #テニプリDQパロ

2012-07-20 12:45:23
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

「焼き魚…」「そうだな、塩焼きがいいな、母さんに頼んでおいてくれ」「了解、頑張って」リョーマは夕食のメニューに心踊らせながら川を離れました。まだまだ昼食まで時間がありそうです。リョーマは村の中を散歩することにしました。 #テニプリDQパロ

2012-07-20 12:49:21
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

リョーマに毎日剣の稽古をしてくれる青年、魔法を教えてくれるけれど途中でとんちんかんになってしまうお爺さん、いつも賑やかで明るいおばさん、村のみんなに挨拶しながら小さな村を回ります。村の真ん中にある花畑を通った時でした。「やぁリョーマ」花畑から声が聞こえました。 #テニプリDQパロ

2012-07-20 13:10:59
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

花畑の真ん中に寝転んでいたのは、リョーマの幼馴染みであるシュースケでした。「散歩かい?」「まあね」「今日は良い天気だからね。僕ものんびりしてたんだ」シュースケが起き上がって頭に付いた草を払います。柔らかい茶色の髪が揺れて、エルフ特有の長い耳が見えました。 #テニプリDQパロ

2012-07-20 13:19:02
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

「リョーマ、僕はこの村が好きだよ。すごいものも特別なものも何もないけれど、暖かい人たちがいて穏やかな時間があって、…リョーマ、君がいるこの村が」シュースケが空を見上げます。その目線は空の上の雲を、それよりもっともっと上を見つめているようでした。 #テニプリDQパロ

2012-07-20 13:23:43
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

「これからもずっとリョーマと暮らしていけたらいいな…」「…どうしたんだよ、急に」「なんでもない。ちょっとセンチメンタルな気分になってただけ」「…なにそれ」「僕がセンチメンタルに浸っちゃダメだって言うのかい?」「そうじゃないけど…」 #テニプリDQパロ

2012-07-20 13:28:47
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

リョーマは少しシュースケから視線を外して、小さく呟きました。「当たり前だろ」「え?」「…これからもシュースケとこの村で暮らすのは、当たり前だってこと。何も気にすることないじゃん」「リョーマ…」シュースケは嬉しそうに微笑みました。「そうだね、ありがとう」 #テニプリDQパロ

2012-07-20 13:31:03
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

シュースケと別れたリョーマは村の入口までやって来ました。小さな村なのであっという間です。そろそろ引き返して家に戻ろうとした時、ふと入口近くにある家に目を向けました。そこは一応『宿屋』でしたが、リョーマが生まれてから一度も客が来たことはありませんでした。 #テニプリDQパロ

2012-07-20 13:42:33
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

その宿屋に、店主以外の人影が見えたのです。リョーマは気になって、宿屋を覗きました。「こんちわ」「おお、リョーマ!」店主は満面の笑みで迎えてくれます。「ちょうどいい、お客様にお茶を出してくれないか、私は水を汲んでくるから」「お客?」やっぱり客がいるようです。 #テニプリDQパロ

2012-07-20 13:45:58
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

店主がいつか客が来たときの為に、と毎日ぴかぴかに磨いていた部屋の椅子に誰かが座っていました。ここからは後ろ姿しか見えませんが、長身で癖のある黒髪と黒衣を纏った青年のようでした。「それじゃ、頼んだよ!」店主は嬉しそうに宿屋を飛び出します。 #テニプリDQパロ

2012-07-20 13:50:04
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

リョーマは村でとれた良い香りのするハーブティを手に、青年のもとに向かいます。香りに気づいて青年が振り返りました。吸い込まれそうな深い深い漆黒の瞳でした。「あの…お茶…」「ああ…、ありがとう」青年はリョーマの言葉ににっこりと微笑みました。 #テニプリDQパロ

2012-07-20 13:55:11
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

「旅の人、ですか?」「そうたい。俺ん名前はチトセ。吟遊詩人をしとっけど…森の中で道に迷ってしもうたと。こげんとこに村があると知らんかったけ、助かったばい」不思議な訛りの青年、チトセは穏やかにそう告げながらお茶を飲みました。 #テニプリDQパロ

2012-07-20 14:19:40
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

リョーマはチトセから旅の話を聞かせてもらうことにしました。山を下りた先にあるこの国のお城のこと。大陸を隔てた隣の大国のこと。大きな塩辛い水溜まりである海のこと。チトセが話す内容はどれもリョーマの知らないことで、とても楽しい時間でした。 #テニプリDQパロ

2012-07-20 15:17:15
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

「やあお待たせ」やがて店主が上機嫌で帰ってきました。手には水桶と、たくさんの野菜も抱えています。「早速食事の準備を…」「…申し訳なかけど、俺はそろそろ失礼するばい」チトセは苦笑しながら立ち上がりました。店主が見るからに残念そうな表情を浮かべます。 #テニプリDQパロ

2012-07-20 15:19:45
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

「いっちまうのかい」「大事な用事があると、すまんね」「そうか…仕方ないなぁ」がっくりと肩を落としながらいらなくなった野菜をリョーマに押し付け、店主は言いました。野菜を両腕に抱えたリョーマが見上げます。「チトセさん」「ん?」「外の話…ありがとう、楽しかったッス」 #テニプリDQパロ

2012-07-20 15:41:48
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

「こちらこそ。えっと…」「あ、俺、リョーマッス」「リョーマ。会えて良かったと」「あの、また、来てくださいね!」リョーマが言うとチトセは笑顔で頷きました。手を振って村を出るチトセを見送り、すっかり時間を忘れていたことに気づいて慌てて家に向かいます。 #テニプリDQパロ

2012-07-20 15:44:19
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

村を出て森の中に入ると、チトセが足を止めました。周りには鬱蒼とした木々。その間に僅かな気配を感じたのです。「如何なさいますか」気配がチトセに尋ねます。「…決まっとると。…全軍、村へ向かえ」「はっ」チトセの言葉に気配がこの場を去っていきます。 #テニプリDQパロ

2012-07-20 15:46:39
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

「すまんばいね、リョーマ。…俺たちに『また』はなかとや」村の方向を見上げるチトセの瞳は血のように紅く輝いていました。 #テニプリDQパロ

2012-07-20 15:47:57
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

太陽がてっぺんより傾いてから家にたどり着いたリョーマは、待ちくたびれた様子の母親に事情を説明して謝りました。村に迷い込んだ旅人の話に少し不安そうな顔をした母親でしたが、楽しそうなリョーマを見て「昼食を食べながら話しましょうね」と笑顔を見せました。 #テニプリDQパロ

2012-07-20 17:22:45
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

少し遅めの昼食を終えたリョーマは愛用の剣を準備していました。日課の稽古のための品で、練習用なので切れ味はほとんどありませんでしたが、リョーマは剣の稽古が大好きだったので大切にしていました。「じゃあ母さん、行ってきます」家を出ようとしたその時でした。 #テニプリDQパロ

2012-07-20 17:24:06
煌@DQ11ネタバレ注意 @kou_DQ

ドォ…ンという低い爆発音と震動。何かの唸り声、そして誰かの悲鳴が響き渡りました。「!?今のは」リョーマはとっさに母親に駆け寄ります。「母さん、大丈夫?」「ええ、私は」「リョーマ!」大声をあげて家に飛び込んできたのはいつも剣の稽古をつけてくれる青年でした。 #テニプリDQパロ

2012-07-20 19:48:43
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