テニプリでDQパロ～導かれし者たち１～

煌＠ＤＱ11ネタバレ注意 @kou_DQ

「無事か！リョーマ！」「お前さん、何があったんだい！？」「…魔物が、攻めてきた」「…！！」母親は青年の言葉に驚愕して膝から崩れ落ちました。抱き起こそうとするリョーマの腕を青年が掴みます。「リョーマ、俺と来い！」「でも、母さんがっ」「いいのよ、リョーマ」 #テニプリＤＱパロ

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リョーマの反論を母親が遮りました。「リョーマ、あなたは行きなさい」「でも」「お願いだから、あなたは逃げてちょうだい！大丈夫、私も後から行くから、ね？」「…っ」真剣な表情の母親にそれ以上何も言えず、リョーマは頷きました。青年と共に家を飛び出します。 #テニプリＤＱパロ

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村の至るところに火の手があがっていました。叫び声と獣の鳴き声のようなものが混ざりあい、何かが壊れる音も響いています。「村がっ…」「余所見をせずに走れっ！」震えた声をあげるリョーマを短く叱咤しながら青年は村の奥の食料倉庫を目指します。 #テニプリＤＱパロ

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「リョーマ！」「！親父！」川を越えようとした時、父親が駆け寄ってきました。「親父、母さんがまだ家に…」「わかっている。母さんは私に任せなさい。それよりお前に大切な話がある。よく聞きなさい」父親の言葉に、青年も手を引くのを止めて立ち止まりました。 #テニプリＤＱパロ

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「リョーマ…、お前は私と母さんの本当の子供じゃあない」「え…」突然の告白に、リョーマは声を無くしました。「突然のことで驚くのも無理はない。だが、よく聞きなさい。お前は天空の神に選ばれた勇者だ。古より伝わる闇の帝王を倒す力を持つ、特別な力を授かった子なんだ」 #テニプリＤＱパロ

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「まだ勇者として覚醒していないお前を守るために、この村が、私たちがいたのだ。すべては勇者であるお前のために」「そん、な…」唐突に明かされていく真実に、リョーマはただただ立ち尽くします。「とにかく、お前の力はまだ弱い。今は安全な場所まで逃げなさい」 #テニプリＤＱパロ

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「さあ、もう行こう」青年が再びリョーマの手を引きます。「リョーマ、忘れるな。たとえ血が繋がっていなくても私も母さんもお前を愛していた。愛する我が子を守れるなら、こんなに幸せなことはない。生きて、強くなりなさい」リョーマは無言で小さく頷き走り出しました。 #テニプリＤＱパロ

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村の食料倉庫の奥には隠し扉がありました。青年はその中にリョーマを連れていき、自分は扉に手をかけます。「ここなら魔物にも見つからないだろう。リョーマ、騒ぎが止むまで決してここから出てくるんじゃないぞ。…お前は、俺たちの希望だ」青年はそう言い残して去っていきます。 #テニプリＤＱパロ

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リョーマは言われた通り、隠し部屋の中に隠れていました。地下にいても唸り声や悲鳴、戦いの音が耳に届きます。恐怖で震える体を必死で抱き締めていました。突然、扉を叩く音が響き、リョーマは肩を震わせます。「リョーマ…？」聞き覚えのある声でした。 #テニプリＤＱパロ

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「シュースケ！」リョーマの声が聞こえたのか、シュースケが扉を開きます。リョーマは慌てて駆け寄りました。「シュースケ、みんなは…！」リョーマの問いに、シュースケは無言でリョーマを見つめます。いつもにこにこ笑っているシュースケからは想像もつかない真剣な表情でした。 #テニプリＤＱパロ

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「シュー、スケ…？」「リョーマ…」シュースケがリョーマを抱き締めました。「リョーマ、僕は君が大好きだったよ。本当の弟のように思ってた。ずっと一緒にいられると…一緒にいたいと、願っていたんだ」シュースケの頬を涙が伝いました。 #テニプリＤＱパロ

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涙の雫はみるみる紅く光る宝石と化して、地面に音を立てて落ちます。それはルビーの涙。シュースケたちエルフの流す涙は美しいルビーに変わる。リョーマはシュースケ本人からその話を聞いて知っていました。だけど実物を見たのはこれがはじめてでした。 #テニプリＤＱパロ

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だってシュースケはいつも笑っていたから。一緒に遊んだときも、イタズラをして困らせたときも、リョーマを叱るときでさえ、その微笑みを絶やしたことはなかったのです。リョーマはこぼれ落ちる宝石を受け止めようと手を伸ばしました。 #テニプリＤＱパロ

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しかし宝石はリョーマの手に触れた瞬間、粉々に砕け散ってしまいました。ルビーの涙は人間には触れることすらできない、まさに幻の宝石なのです。「シュースケ、」泣かないでと、その思いを込めてリョーマもシュースケを抱き返しました。シュースケがようやく微笑みます。 #テニプリＤＱパロ

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「大丈夫。リョーマ、君を死なせたりはするもんか。この命に代えても」シュースケがそう言ってリョーマから少し離れ、リョーマをしっかりと見つめながら口を開きます。「…モシャス」シュースケが唱えたのは、いつかリョーマにも見せてくれた変化の呪文でした。 #テニプリＤＱパロ

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「…シュースケ…？」リョーマの目の前に立っていたのは、リョーマ自身でした。シュースケはモシャスでリョーマに変化したのです。もう一度、シュースケがリョーマを抱き締めます。「…さようなら、リョーマ。どうか立派な勇者になって、世界を救って」「！っま…待って…！」 #テニプリＤＱパロ

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リョーマが手を伸ばしますが、シュースケはもう振り返ることなくリョーマの姿のまま隠し部屋を飛び出しました。リョーマも扉の前に駆け寄りますが、父親たちとの約束を破るわけには行かず、外に出ることはできません。「シュースケ！行かないでシュースケ！」 #テニプリＤＱパロ

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リョーマの声に答えるものはすでにいませんでした。地上の音だけがリョーマの耳に届きます。「居たぞ！あれが勇者だ！」「追え！必ず殺せ！！」「逃がすな！」魔物の叫び声と大勢の足音。リョーマはその場に崩れ落ちました。「ちがう…それは、俺じゃ、ない…」 #テニプリＤＱパロ

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そんな声が地上に届くはずはなく、ただ「殺せ！」という絶叫だけが響き渡ります。「違う…違う！やめろ、殺さないで！シュースケ、シュースケ…！やめろぉおお！！」ぷつりと回りの音が止みました。一瞬の静寂のあと、感極まった声が聞こえてきます。 #テニプリＤＱパロ

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「…セ様！勇者を仕留めました！！」「…ご苦労。それじゃあ、引き上げるとすっね」そんな会話が聞こえたきり、辺りは再び静寂に包まれました。リョーマは地面にへたりこんだまま、ただただ声を押さえることもなく泣き続けました。 #テニプリＤＱパロ

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どれくらい時間が経ったのか。リョーマはゆっくりと隠し部屋から外へと出ていきます。階段を上がり、地上に出たとき…そこにはもう、何もありませんでした。 #テニプリＤＱパロ

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生まれ育った家も、みんなの家も宿屋も無惨に壊され、煙をあげています。花畑だった場所には草一本残ってはいません。そして…村には誰の姿もありませんでした。「親父…母さん…みんな…」誰からの返事もありません。地面に残った赤黒い染みが無言で何かを訴えていました。 #テニプリＤＱパロ

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「シュースケ…シュースケぇ！！」リョーマは辺りを必死で探しました。だけどシュースケの姿は見当たりません。ただ、シュースケがいつも寝転がっていた花畑があった場所に、何かが転がっていました。「…ルビーの…涙…」小さな赤いルビーがひとつ、そこには残っていました。 #テニプリＤＱパロ

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「シュー…」触れようとした手をとっさに止めます。ルビーの涙は人間が触れると壊れてしまう。シュースケのたったひとつの形見なのに。「……」リョーマは溢れ出しそうな涙をグッと堪えて立ち上がりました。 #テニプリＤＱパロ

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「シュースケ…親父、母さん、みんな…。約束する。俺は勇者として、世界を救ってみせる。みんなみたいな犠牲者をこれ以上出さないために。みんなが…命を懸けて守ってくれた、その思いに報いるためにも…！」リョーマはもう一度ルビーの涙を見下ろしました。 #テニプリＤＱパロ