Story Sellerのこと ― 新潮社『Story Seller』編集秘話

「面白いお話、売ります。」 そんなキャッチコピーとともに、2008年4月に刊行された新潮社の書き下ろし小説アンソロジー『Story Seller』。 独断と偏愛によるラインナップと、「読み応えは長篇並、読みやすさは短篇並」という作品内容、そして洗練されたデザインによって人気を博し、2009年4月にはVol.2、2010年4月にはVol.3が刊行されています。 続きを読む
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@editor_of_SS

【Story Sellerのこと 1】今では「SS」の大きな特徴の一つの(と自分では思っている)挿絵代わりの写真だけれども、最初から写真でいこうと決めていたわけではなかった。最初は、「作中に入何か(イラストなり何なりを)入れれようかどうしようか」という点で迷っていた。

2010-04-14 00:51:46
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと 2】最大の理由は予算。イラストを頼めばお金がかかる。なにぶん始めての試みだし、やってみるまでどのくらいお金がかかるかわからないので、最初はとにかく限界までお金をかけないでやってみようと思ったのだった。

2010-04-14 00:53:29
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと 3】本文だけ、というのも考えたが、それではあまりに味気ないし、単行本のアンソロジーと代わり映えしない。「雑誌的」な味わいを出したいとも思ったし、挿絵の代わりになる、何か新しい試みができないか、と色々なことを考えた。

2010-04-14 00:55:28
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと 4】が、そんな名案が、すぐに浮かぶはずもない。段々煮詰まってきた頃に、突然「写真を使ったらいいんじゃないか」と閃いた。ヨドバシなんかに行くと、使用料フリーの写真を集めたROMなんかが沢山売られている。ああいうのを片っ端から買ってみてはどうか、と。

2010-04-14 00:58:15
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと 5】もちろん、原稿の内容に合った写真があるとは限らないが、山のようにROMを買ったら、中には「それっぽい」写真が見つかるんじゃないかと思ったのである。

2010-04-14 01:00:14
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと 6】そんな思い付きを、デザインワークをお願いしていたKさんに話したら、Kさんはさくっと一言。「そんなの、わざわざROM買ったりしないで、Hさんに頼めばいいじゃん」と言った。Hさんというのは、写真部のカメラマンである。

2010-04-14 01:01:53
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと 7】そうか、その手があったか! と僕は写真部に走り、Hさんに企画の概要を話した。もちろん、ただ働きである。もし「面白そうだからやってみてもいい」と思ったら協力してもらえないだろうかと話すと、Hさんはあっさりと頷いてくれた。みんないい人だ!

2010-04-14 01:06:21
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと 8】Hさんは、どんな写真を撮ればいいのかと訊いてきた。当然の疑問だ。けれども、その時にはまだ原稿はほとんど入っていなかったから、具体的な話はできない。なので僕は、「街角の風景などを、Hさんのセンスで自由に撮って欲しい」と頼んだ。

2010-04-14 01:08:05
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと 9】一人のカメラマンの個性で統一することで、ビジュアル的なまとまりを出せるのではないかと思った。また、そのときには、写真はアイキャッチ的に使おうとも決めていた。

2010-04-14 01:10:37
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと10】テレビで、CMの前後に入る番組タイトルや、ちょっとした一コマみたいなものを、小説の中でできないかと思ったのだ。端に小さく「Story Seller」というロゴを入れたら、オシャレなんじゃないかと、僕は勝手に一人で結構盛り上がっていた。

2010-04-14 01:14:06
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと11】アイキャッチにすると決めれば、挿入箇所も自ずと決まってくる。「物語の切れ目」だ。お話が一区切りついたところで、全面写真を入れて一息ついてもらう。こちらの気持ちとしては、トイレに行ったり、お茶をいれたりするならここですよ、という感じだ。

2010-04-14 01:15:50
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと12】とはいえ、原稿の途中を勝手にぶった切って写真を入れるわけだから、「それはちょっと」と言われることも覚悟していた。けれども、執筆者のみなさんは、誰一人そんなことは言わず、むしろ「面白そうだ」と言ってくれた。どんな写真は入るか楽しみだ、と。

2010-04-14 01:17:09
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと13】ありがたかった。撮り下ろしてくれた写真を眺めながら、どの写真をどの作品のどこに入れるのか、それを考えるのは本当に楽しかった。「SS」の仕事で一番楽しかったのは、実はこの写真選びである。

2010-04-14 01:19:27
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと14】自由に撮ってもらった写真なので、もちろん内容に即したものがあるわけではない。なので、「何となく意味がありそうに見えなくもない」という基準で写真を選んだ。一見関係ない図柄でも、自分の中では明確な意味づけがある。

2010-04-14 01:20:51
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと15】「SS」が出た後、写真がとても良かったと言ってくれた人が何人もいて、本当に嬉しかったしHさんに感謝した。「SS」が「SS」たり得た所以の一つは、この写真の存在感にあったと思う。印象的だけれども、出しゃばらないという絶妙のバランスの写真だった。

2010-04-14 01:23:25
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと16】イラストでなく写真、しかも原稿の途中に大胆に挟み込むという方法は、おそらく前例がなかったから、どんな受け止められ方をするか、楽しみ半分、不安半分だったけれども、批判的な意見はほとんど聞こえてこなかった。少なくとも僕の耳には。

2010-04-14 01:32:27
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと17】思い付きとはいえなかなか面白いこと考えたな、と自画自賛していたところに、思いもよらない苦情(?)が飛び込んできた。そんな誤解を生むなんて、僕はまったく予想していなかったのだ。 (つづく)

2010-04-14 01:35:50
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと18】写真の入り方によっては、前のページにかなりの余白が出来てしまう場合があるのだけれども、そこで「話が終わった」と勘違いしてしまう人が出て来たのである。

2010-04-16 12:00:06
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと19】もちろん、ページを一枚めくってくれれば、話が続いているのは分かるのだが、一端「終わった」と思い込んでしないと、そこで手を止めてしまうのだ。そういう思い込みで勘違いが起こるのは、分かる気がした。

2010-04-16 12:34:07
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと20】雑誌版「SS2」が出たときの話だ。なので、「SS2」を文庫にするときには、何か対策を講じなければ、とも思った。まだ続きがあるということを、さり気なく示すことが必要なのだ。そう、あくまでさり気なく。興醒めになるような、目立つ誘導は避けたかった。

2010-04-16 12:38:33
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと21】何かしら、誘導の印を入れるとは決めたものの、何をどう書くかは決めていなかった。まさか、余白に「○×ページへ急げ!」みたいなことを書くわけにもいかないし、全体のトーンになじむ、エレガントな表現がないかと考えた。

2010-04-16 23:13:47
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと22】なんとなく「誌名の流れからいって英語で入れるだろう」みたいなノリで最初考えたのは、「Please turn the page」みたいな文言である。言われなくても分かっている。ベタなのだ……。

2010-04-16 23:16:03
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと23】それに、ページを捲って下さい、では余りに即物的過ぎる。もう少し「物語」に寄せた表現にしたかった。が、もちろん自分では思い付けない。こういうときは、素直に人に頼るに限る。社内の、英語に堪能(しかもネイティブ系)で有名な人に相談してみた。

2010-04-20 00:16:27
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと24】それで教わったのが、「There's more to read」。まだ続きがあるよ、というくらいの意味だろうか。それを、デザイナーのKさんが図案化してくれて、文庫の「2」からそれが入っている。もちろん、出たばかりの「3」にも入れました。

2010-04-20 00:31:55
@editor_of_SS

【Story Sellerのこと25】というわけで、「写真編」終わり。ほとんどの場合、写真は楽しく選べたけれど、時代や場所が明らかに限定されるものは苦労した。あと、「3」はページがギチギチになってしまったので、写真がそんなに入れられなくて残念だった。Hさんごめんなさい。

2010-04-20 00:36:17