自作小説第四章:K.R.2

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川口 慧太 @eulen_zoids

―K.R.2《音がする。 銃撃の音。 眼前で発生している銃弾のstorm=味方部隊と敵の撃ちあい。1階/2階をつなぐ階段の上―deskによるバリケードの後ろ。そこから私は見る。 およそ二十分前。二階にいた私は、下から届いた地響きを聞いた。二階の一般職員退避を手伝っていたのだ。》

2012-12-05 23:14:55
川口 慧太 @eulen_zoids

《そこに轟音。咄嗟の推測:訓練で近く/ロビーから遠く聞いた爆発音と類似→さらなる襲撃=高確率の正答と勝手に判断。 Urgentな空気を感じながら走った。1階に向かわせかけていた一般職員たちを押しとどめて。そして階段までさしかかり。 「桐原か」 櫛灘教官に出くわした。》#K.R.2

2012-12-05 23:20:10
川口 慧太 @eulen_zoids

《いつもの冷徹さが私を見下ろした。その腕にはどこかの部屋から持ち出したのだろうdesk。 「手伝え。敵襲だ。防衛線をはる」 端的な指示。着火されたように生じる反抗心。焚き付ける?それはabsurd。分かっている。ああでも。 「手伝わないと言ったらどうなりますか?」》#K.R.2

2012-12-05 23:26:52
川口 慧太 @eulen_zoids

《「お前は死に近づく」 「それは私の願う状況にaccordです」 「だが俺の願望ではない。他の職員の願望でもない」 お互いに目を見る。対峙。真正面から。 「お前の勝手な願いに無関係な人間を巻き込むのは、アコードなのか?」 基本は淡々/そこだけ強調された異国語。》#K.R.2

2012-12-05 23:33:02
川口 慧太 @eulen_zoids

《ですよね。 予測された返答だった。しぼむ感情の熱。無言で背を向け、机を取りに近くの部屋に走った。 並べている間に上の階にいた味方が集まり、十分な人員と共に一般職員の再退避へ動こうとしたとき―掃射が始められたのだった。 そして私たちはバリケード裏に釘付けにされ。》#K.R.2

2012-12-06 23:44:56
川口 慧太 @eulen_zoids

《数十人の一般職員とともに、二階で立ち往生している。 こうして覗いていても、敵の姿/顔はよく見えない。激しい銃撃の合間合間にしか顔を出せないし、典型的なテロリスト装束=真っ黒衣装に覆面、といういでたちだからだ。 火器を持っていたのは上から降りてきた人員のみだった。》#K.R.2

2012-12-06 23:49:24
川口 慧太 @eulen_zoids

《しかも警官が持つようなしょぼい拳銃。対して向こうが使っているのは連射のきくもの≒AK的ななにか。当然釣り合うはずもなく。 椅子を投げつけて侵入を防いでいるような有様で。 「このままでは押し切られるな」 いつの間にか私の後ろにいた櫛灘教官がつぶやく。》#K.R.2

2012-12-06 23:54:16
川口 慧太 @eulen_zoids

《たまたま一番階級が高かった教官は急ながら指揮官となっていて、私はその指示=『お前は混戦向きじゃない』の一言で、一般職員の警護をしていた。 押し切られる―それは明白だった。私にも、きっと他の味方にも。 心の底で少しでも、その状況を望んでいなかったと言えば嘘になる。》#K.R.2

2012-12-06 23:59:44
川口 慧太 @eulen_zoids

《もしそうなったら―。 「桐原」 櫛灘教官が私を呼ぶ。 「はい」 すぐに答えた。何かの予感→奇妙な平静さと共に。 「やるぞ。俺とお前で」 端的な指示だった。待ち望んだ。 「どうやります?」 「俺とお前で突撃する。それで敵陣を滅茶苦茶にする。その間に一般職員を逃がす」》#K.R.2

2012-12-08 01:08:31
川口 慧太 @eulen_zoids

《「シンプルですね」 「だからいいだろう?」 言うと、教官は珍しく薄く笑った。いや、単に口の端を引っ張っただけかもしれない。 「了解しました」 挑むように、笑い返してやった。 教官は頷く。もうその顔に笑みの残滓はない。そして他の奴らに指示を出しに行った。》#K.R.2

2012-12-08 01:12:28
川口 慧太 @eulen_zoids

《その間に私はまたバリケード近くへ。 必死で防衛していた武器もちの肩を叩いておしやる。無言でサイン=下がれ。 戸惑った顔をされる―そこに教官がやって来て耳打ち→分かったような顔をして一般職員と一緒に廊下の反対側へ行ってしまった。 周りに人がいなくなる。》#K.R.2

2012-12-08 01:16:52
川口 慧太 @eulen_zoids

《突然こちらからの銃撃が止まったことを怪しんだのか、敵は攻撃をやめていた。 急に無音になる。二階には私と櫛灘教官のみ。 「…来栖。今お前の方に一般職員を向かわせた。頼む」 教官がひとり言のようにいきなり話し出す。襟元の無線に向けて。その相手は来栖主任教官のようだ。》#K.R.2

2012-12-08 01:19:42
川口 慧太 @eulen_zoids

《「死なないで」 即答=私にも聞こえるような大きな、はっきりとした声で。 「了解」 言い/聞こえ/終わる、直後≒直前に。 櫛灘教官は跳躍した。 何のかけ声も無し。慌てる。コンマ二秒遅れて追う。 その時には教官は着地していて。 Tan. その足音は火蓋を切った。》#K.R.2

2012-12-09 21:50:42
川口 慧太 @eulen_zoids

《襲い来る火線=再開された銃撃のもの。 Fireの中をdash。揺れる。鼓膜が。発射音は音楽のように。私の脳に侵入してくる。生まれるreality。 避ける。私が。櫛灘教官が。あの人はまるで流線型の銃弾。私はぴょんぴょん/じぐざぐ動き回ってようやく避けているのに。》#K.R.2

2012-12-09 21:57:49
川口 慧太 @eulen_zoids

《ほんのささやかなsidestepで。弾丸から逃れてしまう。それも優雅とさえ言える余裕を持って。適度に/華麗に/一瞬早く。 まるで私や他の人間=発射者、そして弾丸自体よりもさきに、弾がどこへ向かうかを理解しているかのように。 加速と疾走。ほぼ落下。階段を。》#K.R.2

2012-12-09 22:03:09
川口 慧太 @eulen_zoids

《目指す終着は爆心であり敵陣。 先に辿り着いたのはもちろん櫛灘教官で。 前方、一番近くにいた敵兵×2―頭からつま先までblackで/fearしているかのようで/shiver・quiver・trembleだった/二人の背が曲がった人間に。 鈍い音が響き渡るような手刀。》#K.R.2

2012-12-09 22:12:11
川口 慧太 @eulen_zoids

《首筋直撃即時昏倒。顔が地面に着く前に教官はstart。離れていく背がなぜか置いていかれそうな気分を誘発。理由なき慌て。急いだ。並び目指す、さらに奥へ。(center of the enemies)途上、当然のように阻んできた複数の黒敵に当然のように足を振り上げ。》#K.R.2

2012-12-10 22:30:46
川口 慧太 @eulen_zoids

《排banish除 「それは人間だぞ」 作動させかけた爆発はできなかった。 ささやき←聞こえるか聞こえないかというほど。 それが私の体と意思に障害して。 しかし足の勢いは止められるほどではなく。 火力なく振るわれたそれは。》#K.R.2

2012-12-10 22:37:25
川口 慧太 @eulen_zoids

《教官ほどではないにせよ、十分な威力を持った肉体鈍器として敵に接触した。 旧世代の武道映画的にきりもみしながら吹っ飛ぶ敵1―壁にぶつかって動作停止。そんな彼を足を振り上げたまま私×武器を抱えたままその他大勢の敵=互いに硬直して眺める珍妙なカップリング。》#K.R.2

2012-12-10 22:42:25
川口 慧太 @eulen_zoids

《間の不可思議な空気を華麗に粉砕したのが櫛灘教官だった。 殴打/踵落/肘突/全て一撃で急所=一発で昏倒する敵。発射弾は0発のまま。 「近接戦の用意がまるでない。体力的に無理だと割り切ったのか」 舞い呟く教官。棒立ちする私の周りで。 その首がぐるりとこちらを向いた。》#K.R.2

2012-12-10 22:49:01
川口 慧太 @eulen_zoids

《「人間は殺せないか?」 とっさに言い返せなかった。 それ即ち、暗黙の肯定。 事実=私は躊躇した。boostを。人間だと言われて。訓練ではあんなにあっさり、嬉々として振るっていた、凶器/狂喜となるそれを行使することを。 Not―それだけではない。心のどこかから声。》#K.R.2

2012-12-11 22:23:04
川口 慧太 @eulen_zoids

《If―あのとき、教官が声をかけなかったら。(それは人間だぞ) わたしはころしていたんじゃないか? Fuぁgkhッ。 耳に飛び込んだ形容しがたい音声が思考を寸断し、私の心は飛躍から復帰した。 振り向く→ようやく対応した敵A。同様に背は曲がり、途絶えない小刻みの震え。》#K.R.2

2012-12-11 22:33:10
川口 慧太 @eulen_zoids

《その手には私に向けて構えられた明確な武器。 静止したような時間が滞留した。 殺すのか? その問は誰がしただろう。 私/櫛灘教官/敵? 分からなかった。そんなことを考えたときには、私の脚が勇敢なる敵Aに振るわれていた。 直撃=爆発は無し。 無意識決定の示唆。》#K.R.2

2012-12-11 22:40:24
川口 慧太 @eulen_zoids

《敵Aは既視感ある軌道で吹っ飛び、仲間同様に昏倒した。 それを見届けてから。 「殺せないようです」 なるべく淡々と答えた。 返事は無かった。 その後は完全無言独壇場。 お互い言葉を交わすこともなく私と櫛灘教官は連携し、ほぼ一方的に敵を殴り/蹴り/気絶させていった。》#K.R.2

2012-12-11 22:49:47
川口 慧太 @eulen_zoids

《築かれていく累々たる気絶者の山。そして数分後。 「「クリア」」 どちらからともなく声。背中合わせに立ちながら。 敵は、いなくなっていた。倒していた。私と教官が、二人だけで。 総勢―多分30人ほど。 「少なすぎるな」 辺りを見回しながら教官が言う。警戒は解かない。》#K.R.2

2012-12-12 22:20:20