【アイロンと鋏】福間健二 2factory18

毎朝書くツイート詩。どこかで言われたけど、朝のウォーミングアップ、でもあるけど、反対に、このために、前の日いちにちを生き、夢も見ている、という気もしてきます。 続きを読む
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福間健二 @acasaazul

灯りが一瞬まぶしくなり、それからゆっくりと暗くなった。だれかが死ぬときは、いつもこうだ。電線に何が教えるのか。アイロンと鋏を出したままにした台の上で、二つの手が出会う。大きな秘密を知った手とまだそれを知らない手。新聞と寒い朝が来ている。(アイロンと鋏1) #2factory18

2012-11-27 06:35:14
福間健二 @acasaazul

大きな秘密。窓ガラスに映る衣類、それぞれにそれを着た日の「人生の親戚」が残っている。この世界はどうなっているのか。アイロンをつなぐコンセント、どこにあるのか。きみはわからなくなる。女性として、最後にすること、鋏ですること、何だったろう。(アイロンと鋏2) #2factory18

2012-11-28 09:29:31
福間健二 @acasaazul

人生の親戚。人生に付いてまわる悲しみの皺。アイロンでそれが消せるかな。笑った。アカマツの林を通ってきて立ちどまる「構成主義」のまなざしにハッとして、動作のぎこちないきみは。新聞の、世界のニュースの、少女たちのかかえる膝を見つめたきみは。(アイロンと鋏3) #2factory18

2012-11-29 06:54:06
福間健二 @acasaazul

襞の部分。きみはそこにていねいにアイロンをかける。ケセラセラ、夢のなかで会ったドリスおばさんのように。できたよ、明るい枕。おしりと両あしをおいた新聞の「崩壊に向かう世界」を眠らせ、この、狂うように混線がつづいた十一月のスイッチを切って。(アイロンと鋏4) #2factory18

2012-11-30 08:54:58
福間健二 @acasaazul

打ち明け話。笑ってくれる相手はいないけど。切りたいもの、まだわからない鋏たち、カチャカチャ鳴るそのリズムで思い出した濃度と曲線も、惜しいNG。だから、きみ抜きで終わろうとする世界を脱出して、体操服の、遠い国の少女たちは、攻めている。(アイロンと鋏5) #2factory18

2012-12-01 09:17:35
福間健二 @acasaazul

荒れる海の音。修正される絵の、器具の位置。ひとつ、ふたつ、台所に立つ影がなかなか人間にならない。早くしないとひびわれるよ。その、閉じた蓋。上手に踊れない鋏たちに囲まれているからだ。シスター、シスター、質問があります。その箱の中身は?(アイロンと鋏6) #2factory18

2012-12-02 09:09:41
福間健二 @acasaazul

静かに成長する生き物のそばで、きみたちは奇妙な想像をした。史乃ちゃんの友だちの解釈では、その蓋、獰猛になるんじゃなくて檸檬になるんだよね。冬に入ったこの海辺の家で、いま、わかる。愛されたいと望むことよりも、大事なのは、愛する力を持つこと。(アイロンと鋏7) #2factory18

2012-12-03 07:47:13
福間健二 @acasaazul

そのために生まれかわる。そのために発熱する。湿度のなくなった枕の上ではライオンが吠え、アイロンは暗がりに沈む船となり、きみの手はつかむ力をなくした。体のなかに大風が吹いて波がうねる。でも、落とすものか。この箱の中身は、人を愛する力です。(アイロンと鋏8) #2factory18

2012-12-04 06:43:49
福間健二 @acasaazul

三十九度で迷い込む街。いたるところに鏡があり、何人ものきみが愛の力で失意の男たちを生きかえらせている。ハードワークだ。無償の愛であり、最大温度のアイロンのなかの小宇宙だからだ。ひとりの男にとりついた死神が言う。「生きて帰れると思うなよ」。(アイロンと鋏9) #2factory18

2012-12-05 09:54:32
福間健二 @acasaazul

大きな鋏を使うときだ。やつらの都合のいい解釈に使われる「契約」全部切る。原因不明の服のシミも抜きたい。やさしい洗濯屋さんに電話しよう。空気、音、水、粒子、ちがう流れになってくれ。新しい世界。まださむけがする。でも、だれかの息を感じた。(アイロンと鋏10) #2factory18

2012-12-06 06:43:22