ヨウカイスレイヤー第五話より「フラワリング・サツバツ・ナイト」#2
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隔離された世界、ゲンソウキョウ。この地では人間やヨウセイ、ヨウカイ達が気ままに暮らしている。近未来的要素はことごとく排除され、重金属を含まない酸性雨さえ降ることはない。総じてヨウカイたちの住みやすい世界となっている。1
2012-12-17 12:23:35![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
ヒエラルキーの最上位に立つヨウカイにとって、自らの存在を信じる人間、特に自らに対して恐れを抱く者達という存在は必要不可欠である。死すら超越する力をもつ者が現れる一方で、力を失い人間の底辺と同等程度にまでおちぶれる者もいる。ヨウカイとはそういうものなのだ。2
2012-12-17 12:26:35![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
そんなヨウカイ達がその力を知らしめるのに最も有効な方法は、残虐な見せしめである。騒ぎを起こしたヨタモノの成敗、自警団と称して里を回り違法行為者をケジメ、多忙を極めるエンマ・ヨウカイの管轄である罪人の処刑権限を委託された者たちによる公開処刑がそうだ。3
2012-12-17 12:27:20![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
しかし、それさえも必要のない者がいるのも事実だ。日本におけるニンジャ存在に対する畏怖の念めいて人やヨウカイから恐れられる、力と権力の頂点に君臨するヨウカイ達。名を聞けば誰もが恐れおののき姿を見ればたまらず失禁するほどのヨウカイが存在する。これは誇張などではない。4
2012-12-17 12:29:11![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「ヤレヤレだ……畜生、ブッダよりサディストだぜ」彼女、タカギ・マリサはその真実を身に染みて実感している。とあるヨウカイのテリトリーに侵入し、適当な物品を物色しようと目論んだ彼女はそのヨウカイにあっさりと捕まり、体の自由を半ば失われた状態で野外に打ち捨てられている。5
2012-12-17 12:34:13![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
マリサは身動きができない状態のまま地平線から太陽が顔を出すのを6回見た。すなわち捕まってから一週間が経っていることになる。彼女を捕えた邪悪なヨウカイ、カザミ・ユウカはマリサに特別何かをするわけではなく、時々思い出したかのように熱いソバやオデンを食べさせているだけだ。6
2012-12-17 12:36:17![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「やっぱり騙されてるぜ。何がインストラクションだ、ただの放置プレイだろこれは」マリサの四肢はタコ足めいたツタ触手で緩くながらも縛られており、足元に置かれたハッケ・コンバータを拾い上げることすらままならない。さらに言えばそれは偽物であり、本物はユウカの手にある。7
2012-12-17 12:38:44![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
やがて日が暮れるも、ユウカがマリサの元へ来ることはやはりなかった。目の前の屋敷に人やヨウカイの気配は無い。空にはドクロめいた満月が浮かび、二日間絶食状態にある彼女をあざ笑うかのような光を放っている。8
2012-12-17 12:40:17![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「クソッ、睡眠は十二分だが腹が減って仕方ないぜ。それにZBRもちょうど品切れときた」マリサは頭を抱えようとするが、ツタ触手がそれを阻害する。「ヤバイぜ、このままだとZBR切れで廃人になるか空腹で死ぬかかよ……畜生!ブッダはいつまで寝てやがンだ!」「おはよう」「アン?」9
2012-12-17 12:57:34![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「ドーモ、アナタのブッダよ。気分はどうかしら?」頭上から艶めかしい声が降り注ぐ。「アー、そうだな……メシが食いたいぜ。ZBRも欲しい。あとこの植物から解放してくれると泣いて喜ぶ」「それは無理な相談ね」マリサを見下ろす影が答えた。「勘弁してくれよ、私は普通の人間なんだ」10
2012-12-17 12:59:10![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「あら、覚醒しなかったというわけね。残念だわ」声の主はカザミ・ユウカその人だ。「何の話をしている?」「こちらの話よ。アナタがワタシたちの仲間になるってのなら話は変わるけど」「是非変えてくれよ、意味が分からねぇ。それに空腹でろくに状況判断ができないって所だからな、今の私は」11
2012-12-17 13:01:15![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「うーん、そうね。じゃあ話を変えましょうか」ユウカはツタを操りマリサを裏返すと、後ろにまわされた彼女の手に剛性バンブー手錠をかけた。「え?拘束ナンデ?」ユウカはその言葉を無視し自分の服をはだけさせると、胸の谷間からマキモノを取り出し紐解いてマリサに見せつけた。12
2012-12-17 13:07:29![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「アー……何だ?暗くてよく見えねえぜ。『断罪』『重要犯罪者一覧』?これがどうかしたってのか?」「キリサメ・マリサ」「……!」「罪状は強盗。常習犯の疑い高し。主にコウマカン大図書館での被害が大きい。最重点な」マリサは答えない。「随分とあくどいわね、この子」13
2012-12-17 13:09:29![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「……私はタカギ・マリサだ。そんな名前じゃあねえ」「ファハハハ!この状況でまだシラを切るとはいい度胸じゃないの!」「……何の話だか」「アナタの家に上がらせてもらったわ。もう押収済よ」「何!オイオイオイ、そりゃないぜ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」叩き込まれるボディーブロー!14
2012-12-17 13:13:05![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
衝撃でツタ触手がぶちぶちと千切れ、マリサの体が浮き上がる。「アバッ……」「望み通り解放してあげたわ。さあ泣いて喜びなさい!イヤーッ!」「グワーッ!」痛烈なカカト落とし!地面とバウンド!再び体が浮き上がる!「イヤーッ!」「グワーッ!」無防備な腹部に放たれるカラテチョップ!15
2012-12-17 13:21:50![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
再び地面へ釘づけにされるマリサ!ユウカはその上に馬乗りになり、体を押さえつけた。「待て待て待て!分かった、ゲホッ、謝るから許してくれよ」「ファハハハ、今更!命乞いが遅いんじゃない?改めてアイサツするわ。ドーモ、マリサ=サン。カザミ・ユウカです」ユウカはマキモノを裏返す。16
2012-12-17 13:27:16![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
そこには「ダンザイ・シテンノ」とルーンカタカナ・ショドーがしたためられていた。「シテンノ?なんだこれは」「書いてある通りよ。罪状に応じて裁きを下す。場合の如何では殺しさえもするわ」ユウカの目が月の光を受け輝く。「勝手に殺すなんて実際ブッダが黙って見てないんじゃないのか?」17
2012-12-17 13:29:53![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「勝手ならその通りなのでしょうねぇ」ユウカはマキモノをしまい、顔を互いの息がかかるほどにまで近づけた。体はほぼ密着状態だ。「だけど、これはエンマ様直々の仕事なの。ワタシが自分の趣味のためにアナタを一週間もハリツケにするはずがないじゃない」「顔が近いぜ。あとそれは嘘だろ」18
2012-12-17 13:31:58![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「……まだ状況が分かってないようね。強がりのつもり?声が震えてるわ」「全く分からないぜ。説明を」「イヤーッ!」ユウカは頭突きを叩き込んだ「グワーッ!」マリサは軽い脳震盪を起こしスタン状態!その衝撃を利用して立ち上がるユウカ。「飽きたわ」「アバッ……ヒデェことしやがる」19
2012-12-17 13:33:06![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「アナタを虐めるのも意味があってのことよ」「さっきからなんだ?どういうことだよ」「いずれ分かるわ。せいぜい自分とお友達の心配をしておくことだわ!じゃあね、カワイイ魔法使いさん!」ユウカはそれだけ言い残し、本物のハッケ・コンバータを投げ捨てるとまたどこかへと消えてしまった。20
2012-12-17 13:36:34![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「ゲホッ、畜生……なんなんだよ、アイツの考えは全く分からんぜ。とにかく命拾いしただけマシなんだがよ……」マリサは這いずるようにして本物のハッケ・コンバーターを拾うと、手錠の鎖部分を破壊した。「さて、まずは飯を食わないとヤバイんだったな。それからこの手錠を何とかしないとな」21
2012-12-17 13:38:00![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「……えーと、チェン=サン、ルーミア=サンは今回は対象外。ミスティア=サンは先週ので良しでしょう。ルーナスプライト・スリーの三人は次の機会として、残るは……良いところに現れる貴方のみということですか」「ん?」「ドーモ、チルノ=サン。アヤ・シャメイマルです」23
2012-12-17 14:06:21![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
獲物を見つけたイーグルめいた目をぎらつかせながら、アヤは目の前のテング・オメーンを頭に乗せた水色の小さな少女にオジギをした。「ドーモ、アヤ=サン。アタイはチルノだ」「知っています。今日は貴方のためにやってきたのですから」「なんだと!敵か!」「どうしてそうなるのですか」24
2012-12-17 14:08:23