1)最近、研究室ルールに関して「明文化されていないから(当然)わかりません」とか「文書化してください」という要求をよくもらうようになった。確かに細かな決まりごとは口伝で伝わりきらないことも多く主張自体は全うなのだが、「あるべきものが欠如している」風の言い方には少し違和感を覚える。
2012-12-17 23:07:012)研究室での教育・研究活動に関する全てを明文化することは単純に量的な問題で不可能である。また、グループの状況は刻一刻と変化するので(大学の研究室の世代交代は本当に早い!)、必要なルールだって様々に変わる。初期設定と定期更新に費やされる教員の時間的資源は無視できないものになる。
2012-12-17 23:08:043)だがそれ以上に危惧されるのは、ルールというのは何かしらの「目的」があって定められるものなのに、時間が経ち世代交代が進むと、しばしばその原点が軽視されてしまう点である。「(○○のために)××してださい」がいつの間にか「××しているんだから(○○でなくても)問題ない」になりがち。
2012-12-17 23:08:414)その意味でルール全てが明文化されていればいいというものではない。研究室も組織である以上、トップダウンで決められた最低限の基本方針は必要だが、細かな部分は根本の「目的」を共有した上で、構成員一人一人が最善の運用に努め、必要があれば協議してアップデートしていくべきではないか。
2012-12-17 23:16:035)幸い日本の大学の研究室において、教員と学生は「雇用者と被雇用者」の関係にはないのだからーーただし学費を払っているからといって内田流に「商品提供者と顧客」であってはマズイわけだがーー学生だって研究室運営にどんどん関与していけばいい。むしろそうあるのが望ましいと思う。
2012-12-17 23:23:256)だからこそ学生からの積極的な提案を歓迎したい。「(あるべきルールがないから)与えてください」ではなくて「こうしたらもっとよくなるのではないか」という具体的な提案。誤解のないように言っておくと、これができる学生は既に当然のようにやっている。大変ありがたいことである。
2012-12-17 23:24:497)自らの提案が様々な事情で立場が上の人に「却下」されることは多い。だが、実はそんな時こそチャンスだ。ぜひ理由を聞いてほしい。そして自分にない考えがあれば、前向きに取り込んで次への糧にしてほしい。大切なのは自分で考えること、提案すること、却下されてもそれを糧に考えを深めること。
2012-12-17 23:25:568)これはリーダーシップ育成にも通じるのではないか。この過程を繰り返すことで上の立場の価値観が身につき、実際に自分がその立場になった時にリーダーシップを発揮することが可能となる。与えられるものを(何も考えず)享受するだけの学生が、社会でいきなりそれを求められても無理というものだ。
2012-12-17 23:27:589)ここまで書いてくると、研究室ルールだけでなく、研究そのものにも同じことが当てはまることがわかる。研究に関して自分の頭で考え、積極的に提案すること。上司から「却下」されてもいい。そこから次どうするかを考えることは絶対に将来の糧になる。その過程を数多く経験することに意味がある。
2012-12-17 23:29:1910)まとめると、研究室では構成員一人一人が決して「受動的」であってはならず「能動的」に関与し、考え、提案し、議論し、改良していくべき。当然それができる雰囲気作りは必要だが、そこは特に上司が気をつけなければいけない点だろう。全てが噛み合えば自ずと良い研究室になっていくはずだ[完]
2012-12-17 23:30:39