1/3=0.33…の話(あるいは「実数とは?」前哨戦)

数学の専門家、@yon_ichiro さんが、「1/3=0.33…」についての説明を連続ツィート。これをまとめてみました。「『1=0.99...』ってなんやねん!」って疑問に思っている人には特にオススメ。そして、この連続ツィートは「実数とは? http://togetter.com/li/425678」とも話が繋がってきます。 ポイントは、「算数の話かと思ったら極限の話が絡んできたぜ、ヒャッハー」「1と0.999...は、同じ数であり、表現(定義)の仕方が違うだけ」といったところでしょうか。
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四一郎 @yon_ichiro

(25)そのような状況のとき、「数の列a1、a2、a3、…はαの近似列である」、または「数の列a1、a2、a3、…の極限値はαである」「数の列a1、a2、a3、…はαに収束する」などといいます。

2012-12-18 00:45:07
四一郎 @yon_ichiro

(26)記号では lim_{n→∞} an = α などと書きます。{}内は、本当はlim の真下に書きますよ。

2012-12-18 00:45:25
四一郎 @yon_ichiro

(27)0.3333…とか1.4142…とかいう書き方には、そうとは知らないうちに、数学の都合で『近似』とか『極限』の思想が入り込んでいるんですね。それをきちんと説明するのは数学の責任だと思うんですが、なんかあんまりされていない。それで、いろいろ奇妙な感じを持たれてしまう

2012-12-18 00:47:23
四一郎 @yon_ichiro

(28)0.3333…の「…」部分を、なんとなく「次から次へと3が並んでいくさま」と思って眺めていると、いつまで経っても1/3にたどり着けなくて、なんともあいまいな気持ちになります。しかし、0.3333…とは、無限近似列が目指している目標、ゴールの数なんです。途中経過ではない。

2012-12-18 00:50:16
四一郎 @yon_ichiro

(29)無限に続く数の列全体を使って、たった1つの数しか表せない、とは、近似列の考えとはずいぶん不経済ですね。0.3333…ならば、一言「1を3で割った数だよ」っていえば事足りるのでなおさらです。1.4142…だって「2乗すれば2になる数だよ」っていえばわかってもらえそう。でも、

2012-12-18 00:53:14
四一郎 @yon_ichiro

(30)たとえば円周率 π=3.14159265…は、1/3や√2のように加減乗除では表現できない数です。円周と直径の比です、というのは定義ですが、円周の長さとはなんぞや、というところがまた難しい。円周率については、無限数列による近似も、やった甲斐がありそうです。

2012-12-18 00:56:28
四一郎 @yon_ichiro

(31)しかしπなんかは数の中でも超弩級の有名人で、実は小数展開近似に頼らなくても描写はできます。問題は無名の数たちなのです。数直線(直線に目盛りを振り、各点に数を対応させたもの)の上には数たちがひしめいていますが、そのほとんどが、近似列以外に特徴づけの方法を持たない数なのです。

2012-12-18 01:00:14
四一郎 @yon_ichiro

(ちょっと話をそらしてしまったかな……)

2012-12-18 01:05:24
四一郎 @yon_ichiro

(32)0.3333…や1.4142…、それに3.141592…も、小数点以下の数字の求め方がわかっているので(実行が容易か否かは別として)、その目標になっている数の存在は把握しやすいと思います。1/3、 √2、π、どれも定義ははっきりしていて、それを元に近似列を作っているので。

2012-12-18 01:09:18
四一郎 @yon_ichiro

(33)では、もっと不規則な、たとえば 1.8648807626458…とかはどうでしょう。これは今私がキーボードをなでて作った数なので、なんの規則もないです。このあとのケタがどうなるのか私も知りません。しかし、…部分に数がどこまでも続くならば、これも近似列です。ある数の。

2012-12-18 01:12:54
四一郎 @yon_ichiro

(34)実は(33)の内容は本当は順番が逆です。「どんな無限小数展開でも、それに対応する数の列は近似列とみなし、そのゴールには数があると考える」というのを公理にする、というのが、カントール流の(有理数の)完備化、といってまあまあいいんですが……。これは話を大きくしすぎたかも。

2012-12-18 01:19:18
四一郎 @yon_ichiro

(34番外)(余計ですが、無限小数展開による完備化と通常のコーシー列による完備化が同じことであることについて。まず、無限小数展開列はもちろんコーシー列。逆にコーシー列があると、その部分列に無限小数展開列がとれて、収束先は一意だからOK.ザツですが。)

2012-12-18 01:22:27
四一郎 @yon_ichiro

(35)30番台のツイートはもともとの「1/3=0.3333…の話」とあまり関係なかったかも知れず、わかりにくかったかも。無視していただいても結構です。ただ、無限小数展開で数を近似する、という考え方が、数学にとってかなり大切な思想と直接つながっていることをいいたかったのでした。

2012-12-18 01:28:35
四一郎 @yon_ichiro

(35番外)よくご存知の型は「ああこいつは、無限小数展開による実数の定義の話にかこつけて、デデキント流にせよカントール流にせよ、有理数の完備化で得られる実数なんてほんとうにrealな存在なんだろうか、みたいなことを言おうとしてクラッシュしたんだな」と生暖かく見ていただければ

2012-12-18 01:31:14
四一郎 @yon_ichiro

(36)まとめます。0.3333…という表現は、0.3、0.33、0.333、0.3333、……という無限数列が際限なく近づいていく(近似する)目標となる数を表します。今の場合は、それは1/3です。

2012-12-18 01:36:04
四一郎 @yon_ichiro

(37)0.3333…とはいわば「0.のあとに3が無限個並んでいる数」ですが、われわれには無限を見通す能力はありません。そこで、「どれだけ厳しい精度を要求されても、どこかのケタまでがんばればそこから先はその精度をクリアしている」という事実の確認をもって、「近似は完璧」と考えます。

2012-12-18 01:38:32
四一郎 @yon_ichiro

(38)この事情は、0.3333…のような規則性のある無限小数展開でなくても、同じことです。無限小数展開は、いつでも、あるたった1つの数を表しています。その数は、近似列のゴールです。ただ、そのゴールの数の性質がわれわれによくわかるか、というと、それは別問題。存在を認めるのみかも。

2012-12-18 01:41:08
四一郎 @yon_ichiro

(39)まとめは以上。最後になってしまいましたが、0.3333…の話はいろいろな本で説明されています。その中で、やはりさすがに、野崎昭弘先生の著作はわかりやすくて面白いです。たとえば数学的センス』(ちくま学芸文庫)はとてもいいです。あまりにいいので、(続く)

2012-12-18 01:43:04
四一郎 @yon_ichiro

(40)(続き)私は今回のツイートでは、あえてこの本に書いていないことを多く書きました。おんなじようなこと書いたら絶対かないませんから! ……長くなってしまいましたが、以上です。読んでくださってありがとうございました!

2012-12-18 01:44:02