1/3=0.33…の話(あるいは「実数とは?」前哨戦)

数学の専門家、@yon_ichiro さんが、「1/3=0.33…」についての説明を連続ツィート。これをまとめてみました。「『1=0.99...』ってなんやねん!」って疑問に思っている人には特にオススメ。そして、この連続ツィートは「実数とは? http://togetter.com/li/425678」とも話が繋がってきます。 ポイントは、「算数の話かと思ったら極限の話が絡んできたぜ、ヒャッハー」「1と0.999...は、同じ数であり、表現(定義)の仕方が違うだけ」といったところでしょうか。
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四一郎 @yon_ichiro

(0)こんばんは四一郎です。夜もすっかり更けてきましたが、これから @shishi_koma さんからいただいたお題「1/3=0.33…の話」をツイートしようと思います。無限に続くことを表している、かの、ような、「…」これいったい何なのでしょうか。考えるために、少し違う角度から。

2012-12-17 23:25:55
四一郎 @yon_ichiro

(1)ルート2、√2、という数があります(まあ、現代数学では、普通はあるとします)。これは2乗すると2になる数(二つある)のうち正の方。つまり、a×a=2 となるプラスの数 a のことです。この√2の値ですが、よく「√2=1.41421356…」と言われる。この「…」の意味は?

2012-12-17 23:29:50
四一郎 @yon_ichiro

(2)「1/3=0.333…」の「…」と、「√2=1.41421356…」の「…」の意味は同じなのか違うのか。違う、というのも妙ですよね。実際、私は、両者はまったく同じものだと考えます。ただ、前者の方は規則性が見えすぎて、かえって本質がつかみにくくなっているかもしれません。

2012-12-17 23:33:26
四一郎 @yon_ichiro

(3)で、「√2=1.41421356…」ですが、そもそも「…」の前に、1.41421356の部分はどうやって算出するのでしょう。開平法というかっこいい算法もあるのですが、ここでは原始的にいきますと、「いろいろな数 m について m×m を計算してみて、2に近いのを探す」のです。

2012-12-17 23:36:42
四一郎 @yon_ichiro

(4)1×1=1は2より小さく、2×2=4は2より大きい。だから√2は1と2の間にある数で、「√2=1.~」までが確定。次に小数第1位を知るために、試行錯誤の末1.4×1.4=1.96と1.5×1.5=2.25を見つけます。1.96<2<2.25だから、1.4<√2<1.5です。

2012-12-17 23:41:00
四一郎 @yon_ichiro

(5)て、1.4<√2<1.5とやる。で、「√2=1.4~」がわかります。以下同じようにして、√2の小数点以下をだんだん知ることができます。そうして「√2=1.41421356~」が得られる。~の先、たとえば小数第9位を知りたければ、また試行錯誤するわけです。大変だなあ

2012-12-17 23:42:58
四一郎 @yon_ichiro

(6)労力とかかかる時間とかを度外視すれば、とにかくこうやって、√2の小数点以下を求められます。しかしこれ、やってみないと具体的な数字はわかんないですよね。√2の小数第100位なんて、私は知らないし、それを手計算で求めろなんていわれたらいやです。でも、何かの値に決定している

2012-12-17 23:46:40
四一郎 @yon_ichiro

(7)その点「1/3=0.3333…」ってのは、小数点より先の展開が読みやすいですね。割り算は(さっきの√2の計算と違って)筆算でどんどん先のケタまでいけるのですが、実行すれば明らかなように、延々と「10÷3の商は3、余りは1」を繰り返す。どこまでいっても、出てくるのは3です。

2012-12-17 23:49:17
四一郎 @yon_ichiro

(8)ですから、小数展開のやりやすさという点では 1/3 と √2 はずいぶん違います。ですが! ではれ以外の違いは何でしょうか。1/3 では明らかな規則性(ここでは「3ばかり繰り返される」という周期性です)が√2ではない。それはそうですが、数字がどこまでも続くのは同じですね。

2012-12-17 23:51:40
四一郎 @yon_ichiro

(9)「1/3=0.3333…」と「√2=1.4142…」は、次のような共通点を持っています。〔あ〕…のところにはケタが無限に続き、尽きることはない。〔い〕…のどこかでケタを打ち切ってしまうと、必ず本来の値より小さくなってしまう。〔う〕しかし、ケタを進めればだんだん正確になる。

2012-12-17 23:56:24
四一郎 @yon_ichiro

(10)〔う〕はもう少し説明が必要かも。〔い〕でいったように、ケタを途中で打ち切る、たとえば 1/3=0.333 とか 1/3=0.33333 とかやると、これはどちらも不正確。しかし不正確の度合いは、後者の方が小さい。もっとケタをたくさん取れば、もっとマシになります。

2012-12-17 23:58:41
四一郎 @yon_ichiro

(11)これで、無限小数展開の正確な意味を説明できる感じになってきました。1/3=0.3333…や√2=1.4142…、あるいはπ=3.14159265…などの「…」の理解には、『近似』『誤差』『だんだん精密に』などの感覚が必要で、それをまとめ上げると『極限』の概念に到達します。

2012-12-18 00:02:10
四一郎 @yon_ichiro

(12)「…」のところは、なんとなく漠然と「数字がどこまでも続く」と思うのでは不十分なのです。だって、どこまでいっても正確に書き切れないモノなんて、それって数なんでしょうか? 小数第何位までがんばって計算するかで値が変わってくるモノなんて、そんなの数といえるんでしょうか?

2012-12-18 00:04:50
四一郎 @yon_ichiro

(13)「1/3=0.3333…」と書かれると、右辺の方がいつまでたっても左辺より小さいように思える。あるいは、この両辺を3倍した等式「1=0.9999…」を見るともっとそういう気がする。それは「…」の解釈が感覚的過ぎるからです。では数学ではどう解釈するかというと、

2012-12-18 00:07:57
四一郎 @yon_ichiro

(14)(まあバラエティー番組ならばここでCMですけど、私がそんなことしたらみんなここから先読んでくれないから)(なんとなくタネあかしをもったいぶった感じがしないでもないんですが、いきなり「数学ではこうなんです!」っていっちゃうよりは飲み込んでもらえるかなと思って……)

2012-12-18 00:09:33
四一郎 @yon_ichiro

(15)次のように、数が一列にどこまでも並んでいるさまを想像してください:0.3、0.33、0.333、0.3333、0.33333、……並び方の規則性は見て取れると思います(見て取ってくださいお願いします)。この数たち、どれも 1/3 より小さいです。(続く)

2012-12-18 00:12:17
四一郎 @yon_ichiro

(16)(続き)それは、3倍して比較してみるとわかりやすいでしょう。で、どれも1/3より小さいですが、でも、先に行けばいくほど、その誤差は小さくなります。(実際、この数の列で一つ進むごとに、1/3との誤差が十分の一になります。)その小さくなり方は、際限がありません

2012-12-18 00:14:25
四一郎 @yon_ichiro

(17訂正)0.3、0.33、0.333、0.3333、0.3333、…という数の列は、先に行けばいくほど 1/3 との差が小さくなるし、「差を□より小さくしろ!」という命令がどんなに過酷でも(つまり、□がどんなに小さくても)、この列のどこかから先は、その要求を満足しています。

2012-12-18 00:31:11
四一郎 @yon_ichiro

(18)たとえば、この数の列に対して、「1/3との差を0.0000…01(最後の1は小数第千位)より小さくしろ!」と言われたとしたら、「はい、この列の前から千番目以降はみんなそうですよ!」と応えればよい。これは、要求される精度がどれだけ厳しくても、どこかから先は大丈夫です。

2012-12-18 00:22:00
四一郎 @yon_ichiro

(19)というわけで、数の列 0.3、0.33、0.333、0.3333、0.3333、…は、その全体によって、1つの数 1/3 をよく近似していると考えられます。こういう状況を「この数の列は 1/3の近似列である」と言い表します。よおし、次でやっと、結論めいたことがいえますよ。

2012-12-18 00:27:10
四一郎 @yon_ichiro

(20)『0.3333…』とは、数の列 0.3、0.33、0.333、0.3333、0.3333、… 近似列と見たとき、その『近似される数』を表す記号です。つまり、今の場合は、『1/3』のことです。1/3 に近い数、ではありません。1/3 そのものです。

2012-12-18 00:30:11
四一郎 @yon_ichiro

(21)同じことは、√2の小数展開についてもいえます。つまり;『1.4142…』とは、数の列 1.4、1.41、1.414、1.4142、…近似列と見たとき、その近似される数』を表す記号です。つまり、今の場合は『√2』そのもののことで、√2に近い数、ではありません。

2012-12-18 00:33:13
四一郎 @yon_ichiro

(22)1=0.9999… という等式はぱっと見奇妙な気がしますが、今述べた解釈によると当然の等式です。数の列 0.9、0.99、0.999、…によって近似される数が『0.9999…』です。それは今の場合『1』ですね。0.9999…は「1よりちょっとだけ小さい数」ではないのです。

2012-12-18 00:35:55
四一郎 @yon_ichiro

(23)ちょっと一般的に書いてみます。記号が多く出てくるので、慣れていない方は読み飛ばしていただいて結構です(そのうち慣れて戻ってきていただきたいですが!)数の列 a1、a2、a3、…がどこまでも続いているとします。これがある数 α をよく近似している、といえるのはどんな状況か。

2012-12-18 00:40:12
四一郎 @yon_ichiro

(24)それは少々くどいのですが、次のようなことになります:「この列とαとの誤差を□より小さくしろ!」と、いかに無茶な指示を出されたとしても、「はい、前から△番目から先はみんなご指示通りになってますよ」といえることです。□として、どんなに0に近い数を言われても大丈夫、という状況。

2012-12-18 00:42:00