実数とは?:補足編
数日前、実数の構成について連ツイしたものをまとめていただいています。http://t.co/WEaBMocd http://t.co/YrvyKouX ありがとうございます。これについて、少々補足が必要かと思いましたので、簡単に。
2012-12-23 02:18:30ここではデデキント流とカントール流、二つの実数の構成を紹介しました。どちらも歴史ある有効なものですが、実はもっと直接的な構成法もあります。それは「無限小数展開も、すべて数を表しているとみなす(それを実数という)」というものです。これで、二つの構成法と同じものができあがります。
2012-12-23 02:20:16たとえば 3.487039573293213578……のような、何の規則性もないまま永久に続く数字の羅列、これでも数だと認めるのです。これはたぶん、哲学者、論理学者、倫理学者、神学者、それぞれいいたいことあるはずですよ。でも、こうすると、実数が構成されます。
2012-12-23 02:22:02ところで、私は無限に関する「哲学的考察」は何も勉強してないのですが、そんな私にも野矢茂樹先生の『無限論の教室』(講談社現代新書)は大変面白かったです。無限についてどういうことを哲学者が問題にしたいのか、ちょっとわかった気がしました。あとは @hirarikkuma さんに任せた!
2012-12-23 02:24:22もう一つ、「有理数は隙間だらけなのでそれを埋めて実数にした」という表現、もちろんこれで正しいのですが、これだと有理数というのはずいぶんまばらなものという感じがします。いや、それもある意味本当なのですが、同時に「実数全体の中で、有理数は稠密(dense)である」ことも…説明は次に。
2012-12-23 02:28:29実は、実数全体の中で、有理数は非常に少ない。そうなのですが、しかし、どんなに狭い範囲を区切ったとしても、その中には必ず有理数が存在します。これを『稠密』といい表すのですが、こんな漢字ほかには使わないよなあ。dense の方がまだわかりやすいかな。コンデンストミルク、のイメージ?
2012-12-23 02:31:06有理数の世界は確かに隙間だらけ。しかし、その隙間は空白「エリア」ではない。一つ一つの隙間は「ポイント」であって、しかもその隙間ポイントの周りには有理数がたくさんある、いくらでも近くに。なんだか変な感じですが、そういうしかないのです。
2012-12-23 02:34:40このように、有理数は実数全体の中で十分しっかり根を張っているので(うわあなんと大雑把な表現!)、「すべての有理数について○○が成立する」というとき、ある条件を仮定すれば、「すべての実数について○○が成立する」といえることがあります。その条件とは、連続性(continuity)。
2012-12-23 02:36:33よくある例題です。「任意の実数 x, y に対して f(x+y)=f(x)+f(y) であるような、実数から実数への《連続》関数は、比例関数であることを示せ。」f(1)=a とおいて、「f(x)=ax である」ことを、x が0のとき、正整数のとき、負整数のとき、有理数のとき、と
2012-12-23 02:40:16順番に示していきます。そして最後に、x が任意の実数であっても f(x)=ax であることを示すわけですが、そのときに f の《連続》性と「どんな無理数でもそのいくらでも近くに有理数がある」ことをタテにするのです。
2012-12-23 02:41:29「周りの有理数たちはみんな f(x)=ax を満たしているんだぜ?」「あなたのいくらでも近くに有理数はいるんだよ?」「f は《連続》なんだから、あなたも近所と行動を合わせなきゃだめなんじゃないの?」……おかしいな、なんかがら悪いよ……。ともあれ、こうして証明が完了します。
2012-12-23 02:43:08どんな無理数にも、いくらでも近くに有理数がいる、ということは、カントール流の実数構成だと、そもそも有理数列で近似されるものが実数なのですから、当たり前になります。デデキント流だとちょっと議論が必要ですが、まあそれも難しくはありません。以上、補足でした。
2012-12-23 02:44:32@yon_ichiro 結局のところ無限小数展開はコーシー列ですから、カントールと同じことになるわけですね。実数をn進数小数で表記するということは、コーシー列を一意に定める作業に対応する、ということでしょうか。
2012-12-23 02:30:37@seki そうですね。逆に、コーシー列があったとすると、その部分列として、単調に精密になっていく無限小数展開を取り出すことが必ずできます。それで、どちらの構成も同じことですね。n進小数展開することによって、同じ実数に収束するコーシー列全体から、代表元を一つ選んだことになります。
2012-12-23 02:48:09@yon_ichiro n進小数展開のようにコーシー列を1番目から順番に定めていくという可算の操作で、不可算の濃度に存在する実数を「定める」ことができるというのは不思議です。収束とはそういうことだと納得はできるけど、すっきりしないというか。
2012-12-23 05:30:28