ミストルティン編　■■ローグ　～「■■する破界者～■■ー■ー・スルー・ジ・■ン■」～

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理不尽極まりなく、まともな魔術師か独身がその様を目撃し、かつ理解すれば発狂か憤死も有り得る。色々な意味で塔の中は余人には見せられないのだが、塔の側で寄り添う二人～少女と鎧の少年にはその様子が伺えていた。だが二人は仲の様子をあまり気にしてはいない。慣れだ。 46

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少女が一瞬躊躇いながら、少年の腰の辺りに腕を回す。もっと上にしないのは、彼が光線銃を構えていたからだろうか。「■■さん…」「■？」「私…本当に…その、なんて言えばいいのか…」「……」「ゴメン…なさ」「■」「……」「俺は俺だ。何度でも…■■も、他の皆もな」「……」 47

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「だから、■は…自分の信じるようにすれば良い…やっと出口が見えたんだろ？」「………」少女は俯く。「元気を出せなんて今の俺はもう言わない。正直泣いてもらった方が嬉しいのかもな、でも」「……」「いつか、また必ず笑ってくれ」「！！」『はい、ごぉ～～』 48

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塔の中からホワイトの気の抜ける声。通信機越しでは無く、そのまま互いに声や音が届く距離だ。少女は顔を上げ、愛しい少年の顔を見つめた。「……………はい！」涙でぐしゃぐしゃになりながらも、彼女は何とか笑顔を作れた。作れていた。 49

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『４!』少年は彼女に向けて軽く首肯すると、敵に向き直り、銃のスイッチを入れた。＜サ・イ・バ・ア・ブ・ラ・ス・ト>２２…いや２７年前のような古めかしい電子音声が技名を読み上げる。『３！』一瞬のチャンスに全てを掛けるようなホワイトの声。５・４より異様に気合が感じられた。 50

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『２！』金髪の女は限界以上に込めた力により、脚から血が流れ始めていた。＜Churge Up!＞サイバーブラスターの打って変わって軽快な音声。威力は戦車砲の数倍程度だが、引き金を構えるのは火力への貢献の為だけではない。その指には迷いも震えも無かった。『１！』無味乾燥な合成声。 51

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ホワイトが発射スイッチを構える。これは正確にはセーフティーロックに過ぎず、これを押した次の瞬間に後ろの彼女が『一つ一つ手動で』発射するだけである。『……ッ…」「だいじょーぶ。私は一緒よ。外の二人も、皆も………あとあの女も、ね」「…うん」 52

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愛する女の手が彼の手の震えを抑え込み、その少年の指が、スイッチに触れる。「「発射ァッ！」」掛け声と共に、数十万の火器とサイバーブラストが同時に火を噴き、一万二千発の原水爆の猛威が亜音速で解き放たれる!火力が強い!絶対に強い！ 53

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真っ先に邪神に向かったのは光速度のレーザーだが、魔力障壁に阻まれ本体には届かない。そしてそれに続いたのは、他のどの兵器でも無く、金色の光だ！彼女の金髪とその中の一房だけの銀髪が一瞬煌めく！彼女が放ったのは、流星の如き回し蹴りだ！ 54

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直径二十キロ近い邪神の威容が、子供の蹴りを受けた軟質ゴムボールの如くひしゃげ、１キロ以上も後方に押し飛ばされる！更に翼の推進力で邪神を押し続ける。突き破ろうとはせず、衝撃力を彼女の張る薄い魔術障壁越しに伝え、薄く広く押し伸ばそうとする。その形態は殆ど平面に近い半球！ 55

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1/100秒以下の瞬時の反動で半球の外周が、彼女を遠巻きに包み込むように押し戻されてくる。平面に近い状態から完全な半球へ戻り、そして『穴』が徐々に狭まっていく……そこに原水爆とミサイル群が到達した！一瞬遅れて、穴が閉じる。直径約四十キロの空洞の中に呑み込まれたのだ。 56

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―密閉空間の中でこそ、爆発は最大の効果を発揮する。そこに爆発を待たずして、無数の魔力弾、攻撃魔術が撃ち込まれる。大半が戦術核以上の威力である。球の表面が包み込まれる。彼等は転送時に、数百キロの範囲で円周上に散らされていた。攻撃開始から1秒。ここまでは全て作戦通りだ。そして！ 57

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――――――凄まじい爆音が全てを掻き消すその数瞬前に、■■■■■■部隊が飛び出していた。数ギガＣｖの被爆とて彼等の生命には届かない。邪神のわずかな欠片も逃さぬよう、かすかな邪気を目掛けて各々全周を爆撃しつつ、突撃したのだ。フレンドリーファイア前提、人間には出来ない戦術だ。 59

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全身に第三度超の火傷を負った指揮官も爆心で追撃に加わっていた。攻撃開始から1.2秒。先程ホワイトが最大火力を使わなかったのは、彼女に配慮した手加減では無く、誤って『外壁』を破らない為の配慮、そして外側との連携の為。つまりはむしろ火力を最大にするためである。 60

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―攻撃開始から5秒。既に邪気は完全に消え去っていた。軍勢の大半は勝利を確信していたが、指揮官は警戒を最大限に強めていた。ホワイトの震えも最早背中の冷たい温もりでも抑え込めないまでになっている。＜全軍に通達、各員霊力を爆心に放射しつつ、後退。警戒を弱めるな！＞ 61

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指揮官の叱咤に、彼女を良く知る同族の者は驚愕し、即座に警戒を最大限以上に強める。しかし彼女を良く知らぬ者の多い魔術連合の者達は、眉を顰め顔を見合わせた。彼女が活躍したのは千年前の『大戦』でのこと。常人と寿命の大差無い魔術師達には分からないのだ― 62

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―彼女の警告を無視する者は命を落とすということが。 63

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「！！！！」金色の流星が再び舞う！邪神は数秒の間もなく瞬時に元のサイズに戻っていた。万一に備え彼女が爆心にいたのは幸いでは無く、必然。しかし全快していた彼女が、右脚を犠牲にして蹴り飛ばしていなければ、その膨圧が■■■■■■部隊をそのまま襲い、最悪全滅していたであろう！ 64

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「「……！！？」」彼等とてただ助けられたのではなく、咄嗟に極超音速で飛び離れていた。それでも大半が跳ね飛ばされたが、数名が一度即死、残りは重軽傷で済んだ。死んだ者も復活できたので犠牲はゼロだ。■■■■■■達はそれゆえ、驚愕はしながらも絶望はせずに済んでいた。 65

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しかし、絶望に駆られていたのは、むしろ直接の暴威を受けていない地上のセフィロト軍達だった。今のを自分達が受けていたら！？…あれで殺せない以上もう勝機は無いのでは！？そして、その少女の感じた絶望は彼等の比では無い。その瞳にはもう死者の如く生気が無かった。 66

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だが側の3人は恐怖はしていても、絶望はしていなかった。キューーーン！ドゴーーーン！と軽いノリで一発の水爆搭載弾道弾が邪神を殴り飛ばす。『やっぱ、マグロ食えなくするようなのはダメだな。次！』最優先回線を繋いだままの馬鹿でかいホワイトの独り言。 67

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『ミー介！やっぱあんな豆鉄砲じゃダメだわ』＜ミー…貴方コレ全軍に聞こえてるのよ…＞個人用回線で指揮官、ミー■■■・Ｐ・■■■■ー■が返す。『おい、スタッフー↑！ガチペドの人とかアクエリとか、光の巨人とか呼んできて―！スタッフッー↑』変わらずの全軍向けである。 68

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＜何だか、知らないけれど…私達は無い物ねだりをしている場合では無いわ…火力がダメなら霊力で浄化しきるまで＞これは全軍諸共に返すと、二本の聖剣を構え邪神を睨みつける。そして双剣から光の斬撃を飛ばす！！邪神に刻まれた十字の傷は数秒の間光り輝き、光が消えた後も暫く傷は…残った！ 69

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軍勢から希望に満ちたどよめきが聞こえた。やれる！ミー■■■は再び個人回線。＜だから、貴方はそのまま…＞『プランＢだ！』ホワイトが勝手に全軍に通達。これは『味方に多数犠牲が出るが、確実に敵を倒せる兵器』として、詳細を伏せ伝えられていた。『必要な兵器を今から、あー…召喚、する』 70