ケミカルバイオロジーという科学の一分野がある。 手っ取り早く言えば天然物の抽出物をたくさん集めてきて、その生物活性を調べて細胞の働きを調べたり、さらにはそれを薬に応用したりする学問なんだけど、これは呪術と極めて関係が深い学問でもある。
2013-01-05 01:59:5610年くらい前に、とあるラボを退職された科学者が自殺したことがあった。 その人は自殺する少し前にアフリカに行ったのだが、その後から様子がおかしかったらしい。
2013-01-05 02:00:19何人かの人によれば、「いつも虫がいる」「どこに行っても虫から逃げられない」といったことを言っていたという。 最終的に、「全ての場所を虫が這いずっています。もうダメかも知れません」という年賀状を最後に、その人は帰らぬ人となった。
2013-01-05 02:00:25この話を聞いたときに、ぼくが思い出したのはアフリカのとある呪術である。 アフリカの密林地帯の呪術師が非常によく使う術にそれに非常によく似たものがあると書かれた本を読んだことがある。
2013-01-05 02:00:38重要なのは、それはおまじないとかそういう類のものではなく、植物の抽出物を巧妙に犠牲者の食餌に混ぜ与えることによって実施されるということだ。
2013-01-05 02:00:41多くの文明では、こういった精神に作用する天然物質をまじないとして用いていた。 もちろん精神だけではなく、傷や病気にも用いられていたわけで、まじない師とはそれすなわち一種のオルタナティブな科学者であったとも言えるだろう。
2013-01-05 02:00:48この夏にブラジルに行ったときに、現地のケミカルバイオロジストに「フォルクインフォメーション」という言葉を教えてもらった。 特定の効果のある天然物を探す際に、密林の奥深くに住む人々にインタビューをして、その情報に基づいて探索を行うことがある。
2013-01-05 02:01:05しかし、同時に彼はこうも言っていた。 フォルクインフォメーションに頼るのは危険である。そういった伝承にある天然物はたいていサイドエフェクトが多すぎて、なにを見ているのか判らなくなってしまう・・・と。
2013-01-05 02:01:15ここに、西洋科学の一つの限界がある。 西洋科学においては、全てを可能な限り単純化して理解しようとする。 要素分解のルールだ。 世界は要素の組み合わせで出来ている。 ふむ。美しい考え方である。
2013-01-05 02:01:22組み合わせは無限にある。 取るに足らないサイドエフェクト?ほんとに?それらが多重に組み合わさって組み合わさって組み合わさった先にあるのは、無限の分岐の果て・遙かな高みに霞む組み合わせ爆発の壮大な樹冠だ。
2013-01-05 02:01:47ゲノム空間をいくら突き進んでも、トランスクリプトームのリードをいくら積み重ねても、その果てにはなにも見えない。 要素分解のルールを仮定する限り、その先にあるのは無間地獄だ。
2013-01-05 02:02:03フォルクインフォメーション・呪術・魔術に錬金術。 古来のオルタナティブな「科学」にもしかしたらヒントがあるかも知れない。 割とまじめにぼくは最近そう思っている。
2013-01-05 02:02:17