本が売れないということについて(ビジネス的でなく)考える藤谷治

本を売る立場、買う立場からの「本が売れない」論。 は珍しくないと思うのですが 本を書く立場からの意見、というのは貴重なんじゃないかと思ってまとめました。
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藤谷治 @yuntachura

この記事について、これから小説家・小説読者の立場から(つまり全然ビジネス的でなく)考えます。(続く)→出版社、書店、取次不況の実態…新刊の7割が返品、コンビニでも雑誌売れない(Business Journal) - Y!ニュース http://t.co/we0JXIm2

2013-01-05 16:17:29
藤谷治 @yuntachura

(続き)本が売れないということについて、ビジネス的でなく考えると、それは「買いたい本がない」ということになるのではないでしょうか。ひいては「買わなくても読める」ということです。そもそもこのBusiness Journalなるサイト?の記事もネットで読みましたから、もし(続く)

2013-01-05 16:20:47
藤谷治 @yuntachura

(続き)同名の雑誌があるとしても、もう買う必要がありません。読んじゃいましたので。雑誌に載っているような記事は、おおむねネットで読めますから、別に特定の雑誌の必要がないわけです。そういうわけで僕もご多分に漏れず、雑誌は本当に買わなくなりました。これを敷衍しますと、(続く)

2013-01-05 16:23:10
藤谷治 @yuntachura

(続き)例えば「芸能人某が離婚」という事柄について、ネットの記事を読む以上に「付き合ってはいられない」ということがあります。「あの人離婚したか」で終わりです。つまり「情報」は小耳に挟めば充分なんですね。同じことがもしや「小説」にもいえるんじゃないかと、僕は恐れています。(続く)

2013-01-05 16:27:04
藤谷治 @yuntachura

(続き)小説というのは無数にあります。名作傑作だけでも山のようです。しかも今こうしている間にも、小説は増え続けています。そして減りません。恐ろしい事実です。たとえば藤谷治が夏目漱石並みの大文豪だったとしても「藤谷がいるからもう漱石は不要」とはならないわけです。(続く)

2013-01-05 16:31:30
藤谷治 @yuntachura

(続き)藤谷も読み漱石も読むということになります。ましてや藤谷が漱石の足元にも及ばない現状では、「藤谷は不要だが漱石は必要」あるいは「どっち取るかったら漱石」というのは、藤谷本人である僕でさえ納得しなければならないわけで、僕としては「漱石に飽きたら藤谷もどうかひとつ」と(続く)

2013-01-05 16:35:24
藤谷治 @yuntachura

(続き)おずおず宣伝するしかありません。僕にとってここには、本が売れないといわれる現状の、小説読者としての理由も、小説家としての理由もあります。つまり読者としては「もう読みきれない」のです。僕は今年50歳になります。今自分が所有している本をすべて再読することは、(続く)

2013-01-05 16:40:54
藤谷治 @yuntachura

(続き)恐らくできないでしょう。その前に命が尽きるでしょう。「積ん読」をすべて読みきれるかどうかさえ怪しい。そこへ何?新刊?それがどんなに魅力的でも、今や心の底に一抹の疲労感を覚えるのは避けられません。8年前に買った「名作歌舞伎大全集」は宝の山のようですが、9割未読。(続く)

2013-01-05 16:47:05
藤谷治 @yuntachura

(続き)プルーストも読んでいないし川端康成すら全巻読破ではありません。未読の山脈を前に僕の命は短すぎる。おそらく誰の命もそうなのでしょう。それならなぜ新刊は出るのか。出版ビジネス面を一切無視していいますと、それは「同時代だから」というほかありません。人は今を知りたい。(続く)

2013-01-05 16:53:18
藤谷治 @yuntachura

(続き)自分と同じ空気を呼吸している言葉を読みたい。その要請のために新刊は出るのです。文学だって同じでしょう。ここから、小説家としての僕が思う「本の売れない理由」が現れます。つまり僕が思うに、僕は読者の要請に応えていないのです。あなたと同じ空気を呼吸しているのに、それを(続く)

2013-01-05 16:57:12
藤谷治 @yuntachura

(続き)充分に表現しきれていないのです。僕の本を読んで、読んでよかったと思われることはあるでしょう。しかし「これが私だ。私はこのように生きたし、今も生きている」と読者に思って貰えるには、不充分なのです。面白いことは面白いが、不充分な小説に、人はお金を出しません。(続く)

2013-01-05 17:01:49
藤谷治 @yuntachura

(続き)東日本大震災から、僕は何の証拠もなしに、ただ感覚でこんな風に思っています。「みんな、待っている」と。「鴎よ、語れ」という小説にも一行書きましたが、今を僕は「大いなる怯えの時代」だと思っています。その怯えの時代に、文学が何をいうか、みんな待っていると思うのです。(続く)

2013-01-05 17:06:23
藤谷治 @yuntachura

(続き)しかし文学は、純文学でもエンタメでもラノベでも、まだこの時代のリクエストには、しっかり応えていないと思う。小説家の方が、何をどういえばいいのか見当がつかないでいるからです。「あれからと同じではない」ということを、まだしっかりと見据えられていないからです。(続く)

2013-01-05 17:10:09
藤谷治 @yuntachura

(続き)それは時間のかかることです。そして芸術的直感を必要とすることです。どちらも今の時代のスピードには似つかわしくないほど、のろくさい集中力を必要とします。しかしそれができた時、人が待っていた言葉、待っていると自分でも知らなかった言葉を小説家が掴めた時、(続く)

2013-01-05 17:13:56
藤谷治 @yuntachura

(続き)小説は人からお金を出して買って貰えるものになるでしょう。そう信じて僕は進むしかありません。今現在自作が売れないと嘆くのは馬鹿げています。次の小説でいいものを書く。これまでもそうしてきましたが及びませんでした。次も判りません。でも目指します。いいたいことは以上です。

2013-01-05 17:18:56