memo: 内田樹先生 - 教育における外国語習得の優先度、または“論理的にモノを考える”ということ

(いやはや全く…と同意だけれど、そこまで絶望的だからこそ、例えば英語習得が論理的にモノを考えることを後押しすることになる可能性も?とも)
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内田樹 @levinassien

ようやく「老松論」英訳だん。自分の文章を外国語に訳すのって、日本語の書き方の訓練になりますね。外国語に訳せない日本語は書いちゃダメだということです。書いてもいいけれど、通じない。文科省の「英語が使える日本人育成戦略」の前文なんかとても英語にできない。

2013-01-06 14:04:15
内田樹 @levinassien

では、どうぞ試みてみてください。「今日においては、経済、社会の様々な面でグローバル化が急速に進展し、人の流れ、物の流れのみならず、情報、資本などの国境を越えた移動が活発となり、国際的な相互依存関係が深まっています。」

2013-01-06 14:07:41
内田樹 @levinassien

「それとともに、国際的な経済競争は激化し、メガコンペティションと呼ばれる状態が到来する中、これに対する果敢な挑戦が求められています。さらに、 地球環境問題をはじめ人類が直面する地球的規模の課題の解決に向けて、人類の英知を結集することが求められています。」

2013-01-06 14:10:06
内田樹 @levinassien

この官僚的作文の特徴は「並列」と「無文脈」です。「すでに起きてしまった事態」をランダムに列挙し、「さあ、たいへんだ」と浮き足立っている。なぜそのような事態が出来したのかについての分析は一語もない。武道的に言うと思考がつねに「後手に回っている」。

2013-01-06 14:13:35
内田樹 @levinassien

不思議なものですが、「後手に回った文章」というのは外国語に訳しにくいんです。思考が停止している人間の書いた文にはいきいきとした「ロジック」がないから。

2013-01-06 14:15:32

: 文科省 

「英語が使える日本人」の育成のための戦略構想の策定について
平成14年7月12日

「英語が使える日本人」の育成のための行動計画 (今回の引用はコチラ)
平成15年3月31日

内田樹 @levinassien

これも英訳不能の文章でしょう。「これまで一年以上の時間をかけ、IAEAや原子力安全委員会を含め、専門家による40回以上にわたる公開の議論を通じて得られた知見を慎重には慎重を重ねて積み上げ、安全性を確認した結果であります。もちろん、安全基準にこれで絶対というものはございません。」

2013-01-06 14:18:01
内田樹 @levinassien

(つづき)「最新の知見に照らして、常に見直していかなければならないというのが東京電力福島原発事故の大きな教訓の一つでございました。そのため、最新の知見に基づく、30項目の対策を新たな規制機関の下で法制化を先取りして、期限を区切って実施するよう、電力会社に求めています。」

2013-01-06 14:18:46
内田樹 @levinassien

どうです、すごいでしょう。どの文にも主語がないんです!

2013-01-06 14:19:33
内田樹 @levinassien

これは大飯原発再稼働のときの当時の野田首相の声明です。

2013-01-06 14:20:14

: 野田内閣総理大臣記者会見 平成24年6月8日
http://www.kantei.go.jp/jp/noda/statement/2012/0608.html

内田樹 @levinassien

こういう作文をする人たちに「英語が使える日本人を育成したい」と言われても僕は同意することができません。まず「論理的にものを考えることのできる日本人」を育成することの方がはるかに優先順位の高い課題ではありませんか?

2013-01-06 14:22:10