クリストファー・アレグザンダー『形の合成に関するノート』のノート(1)

井庭先生が、クリストファー・アレグザンダーの『形の合成に関するノート』(Notes on the Synthesis of Form)から、「デザインとは何か」について、語ってくれました。
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井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

さて、今日はアレグザンダー著『形の合成に関するノート』について語ろうかな。

2013-01-12 21:33:20
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

僕がクリストファー・アレグザンダーの『形の合成に関するノート』(Notes on the Synthesis of Form)を読んで、パターン・ランゲージの観点から重要だと思うテーマが二つある。それは、「デザインとは何か」の定義と、「無自覚の文化と自覚的な文化」という話。

2013-01-12 21:40:42
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

アレグザンダーは、「デザインの最終の目的は形(form)である。」という。そして、そのためには「与えられたデザインの問題の機能的起源(functional origins)の最も深いところまでたどり、何らかの型(pattern)を見つけることができねばならない。」という。

2013-01-12 21:56:26
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

そして、デザインの問題(design problem)は、「求められている形と、その形の全体との脈絡、すなわちコンテクストという二つの存在を適合(fit)させようとする努力で始まる」という。

2013-01-12 22:00:09
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

別の言い方では、「我々がデザインについて話す時、議論の本当の目的は、形だけに限られず、形とそのコンテクストから生まれる調和のとれた全体、すなわちアンサンブル(ensemble)も含まれている」ともいう。アンサンブルとは、総体であり、全体的調和のことである。

2013-01-12 22:03:53
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

ある形の側からみると、その形の適正さは「形がアンサンブルの残りの部分と適合する度合いによって決まる」。しかし、アンサンブルの側からみると、「アンサンブルを形とコンテクストに分ける方法は、一つだけではない」。

2013-01-12 22:10:07
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

そのため、「ただ一度分解するだけではすまない」ので、デザイナーは「幾重にも入り組んで、重なり合っている形・コンテクストの境界に留意しながらデザインすべき」だという。

2013-01-12 22:11:44
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

アレグザンダーは、デザイン問題(design problem)では、形における「それ自体の内部的な組織」と、「外部へのコンテクスト」の「互いに相手に向ける要求を満足」させることが求められるという。形とコンテクストが相互に受け入れあう関係を「適合性」があるという。

2013-01-12 22:24:12
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

このとき、「形とは、我々がコントロールできる世界の一部分であって、その世界の他の部分をそのままにしておきながら、我々が姿を与えることのできる部分である」のに対し、「コンテクストとは、この世界の形に対して要求を提示する部分である」ため、「形」をつくることが「最終の目的」になるのだ。

2013-01-12 22:25:58
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

「形」をつくることは「最終の目的」ではあるが、大切なのは形とコンテクストのミスフィットを無くし、調和がとれるようにするということである。それゆえ、「コンテクストの場を理解することと、それに適合する形を発明することは、事実一つのプロセスの二つの側面なのである」というわけだ。

2013-01-12 22:28:31
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

こうして、パターン・ランゲージでいう「状況」(context)と、「解決」(solution)=「形」(form)という要素が登場することになる。これらはデザインにおいては不可分であり、形を考えるときにはコンテクスト(アンサンブルの他の部分)を考えねばならないということである。

2013-01-12 22:33:55
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

それでは、パターン・ランゲージは、「状況」と「解決」(=形)をセットにして書けばよいのではないかと思えてくる。つまり、パターンのもう1つの要素である「問題」は要らないのではないか、と。

2013-01-12 22:36:26
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

この『形の合成に関するノート』は、パターン・ランゲージ以前の本なので、パターン・ランゲージについての記述はない。パターンは「状況」「問題」「解決」をセットとすると書いてあるのは、『時を超えた建設の道』などの後の時代に書かれた本のなかである。

2013-01-12 22:38:36
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

しかしながら、『形の合成に関するノート』には、僕から見ると重要だと思われる記述が見られる。なぜパターンに「問題」の要素を入れなければならないのか、という理由である。

2013-01-12 22:40:01
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

それは、コンテクストに適合した形は、調和がとれているがゆえに、見いだすことが困難であるということだ。逆に「良い適合を妨げている不適合を名指すほど容易なことはない」のである。つまり、「問題」というものを媒介として認識しなければ、形とコンテクストを区別して認識することはできないのだ。

2013-01-12 22:42:45
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

このことについては、アレグザンダーの具体例がわかりやすい。「台所の掃除がしにくい、車の置き場がない、交通事故の起こりそうな所で子供が遊ぶ、雨もり、過密とプライバシーの欠如・・・」などなど。「これらはすべて適合が予定されていた住宅と生活と習慣の間の不適合」なのである。

2013-01-12 22:45:44
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

「適合を証明する」よりも、「不適合を説明する」方がより楽である、という。「実際における良い適合の概念は、そのような欠点がない無いことだけを表しているのであって、具体的な説明は示されることなく、間接的に説明されるだけである」。

2013-01-12 22:49:49
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

不適合を指摘する場合には「身近かに経験でき、そして説明しやすいアンサンブルの一つの明確な特性を引合いに出す。アンサンブルに不適合が起こったときはいつでも、その悪い点を的確に指摘して言うことができる」のである。

2013-01-12 22:51:42
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

以上を踏まえ、形とコンテクストの「二つの存在の間に良い適合を達成するプロセスを、不適合の原因となる不一致(incongruities)、または刺激(irritants)、または力(forces)を中和する逆の(negative)プロセスとして考えることを私はおすすめしたい」という

2013-01-12 22:56:22
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

これが、パターン・ランゲージにおいても、「状況」と「解決」だけでなく、「問題」も要素として入れることになった経緯ではないかと思われる。

2013-01-12 22:59:49
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

「我々は、二つの触れえぬものの間の或る種の調和を探している。それは、まだ我々がデザインしていない形と、的確に表しえないコンテクストの間の調和である。この二つの間に何らかの適合が達成されると我々が考える唯一の理由は、そこに不一致とか反対の事実を探り当てることができるからである。」

2013-01-12 23:02:49
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

『形の合成に関するノート』は、このような考えを踏まえて、数学的な方法を用いて、コンテクストにフィットした形を生み出すことの支援をしようとする。この具体的な方法は、後に彼自身によって捨てられることになるが、考え方はパターン・ランゲージに引き継がれているといえる。

2013-01-12 23:09:06
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

以上が、クリストファー・アレグザンダー『形の合成に関するノート』における、パターン・ランゲージの観点から見た重要な点である。

2013-01-12 23:10:07