ミストルティン編第四話「護るべき笑顔は～ノー・ティアー！ノー・アゲイン！」 #2 「レッド・デストロイアー」

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ミストルティン編第四話「護るべき笑顔は～ノー・ティアー！ノー・アゲイン！」 #2 「レッド・デストロイアー」

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―2013年4月12(金)16:00。勇矢が倒れ伏す5秒前。 1

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「始め！」湊の声を受け待機エリアから６体のロボットが発進！場内侵入と同時に『ドーモ、ボールドキャンサーデス』起矢のロボが電子ボイスと共に頭を傾け礼をする。『ドーモ、ネクストステージデス』勇矢ロボも応じる。ＡＢでは選手同士の挨拶は勿論行うが、ロボットを挨拶させる規則は別に無い。 2

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早紀と直人は構わずに機体の位置を調整して攻撃機会を窺う。続いて中央のロボットがお辞儀をする。『ドーモ、カリグラデ』そこに！「隙有り！」早紀のレーヴァティンの速攻！初速時速５０キロ超相当の突撃が、お辞儀直前のカリグラの腹に直撃！刀身の根元パーツが床を蹴り、敵を跳ね上げた！ 3

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『グワーッ！』カリグラの電子ボイス悲鳴！反動と共にそのアームから１２発のロケットがバネ仕掛けで飛び出すが全て外れる。そして、飛ばされた機体が「え」直立する勇矢の額にクリーンヒット！「グワーッ！？」倒れる勇矢！そして『サヨナラ！』正中線を切られたカリグラが四散！ 4

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「破片グワーッ！？」仰向けの勇矢の頭上で破片!追加ダメージ！「タ、タイム！」カウンターを一時停止させると、湊が勇矢の元へ駆け寄った。同時に裕岐と星護、智明もだ。続いて他数名が続いた。裕岐が声を掛ける。「だ、大丈夫か！？」勇矢は胴体を左手で庇いつつ、右手で額を押さえている。 5

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「見せて下さい！」青ざめた顔の湊が勇矢の右手を軽い力で引き剥がす。額には血。だが軽傷の様だ。安心した皆が深く息を吐く。湊も薄い胸を撫で下ろした。「あ、あの浅空君…」おずおずと早紀が歩み寄ってくる。「ご、ゴメンなさい…あんなに飛ぶなんて…」なおも青い表情で頭を下げる。 6

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その顔を見つめる勇矢は、自分で応急手当てをしつつ少し考えた。今のは油断した自分が完全に悪い、彼はそう認識していた。しかし周りの空気は狭い場所で馬鹿げた速度を出した早紀が悪いかのようになっている。しかしアクトボットに速度制限は無い。ゴングも既に鳴っており彼女に不手際は無い。 7

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また実際の試合では透明な衝立があり、例え故意に狙われてもまず怪我の心配はない。 しかし練習用ブースには予算とスペースの関係で無い。設備上の問題は智明の責任を追及されかねない。勇矢と同時にそれに気付いた湊が目で合図してくる。(大丈夫なら泥被って下さい)(ＯＫ！) 8

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勇矢は少し考えてからズドン！と口を開いた。「ありがとうございます！ありがとうございます！もう一回お願いします！さあ続きをしよう！お願いします！」「ちょ、ちょっと！大丈夫なの！？」早紀が狼狽える。「頭が？」「そうよ！……あ、いやそうじゃなくて！…その…頭も！」 9

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「大丈夫かだよ。狙って当たりに行ける程度には」「！？」勇矢は『行ける』であって『行った』とは言っていないので嘘ではない。「え？…『狙って』って…」「んふっふっ」得意げな顔で腕を組むが、肯定はしていない。早紀も半信半疑だ。 10

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「そう、ワザと派手に吹っ飛んだり、当たりに行って敵に反則を取らせる戦術もあるかも知れないだろ？」『自分がそれをした』とは言っていないので嘘ではない。「だからって体張って実演してくれなくても！」「直前で角度を調整してダメージは殺したさ」これは本当だ。 11

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「待て浅空」興基が割って入る。「本番じゃ衝立があるだろうが」「…目にレーザーを受けた、とかなら有り得るだろ？」「そんな主張したら機体が調べられるだろ」企業機密などの塊でもある出場機体は、重量やサイズ等以外事前審査は受けない。精査されるのは反則の疑いがあるときくらいだ。 12

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レーザーを受けたふりで相手の反則を主張しようと、調査でレーザー装置が見つからなければ訴えた側が逆に反則を取られる。「対人目的じゃなければレーザーは普通だろ？」勇矢が問う。「まあな…」「だから敵がレーザーを持ってるのが明らかな時に言えばいいだろ？」「…そうか」 13

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確かに勇矢の話も尤もと言えば尤も、それは皆も納得した。だが彼が強引に事故をうやむやにしようとしているのも明らかだった。「分かったよ。そういうことにしとく…お前が良いんならな」興基を始め皆それ以上追及はしなかった。そして戦いは再開された――― 14

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―『ドーモ、クリアーマインドデス』。仕切り直しと同時に、勇矢側左端のロボットは挨拶をしファイティングポーズを取る。更に同時にネクストステージが動く！三つの外輪と支柱車輪の、四輪による高速移動で敵コートに迫る！「浅空ァアアッ！」何故か怒りに燃える起矢がこれを受ける！ 15

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ネクストの両手には双剣『バーニングカリバー』。同型の剣を振り回す勇矢の動きに連動し、ボールドキャンサーに襲い掛かる。キャンサーは蟹上半身に円柱型胴体、複合車輪の土台で構成されている。胴体から上はリング状の装甲が無数に付いている。カリバーに打ち据えられたリングが火花を散らす！ 16

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ガン！ガン！ガン！リングが受けた衝撃を回転エネルギーへと変換して逃がす！リング同士の継ぎ目に付きを放つも軟質素材がその威力を殺してしまう。そこに打撃を当てようにも継目の間隔が狭く難しい。土台も上方は厚い全面装甲で、下部は地面との隙間が最小に抑えられ、転倒対策もされている。 17

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質実剛健な防御に加えて、360°自在に動ける複合車輪、これによる回避と受け流しも生存性を上げている。更にレーヴァティンのトップスピードには及ばぬまで30kgの重量による突進力も高い。合間に繰り出されるハサミの打撃力も無視し難い威力だ。 18

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ネクストステージの打撃力も弱いわけではない。直撃すれば並の中量～重量級を数合で倒せる威力だ。単に硬いだけに留まらぬキャンサーの防御力が高いのだ。「ざけやがってぇ！てぇい！」起矢が憎悪の表情でキャンサーに幾度目かの突進をさせる。「何怒っテンノ？」右脚の装置でネクストを移動！ 19

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二機の横ではレーヴァティンがクリアーマインドへの攻撃機会を窺っている。バイラオールは徐々に前進しつつ様子見だ。３０ｃｍ級のバイラオールでは１ｍ級の二機の打ち合いには割って入れない。６０ｃｍ級のＣマインドの相手が妥当だろう。 20

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「謝れ！浅空ああっ！」壁側に追い込もうとするキャンサーの突撃。迎え撃つネクストは勇矢から右の壁側コート際を背にしている。左に避ければレーヴァに襲われかねず、右や後に回避すれば場外になりかねない。双「双剣で受ける！」やや左に力を入れつつ突進を受ける。 21

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そして機体前面の向きを真正面に向けつつ、打撃威力をも活かして後退。自陣端へ戻る。「謝れ？」「お前見なかったのか！？」「何を！？」ネクストの再突撃！「早紀をだ！」キャンサーの右面突撃！ネクストは鋏打撃を切り払い後退！ 22

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「…それってそこの人のこと？」「私？」早紀が思わず起矢を見る。正面への警戒すら一瞬忘却していたが、直人機がすかさずＣマインドとの間に素早く動く。当のマインドは静止したままだ。「そうだ！浅空！お前早紀がどんだけ心配したと思ってんだ！あんな青ざめた顔させやがってぇ！」「え」 23