ミストルティン編第四話「護るべき笑顔は～ノー・ティアー！ノー・アゲイン！」 #2 「レッド・デストロイアー」

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キャンサーの全力猛突撃！Ｃマインドを狙える角度。ネクストは無理にでも受けざるを得ない。カン！カン！カン！カン！！高速で剣を振るい全身を押し留める。「何がワザとだ！ワザと怪我してまで先に怖い思いさせて楽しいか！」「いや…そのね…うん」狼狽えつつも手は止めない。 24

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今となっては勇矢の演技を信じている者はいない。不幸な事故なのだろう、と理解していた。智明や湊も今後の安全策を検討していた。そんな中でまだ騙されている者がいようとは…皆呆然としていた。特に勇矢は反応に困った。嘘は『つけない』し、真実も語り難かった。 25

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「起矢！」早紀が声を掛けた。「ちょっと待ってろ！早紀今浅空を謝らせて！」「違うわよ！あれは事故！」「だから浅空がそう見せかけたって話だろ！」叫びつつも再突進に備え、キャンサーを後退させる。「いやだから…もうこの馬鹿！」早紀の蹴りが起矢へ飛ぶ！「痛た！なんだよ！？」 26

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後に飛び退いて巻き添えを避ける間も直人は眼前の敵を見据えつつ、バイラオールを一気に勇矢側中央へ動かす。「だ！か！ら！殆ど私のせい！浅空君は私を庇ってくれてたの！」早紀が力強く言う。「……え？」ようやく、誤解に気付いた起矢が硬直する。「隙有りゃあっ！」 27

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勇矢は卑劣にも、自分を弁護してくれた瞬間に付け込んで、右足で操縦機でネクストを敵三機の中央へ移動させた！「（この位置は…）まずい！動いて！」半ば勘で敵の意図を察した直人が叫ぶ！次の瞬間、ネクストステージの装甲がはじけ飛んだ！赤い過剰な重装が剥がれて落ちる。 28

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至近距離の軽量機なら致命傷となりうる攻撃！キャンサーは下がり、バイラオールは伏せた。反応の速さと距離の遠さが無ければ危なかった。そしてレーヴァティンは、敢えてここで直進！クリアーマインドを狙った！…スパァン！鉄板が金属を撃つ音が響く！何が起こった？ 29

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クリアーマインドの右手、その横に付いたクロー。これを先端で組み合わせた掌底がレーヴァティンを跳ね飛ばしたのだ。その右側面がＣマインド側に向いた状態で静止する。（カウンター！？）時速６０キロを超えた一撃。大型機レーヴァティンのその一撃を中型機が跳ね飛ばしたのだ。 30

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ライト級ボクサーのジャブでヘビー級の突進を跳ね除けるようなものだ。「…ッ！」驚愕しつつも早紀は側面の短針銃を解放し、弾幕を張る。同時に左に機体を動かそうと試みるが、障害物の為にうまくいかない。そう、カリグラの放ったミサイルだ！機体の前後で動きを阻害している！ 31

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（誘い込まれた…最初から狙い通りだったの！？）慌てて機体を懸命に操作するが、ミサイルの幾つかに磁石が仕込まれていたらしく、ぶつかった機体後部にくっ付いてしまう。障害とこの余計な重量の為に、微細なスピード調整が難しい今無理に前後に動けば場外になる…身動きが取れない！ 32

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釘付け状態のレーヴァ右側面をＣマインドが襲う！レーヴァは短針銃で応戦するが、足による左右移動とローラーによる前後移動で巧みに回避しつつマインドが迫ってくる！右手のクローがレーヴァを打ち据え、左手の爪が赤熱し機体を溶かして煙を上げさせる！ 33

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バイラオールが助けに入ろうにも、ミサイルに加えて横長のレーヴァ自身が障害となり動けない！そしてボールドキャンサーは…完全に防戦一方となっていた。全力を出したネクストステージの為だ。今やその機体は完全に装甲を失い、内部のモーターやバッテリーが剥き出しである。 34

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また双剣も、手動で柄を合体させられ長刀へと変化していた。『バーニングカリバー・シングルエッジモード』だ。ネクストはそれを両手で保持すると…上半身を高速右回転させながら、キャンサーに襲い掛かっていた！ガン！、ガン！…ガン！ガン！ガガガガンンン！！！嵐の如き連撃！ 35

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「くそ！何だコレ！」起矢が懸命にキャンサーを操り、応戦する！ネクストの先程までの攻撃は左右交互に双剣を振るうモノだった。それが重い装甲を捨てて回転を一方に集中させることで、速度と手数が圧倒的に増えている。リング装甲の数か所に攻撃を集中させている。 36

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ネクストは先程までも集中攻撃は仕掛けていたが、装甲が回転するがゆえに同じ個所を狙うのが難しかったのだ。それが今はワザと回転させ、一周してきたところを再度打ち据えることでこれが可能となっている。キャンサーもこれを避けるべく鋏の反撃や車輪機動で対抗しているが押され気味だ。 37

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ネクストの下半身は、上半身と独立している為に基本動作は先程までと同じだ。しかし上が軽くなったこと、打撃反動で速度が上がっている。今やビートを上回る機動力と、レーヴァに近いトップスピードと攻撃力だ。強い！相当に強い！だがこれは熱暴走と危険と隣り合わせの危険な強さだ！ 38

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実際、排熱性を極限まで上げた今の状態ですら、既に煙が上がりつつあるのだ。（もってあと１０分…頑丈な装甲しやがって…！）勇矢はネクストを『狂戦士版ブレイビート』として開発していた。稼働時間と防御を捨て、攻撃と速度に特化させたのだ。大抵の機体では受けきれるものでは無い。 39

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他所の大会出場機でもこれに単独で対処し切れる気はそういないだろう。いうなれば最強の矛！それを受けきれるキャンサーは最強の盾！小型・中型のバイラオールやＣマインド、小回りの利かないレーヴァでは割り込めないこの戦い！後はキャンサーの撃破が早いかネクストの熱暴走が早いかだ！ 40

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一方の勇矢側コートではレーヴァティンが追いつめられていた。右側面の武装は全て発射口を溶かされ、打たれるがままだ。バイラオールはクリップで愚直に一本ずつ、前方のミサイルを引っこ抜いて横に投げ捨てている。だが１分弱でようやく３本目に取りかかったところで、まだレーヴァは動けない。 41

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ミサイルには磁石入りと無いものがあるのが厄介だった。磁石入りに迂闊な触り方をすれば、レーヴァはまだしもオールは完全に動けなくなるので慎重にやらざるを得ない。レーヴァ後部に２つくっ付いているので残りは７つ。だが分子の数が分からない…最悪残り全てと言うことも有り得る。 42

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後部と前部に６つずつあるミサイルは、それぞれカリグラの左と右から放たれたものだ。磁石入りの方が重いであろうことを考えると、左右で同数にすることが望ましい。直人はそう推測した。これが正しければ前部の磁石入りは残り２か３…最悪の可能性だった。だが別に全部を除去しなくとも良い。 43

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あと一つだけどかせば、レーヴァは逃げられる。ならば磁石入りと言う覚悟でそれを動かせば良い。３つ目を投げ捨てると直人は躊躇わずに４本目にかかった。だがその時、猛攻を続けていたクリアーマインドが突如静止した。『！？』足横からストッパーが展開し固定される…これは！？ 44

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『イヤーッ！』右クローを合わせたマインドが、天井近くまで跳躍！足とはワイヤーで繋がっている。（（まずい！））観客を含めた全員が驚愕する！熱く、なる、全員の、テンション。一方で冷静に、冷めて、いく、ある、一人。『イイイヤアアアーーーッッ！！』振り下ろされるチョップ！ 45

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バギィィッ！！轟音と共にレーヴァティン中央部の中程までが両断される！その機体の正面、剣の切っ先は勇矢側コートに垂直に向いていた。自力で動いたのではない。機体前部に、直前でバイラオールが全力で掌底を当てたのだ！これによりチョップは失敗！ 46

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『グワーッ！』横からの衝撃でチョップが失敗したことで、クリアーマインドの右腕がクロー諸共肘の辺りからへし折れた！瞬間的な威力は高いが、失敗した場合のリスクの大きい技だったのだ！「腕グワーッ！」激痛に勇矢も悲鳴を上げた。そう激痛に。その様子は演技には見えなかった。 47

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