秘書ミン

我愛圭敏 @woaikyumin

26そうして連れられるままやってきた社長室は、前の会社の社長室とは全く違っていた。ゆうに１０人は座れるだろう応接セット、これまた大きな机が入口の真正面に控えている。ガラス張りの向こうのデスクスペースは、きっと秘書室だろう。#秘書ミン

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27だが当の社長さんは室内には見当たらない。促されるままソファーに座り、すっとテーブルに置かれた紅茶で有り難く喉を潤す。しばらくそわそわしていると、ガチャと奥のドアが開いて、長身の男性が現れた。立ち上がって軽く会釈をする。#秘書ミン

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29よく響く、低い声。ギュッと握り返された手が熱い。「いえ、遅くなりまして申し訳ありませんで、し…た」あれ、何で…？頭が、クラクラ、す…る…。目の前の社長さんの顔がにじんでいく。呼び掛ける声が遠い。そのまま記憶は途切れた。#秘書ミン

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30ふわふわ、誰かに運ばれている感覚。子供の時に父親におぶわれて以来かな…トサッと落とされて、自分がベッドの上だと認識する。何だろう、夢…？頭がずっとぼんやりして働かない。頭上で誰かが喋っているのは分かるけど、瞼が重い…。#秘書ミン

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31カチャ、スルッと音がして、足元が少し肌寒くなる。あれ…僕もしかして脱がされてる？するすると太ももを撫でられる感触。夢だよね…？そうじゃなきゃおかしい…。こんな夢、見るのも久しぶり。そっと撫でられるだけでビクンと跳ねる。#秘書ミン

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32「可愛い…綺麗なピンク色」「もうちょっと勃ってるよ…」誰かが話してる。でも中身が頭に入って来ない。その間も、太ももを撫でる手は意志を持って動いていた。でも、きわどいところまで行くと、すっと戻ってしまう。「やぁ…んっ…」#秘書ミン

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33無意識に腰がくねる。もっと、熱くなった中心を触って欲しい。「触って欲しいの？」急に耳元で響く声。でも、どうせ夢だし、そう思って素直に頷いた。ようやく握られた僕自身が悦びに震える。その次の瞬間、つぷっと指が侵入してきた。#秘書ミン

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34「あぁっ…だめぇっ…」そんなところ、自分でだって触ったことがないのに。埋められた指がクッと曲がって、何かを探っている。前も扱かれたまま、ある一点を、トントンと押された。「ひぃっ…やっ…」びりびりと背中を抜けていく快感。#秘書ミン

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35「あ、んンッ…」そのまま優しくその一点を擦られ続ける。感じたことのない気持ち良さが、つま先をぴん、と立てた。「イクッ、いっちゃう…」うわごとのように呟いた。リアル過ぎる、こんな淫らな夢を見るほど溜まっていたのだろうか。#秘書ミン

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36「いっちゃうよぉ…」もう一度呟いてからビクビクと太ももを震わせて達した。「ん、やぁん…」指がズルリと抜かれる感触にも声が抑えられない。「ふっ…おめでとう、採用、だよ」最後に囁かれた言葉は、もう僕の意識には届かなかった。#秘書ミン

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37「あれ…？」「大丈夫ですか？」見渡して、あの社長室の立派なソファーに寝かされていることに気付きガバッと起き上がる。「す、すみませんっ！やだ、どうしたんだろ、僕…」混乱でうまく言葉が出ない。面接は？何で寝ちゃってるの！？#秘書ミン

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38目の前には、またふわりと微笑む可愛い秘書さん。「覚えてます？社長とお話している間に…」「えっ？」面接中に寝ちゃったってこと？そもそも、僕社長さんとお話したっけ！？「ずっと勤めていた会社が倒産するなんてショックですよね」#秘書ミン

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39「え？あっはい…」その話を目の前の彼が知っているなら、確かに僕は面接でなにがしかを喋ったのだろう。「就職活動でお疲れだろうし、しばらく休んでもらいなさいって、シウォナ、あ、社長が…」落ちてしまった毛布をまた掛けられた。#秘書ミン

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40「僕…とんでもない失礼を…」どうしよう。全然記憶がない。それどころか、覚えていることと言えば、信じられないほど淫らな夢だけ。「ごめんなさい…」情けないけど視界が滲む。「泣かないで…それに明日から宜しくお願いしますね！」#秘書ミン

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41そうだ、明日からはまた、求人雑誌を読む日々を…ん？「…え？」「明日から、どうぞ宜しくお願いします」告げられている言葉の意味は分かるが、理解が出来ない。「えっ…採用なんですか？」ぽかんと見上げると、ニッコリと微笑まれた。#秘書ミン

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42「ふふ、それで安心して眠くなっちゃったんだと思ってました。あ、僕はキム・リョウクって言います」リョウクはもう一度僕の膝に毛布を掛けると、すっと立ち上がった。「やっ、帰りますからっ」「いいですよ、社長も今日は戻らないし」#秘書ミン

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43混乱する頭を落ち着けるために、ソファーに座り直した。採用？僕が？容姿端麗って基準はどこにいっちゃったの？…考えたところで答えは出ない。リョウクが煎れてくれたお茶を一気飲みしてから、心身ともフラフラになりながら帰宅した。#秘書ミン

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44次の日から早速出勤。リョウクが39階を案内をしてくれる。「ここが１番大きい会議室、全社で会議なんてめったにしないから、あんまり使わないけど」そう言って開け放った扉の先は、どう見ても20人ほどしか入らない会議室。驚いたことに、僕を入れても15人しか社員がいないらしい。#秘書ミン

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45「社長でしょ、それからプログラマーが３人、ソフトを販売するＨＰの担当が３人、法人営業が２人、カスタマーサービスの担当が２人、秘書って呼ばれる何でも係が、僕とヒチョリヒョン、ソンミンさんで３人、あと海外放浪中が１人」リョウクが淡々と続ける言葉を、慌てて手帳にメモする。#秘書ミン

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46「え？海外放浪中？」「社長担当の秘書なんですけど、ちょっとパン屋さんに修行に」「パン！？あの食べるパン？」ここはＰＣソフト全般を作っている会社じゃなかった？僕のぽかんとした顔を見てリョウクが笑う。「社長が美味しいパンが食べたいって言ったら、そのまま飛び出しちゃって」#秘書ミン

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47何だか良く分からないけど、自由な社風ではあるらしかった。「じゃあ僕はその人の代わりに、社長秘書をすればいいんですか？」「まぁそうです。でも社長はほとんどご自分でされる方なので、スケジュール管理と話し相手くらい…ソンミンさんは前の会社では総務部だったと聞きましたけど」#秘書ミン

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48「はい。最初３年は人事労政でしたけど」リョウクの顔が明るくなる。「良かった！うち、そういう企業に不可欠の部分がぼこぼこ欠けてて…ベンチャーだから仕方ないけど」どうやら僕でもお役に立てることはあるらしい。少しだけホッとする。「経理はヒチョリヒョン一人しか出来ないし」#秘書ミン

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49「ほんとですか！？」ちょっと信じられない。ＯＳからゲーム、個人向け動画編集ソフト、企業用経理ソフトまで、1000以上のソフトを作っているはずなのに、人は足りてるんだろうか？だからあんなに高給なのかも…「プログラマーさんは３人しかいないんですか？」外注しているのかな。#秘書ミン

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51「はい。全てのソフトを社長が企画立案して、３人がプログラムを組んで、デバッグ作業とかも、彼等で全てやってます」ありえない…その人数、そして創立３年であれだけの種類を！？「て、天才ばっかりなんですか…？」「うーん、そうですねぇ…」リョウクはケロッとした顔をしている。#秘書ミン

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52「僕、いつも思うんですけど、あの４人が本気を出せば、地球滅亡くらい出来ると思うんですよね」リョウクのアハハ、という渇いた笑いが、本気に聞こえて恐ろしい。やっぱり色んな意味で、とんでもないところで働こうとしてるのかも。これからの会社生活が、不安であり、楽しみでもあり。#秘書ミン