【SecretGuardianMAHI】第1話第2節

Twitter小説【SecretGuardianMAHI】第1話の続きです。
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高橋ショウ @zrx78

 大きな掌が頭部に当たれば、麻衣の頭は瞬時に消え去るに違い無い。麻衣とクマ人間との距離が、どんどん縮まっていく。 腕が届く距離になると、クマ人間は麻衣の頭目がけて右腕を振り下ろす。麻衣とクマ人間を見ていた青年は、麻衣の頭が潰された……そう思った。

2013-02-02 21:49:13
高橋ショウ @zrx78

 だが、クマ人間の右腕は、スカッと空を裂いただけであった。 突然、目の前から麻衣の姿が消え、クマ人間は「グオッ!?」と目を見開いた。どうやら驚いているらしい。そんなクマ人間の頭上から、「こっちよっ!」という麻衣の声が聞こえた。

2013-02-02 21:50:10
高橋ショウ @zrx78

 クマ人間の頭上数メートルの上に、剣を両手で構えた麻衣の姿があった。「はあああっ!」と落下しながら麻衣は剣を振り上げ、「はあっ!」と着地する瞬間に振り下ろした。  剣は、クマ人間の右腕を斬った。

2013-02-02 21:50:56
高橋ショウ @zrx78

 牙がビッシリと並ぶ口から響くのは、「グウウアアアアアアアアッ!」という激痛の悲鳴。だが、確かに剣で斬られたのにクマ人間は右腕を失っていなかった。右腕はある。切断されていない。しかし、その形状が変化していた。

2013-02-02 21:51:40
高橋ショウ @zrx78

 2回りほど細くなり、体毛が無くなっている。それだけではなく、獣のような腕はシャツに覆われた人間の腕になっていた。「ええいっ!」と麻衣はさらに赤い剣を振る。剣がクマ人間の体を斬るたびに、その部分の体毛が消えていく。

2013-02-02 21:53:57
高橋ショウ @zrx78

 クマ人間はこれ以上、毛を失ってたまるかと言わんばかりに麻衣に攻撃を繰り出すが、そのすべてが避けられてしまう。逆に麻衣の攻撃は、次々とクマ人間に当たる。クマ人間のその巨体は、どんどん小さくなっていく。どれほど剣を振ったことだろうか。

2013-02-02 21:56:32
高橋ショウ @zrx78

「本体が出てくるぞ!」

2013-02-02 21:56:52
高橋ショウ @zrx78

 麻衣の顔を隠す仮面……ソルが言う。その言葉に呼応するかのように、体毛の半分以上を失ってシャツとジーパンに覆われた体が露わになったクマ人間に胸に何かが現れた。それは黒く光る球体だ。ドクドクと脈動をしていて、よく見れば無数の小さな渦が巻いている、不気味に光る黒い球体。

2013-02-02 21:57:28
高橋ショウ @zrx78

 それは光なのではなく、闇なのかもしれない。凝縮された闇……不気味な気配を漂わせている闇だ。

2013-02-02 21:57:51
高橋ショウ @zrx78

 麻衣は両手で構えた赤い剣を後ろに引き、「破あああっ! 破邪ああっ!」とクマ人間に胸に出現した黒く輝く球体に目がけて勢い良く突き出した。刃が、黒い球体に突き刺さる。

2013-02-02 21:59:03
高橋ショウ @zrx78

「ここは、汝が生きるべき世界にあらず! 消え去れ、邪悪なる存在!」

2013-02-02 21:59:36
高橋ショウ @zrx78

 力を込めた言葉を麻衣が発した瞬間、剣の刀身が光り輝く。淡い光……だが、暖かさを感じさせる光だ。

2013-02-02 21:59:59
高橋ショウ @zrx78

 一瞬だけ、赤い剣を包んでいる光が強くなった。その直後、黒い球体からは何かが聞こえてきた。それは悲鳴だ。耳を覆いたくなるような、人間に不快感を与える悲鳴。そして、断末魔の悲鳴だ。黒い球体が、クマ人間の胸から消える。

2013-02-02 22:00:57
高橋ショウ @zrx78

 クマ人間は路面にドサッと倒れた。倒れた時、クマ人間はクマ人間ではなくなっていた。倒れているのは、クマとは正反対の男であった。痩せていて、小柄な男。つい先ほどまで巨体を誇っていたクマ人間だと思えない。意識は無いが、死んではいない。呼吸はしている。

2013-02-02 22:01:48
高橋ショウ @zrx78

 黒い球体を消滅さえ、クマ人間を普通の人間にした麻衣は「ふうっ」と息をつく。赤い剣を軽く振ると、それは火花を思わせる粒子に分解されて麻衣の手から消えた。

2013-02-02 22:02:07
高橋ショウ @zrx78

「これで一件落着っと」

2013-02-02 22:02:28
高橋ショウ @zrx78

 麻衣は仮面で隠されている顔を助けた大学生に向け、「すぐに救急車を呼びますから、そこにいてください」と言い残して、麻衣は路面を蹴って高く舞い上がった。 電柱の上に立った彼女は、電柱から電柱へと跳んで移動し、その場から去っていった。

2013-02-02 22:03:35
高橋ショウ @zrx78

 ある程度まで離れると路面に着地して、仮面を外す。仮面が顔から外れると、変身が解除される。変身を解除した麻衣は携帯電話で119をし、それから帰路についた。

2013-02-02 22:04:04
高橋ショウ @zrx78

「さて、パラサイダーも退治したし、帰って寝直すとしますか」

2013-02-02 22:04:27
高橋ショウ @zrx78

 掌サイズになった仮面をポケットにしまい、麻衣はあくびを一つ漏らした。《第1話終・第2話へ続く》

2013-02-02 22:05:23