地球近傍小惑星探索の現状

日本スペースガード協会所属の坂本強氏による解説ツイート
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Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

[地球近傍小惑星探索の現状]これから連続ツイートで現在の探索でどの程度の大きさの地球近傍小惑星まで発見できるのか、つぶやきたいと思います。

2013-02-22 09:06:28
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

これは、地球近傍小惑星がどの方向から近づくのか、どこの観測地に近づくのか、月は満月か新月か、で大きく変わります。ここでは実際に地球に落ちた小惑星で事前に観測データのある唯一の小惑星2008TC3を例にとって考えていきます。

2013-02-22 09:09:23
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

既にご存知の方も多いとは思いますが、現在大規模な地球近傍小惑星サーベイが行われているのはアメリカ大陸とハワイだけです。その他の地域でも一応は行われていますが、望遠鏡の口径が小さいこと、空の状況が悪いことから地球近傍小惑星の発見確率は相当低いです。美星スペースガードも低いです。

2013-02-22 09:11:25
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

小惑星の明るさですが、時々刻々変わります。これは地球と小惑星の距離が変わるからです。小惑星が地球に近づけば近づくほど明るくなります。観測は光学望遠鏡で行われています。つまり、観測できるのは夜だけです。また、満月時のように空の明るいときは暗いものは発見できません。

2013-02-22 09:14:06
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

小惑星の動きが恒星の動きとはやや異なります。どの方向からどの方向へ行くかは予測不可能です。従って、通常の小惑星サーベイは、とりあえず、恒星の動きにあわせて望遠鏡を動かし、その中でヒョコヒョコ高速で動く天体を探しています。

2013-02-22 09:17:39
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

2008TC3はレモン山(アメリカ)で行われているサーベイで発見されました。これは地球に落ちる約20時間前のことです。このとき、月の状態は半月。2008TC3の動きは1分間に6秒角動いていました。明るさは約19等です。

2013-02-22 09:19:13
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

現在最も多く地球近傍小惑星を発見しているグループであっても、動きがこれくらい速いと、せいぜい20等くらいの明るさの地球近傍小惑星までしか発見できません。

2013-02-22 09:22:31
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

ちなみに今たくさん発見しているグループの望遠鏡の口径はレモン山1.5m、パンスターズ2mです。

2013-02-22 09:27:36
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

2008TC3が20等の時間帯は大体どれくらいか”かなり”ラフに見積もると、大体6時間前です。なので、6時間前に夜でかつ、空がすんでいる観測地に2m望遠鏡があれば、もう6時間早く発見されたでしょう。

2013-02-22 09:29:22
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

少々わき道にそれましたが、2008TC3の大きさは数mぐらいでした。ここまでをまとめると、月は半月、かつ1日程度前にアメリカ大陸かハワイが夜でかつ、空が晴れていれば、数mくらいの小惑星まで発見できることを意味します。

2013-02-22 09:33:29
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

では、満月だったらどうでしょうか。実は満月付近はアメリカ大陸やハワイで行われているサーベイはお休みしてます。動いているサーベイは世界中のアマチュアと美星スペースガードセンターだけです。これらの場所にある望遠鏡は50cm-1mと小さく、空も良くないです。

2013-02-22 09:35:17
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

発見できる地球近傍小惑星は1分間に6秒角動く(2008TC3仮定なので)ものならば、せいぜい17等の小惑星までしか発見できません。月が満月なので、もう少し明るいものまでしか発見できないかもしれません。

2013-02-22 09:37:44
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

2008TC3が17等の時間は地球に落ちる8時間前です。従って、満月時は数mクラスの地球近傍小惑星は事前に発見できることは発見できますが、地球に落ちるわずか8時間前となります。

2013-02-22 09:39:24
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

1つ重要なことを忘れてます。地球近傍小惑星は発見して終わりではないのです。ちゃんと軌道を決めてあげないと、それがどこに落ちるのか全くわかりません。つまり、この小惑星を追跡観測しないといけません。

2013-02-22 09:42:23
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

天文台は地球近傍小惑星を発見するとすぐMinor Planet Center(通称MPC)に報告します。確認計算した後、MPCのconfirmation pageにその情報がのります。 http://t.co/NeCp0T2jaN

2013-02-22 09:43:50
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

問題は、発見観測が行われてからこのページに載るまでの時間です。 どんなに早くても6時間くらいかかります。 この後世界各地で追跡観測が始まります。 つまり、先ほど8時間前に発見できるといいましたが、2時間前までは軌道が決まらないのです。

2013-02-22 09:46:14
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

2時間の間でも世界各地の天文台は追跡観測をやるでしょうが、観測して報告して、それをMPCがチェックして、、、とやっていたら、そんなことをやっている間に小惑星は地球に落ちてしまいます。ということで、現状では満月には数mクラスを落ちるのは予測できません。

2013-02-22 09:48:05
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

おそらくもう少し数十mクラスなら、先ほどの大規模なサーベイチームが発見したような形でできると思います。ここまでをまとめると、新月ー半月は数mサイズ、満月なら数+mくらいまでを1日前までに発見できると期待されます。

2013-02-22 09:50:15
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

しかし、まだ大事なことを忘れていました。現在大規模なサーベイチームとはいえ、全天をサーベイできてません。黄道からせいぜい±20度くらいまで。空は広いのに、望遠鏡が一晩に観測できる面積は狭いのです。これをはずれたら、小惑星がそこにいても望遠鏡は向かないので、発見できません。

2013-02-22 09:55:06
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

それから晴天率という問題もあります。ハワイやアメリカ大陸がいくら晴れるといっても約60%です。また黄道のある高度も変わります。現在地球近傍小惑星サーベイをする天文台は北半球に集中してます。従って、黄道が低い高度にある春~夏は、より明るいものまでしか発見できません。

2013-02-22 09:59:22
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

ということで、現状の地球近傍小惑星探索では、「非常に良い条件がそろえば、発見するのに新月~半月は数m、満月は数+mくらいの地球小惑星が1日前に発見されます。」以上です。つぶやきすぎました。フォロワーの皆さん、すみません。

2013-02-22 10:04:52
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

専門家の方、間違えがありましたら、ビシビシご指摘ください。一般の方も、よくわからないという箇所がありましたら、ビシビシご指摘ください。そのような部分は、私の書き方がまずい場所ですので。よろしくお願いします。

2013-02-22 10:05:53

Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

明朝は、ロシアに落下した隕石を事前に本当に発見できなかったのか、私なりに検証した結果をツイートします。この検証は某所のスタッフであるHさんとの議論を基にしてます。

2013-02-23 23:03:58
Tsuyoshi Sakamoto(天文 PhD x IoT x AI) @tentairikigaku

HさんとはH本さん。古くから火球や人工衛星に興味をも持たれて観測されてきた方です。

2013-02-23 23:09:25