茂木さんの朝の連続ツイート2010年8月

2010年8月4日「勉強」 から 「秋刀魚の味」「就職」「タイガージェットシン」「赤毛のアン」「利他」「笑い」「国境」「独学」「美人」「ツイ」「戦争」「憲法」「青春」「情熱」「効率」「弱さ」「おまかせ」「フロー」「変化」「映画」「男女脳」「ネット」「サンデルさん」「隣人」「英語」「(佐藤賢一さんと歴史の話になった時のことを思い出しながら)」「アジア」「海」
7
前へ 1 ・・ 13 14
茂木健一郎 @kenichiromogi

アジア(4)私も、日本はアジアでも特別だ、ということを無意識のうちに植え付けられて育った。しかし、そのうちに自分はまさにアジアの一部から来たと見られているという当たり前の事実に気付いた。

2010-08-30 08:33:03
茂木健一郎 @kenichiromogi

アジア(5)そのうち、自ら、「私はアジアから来た」「東アジアでは」とあたりまえのように言えるようになった。自己イメージと、他者が自分を見るイメージが一致するようになっていったのである。

2010-08-30 08:34:09
茂木健一郎 @kenichiromogi

アジア(6)今や、経済成長著しいアジアの一部にいることは、恥ずべきことではなく、むしろ誇りとすべきこととなっている。韓国や中国、フィリピン、ベトナム、インドネシア、マレーシア、シンガポールなどの沸き立つ空気と連動することが、日本にとっての未来である。

2010-08-30 08:35:41
茂木健一郎 @kenichiromogi

アジア(7)ヨーロッパの個人主義に対して、コミュニティを重視するアジア的感性も、インターネットがグローバルな関係性を築き上げつつある今日、ハンディキャップであるよりも、むしろアドヴァンテージである。

2010-08-30 08:36:37
茂木健一郎 @kenichiromogi

アジア(8)自然と人間との関係においても、対立や不干渉による保護ではなく、日本の里山や、インドネシアの棚田の風景など、両者が調和したアジア的モデルが、むしろ先端的なものとなりつつある。

2010-08-30 08:37:32
茂木健一郎 @kenichiromogi

アジア(9)「脱亜入欧」の裏返しとしてのアジア主義ではなく、アジアの特質を、冷静にとらえ、その中で生きることを実務的に考える時期が熟している。この点からも、近隣諸国との関係は、重要な意味を持つ。

2010-08-30 08:40:04
茂木健一郎 @kenichiromogi

海(1)海は、すべての生命の母胎であり、人間もまた海から来た。血液の塩分濃度は海のそれと同じだとされる。しかし、人類は「海の原理」から遠いところにある。

2010-08-31 07:42:41
茂木健一郎 @kenichiromogi

海(2)私はしばしば、「偶有性の海に飛び込め」という表現を使う。それは、たとえであると同時に、実際に海が偶有性の現場であるということを私たちに思い出させる警句でもある。

2010-08-31 07:43:32
茂木健一郎 @kenichiromogi

海(3)生物種として自分たちだけしか存在しない「Species Ghetto」(Gregory Colbertの言葉)の人工空間を築き上げてしまった人間。しかし、海の中では、さまざまな生物種がうごめいている。自分たちの群れのすぐそばに、全く異なる生きものたちが殺到する。

2010-08-31 07:45:03
茂木健一郎 @kenichiromogi

海(4)海は三次元空間。四方八方から、いつどのような敵が、想定外の事態が襲ってくるかわからない。本能上の反応は身についている。しかし、その正体が見極められるわけではない。海の中の生物は、経験を積んだ博物学者ではない。偶有性は、見知らぬ、予想できぬ突発事態として彼らを襲う。

2010-08-31 07:46:53
茂木健一郎 @kenichiromogi

海(5)人間は、自分たちをついつい予想可能な範囲で守ろうとする。所有を定め、テリトリーを主張し、鍵をかける。そのような線引きは、海の中では存在しない。すべては流動し、溶け合い、衝突し、やがて一つの出会いが自分の生命を終わらせるために近づいてくるのだ。

2010-08-31 07:48:08
茂木健一郎 @kenichiromogi

海(6)現代文明、社会制度の中で生きる人間は、ついつい生命の本質である偶有性を忘れてしまう。私たちの命の源が海であるならば、海の原理を上手に思い出しさえすればいい。海の原理の真っ直中に、「偶有性」が逃れられぬ運命として存在している。

2010-08-31 07:49:29
茂木健一郎 @kenichiromogi

海(7)海は、あらゆる人工物を拒絶する。その流れ浮かび沈むリズムの中に、永続的な構造物をつくるのは不可能である。地上では、人々は年経た石の教会に永遠を擬制するかも知れぬ。海は、そのような人間の小さな心を嘲笑する。

2010-08-31 07:51:16
茂木健一郎 @kenichiromogi

海(8)鯨は、人間とは全く異なる原理によって生きている。その声によるコミュニケーションは、太平洋の端から端まで届くと言われる。マッコウクジラは、千メートルの深海に潜って、ダイオウイカをとる。彼らの姿を見て私たちが抱く畏怖は、「海の原理」が姿を現したことに対する感動なのだろう。

2010-08-31 07:53:00
茂木健一郎 @kenichiromogi

海(9)ある時期、私は、海を前にして、ここから全ての生命が由来したのだということを盛んに考えていた。ミキシゲオという人が、生命記憶の話をしていると、布施英利さんや養老孟司さんから聞いた。興味を惹かれたが、ミキシゲオという人にはそれまでの人生の中で縁がないと思い込んでいた。

2010-08-31 07:54:27
茂木健一郎 @kenichiromogi

海(10)ある時、それまでずっと記号のようにして聞いていたミキシゲオという人の講演を、二十歳そこそこの時に聞いていたということに気付いた。五月祭の本郷キャンパスを歩いていて、「胎児の世界」というポスターを見て、医学部一号館に入った。

2010-08-31 07:55:37
茂木健一郎 @kenichiromogi

海(11)その人は、胎児の写真をたくさん見せて、人間は「海」から「陸」に上がるのだと言った。立ち見の盛況で、終わると、拍手が起こった。ふと気付くと、私のジャケットの肩のあたりがびしょびしょに濡れていた。

2010-08-31 07:56:30
茂木健一郎 @kenichiromogi

海(12)その人が三木成夫さんだった。となりに立っていた私のガールフレンドが、話を聞いて感動して、涙を流したのである。外に出るとさわやかな緑風。どうして泣いたの、と聞いたら、「人はあんな風に生まれてくるのに、どうして戦争なんかするんだろう」と彼女は言った。

2010-08-31 07:57:35
茂木健一郎 @kenichiromogi

海(13)二十歳そこそこの時に聞いたその人が、まさに三木成夫だということに、二十年近く気付かないままにいた。私たちがかつて海の中にいたという「生命記憶」は、同じような、「思い出せない記憶」として私たちの中にあるのではないかと思う。

2010-08-31 07:58:32
茂木健一郎 @kenichiromogi

海(14)私たちは、かつて、海の中にいた。そのことをすっかりわすれて、文明の中で酔っぱらっている。しかし、海の原理、偶有性の舞踏は、私たちの中に必ずあるはずだ。私たちはただ、その生命記憶を、上手に想いだせばいい。

2010-08-31 07:59:20
茂木健一郎 @kenichiromogi

単なる事実の報道は、ネットで済むから、新聞には、見識のあるオピニオンが求められている。日本の大新聞の見識が信用できないというのは、日本国民にとっては大きな損失である。

2010-09-01 07:53:17
前へ 1 ・・ 13 14