[公開読書] 新版 質的研究入門〜〈人間の科学〉のための方法論【第5〜7章】

新版 質的研究入門〜〈人間の科学〉のための方法論 http://www.amazon.co.jp/dp/4393499107/ 2011年2月28日初版 春秋社 続きを読む
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白川陽一 @shirasan41

第6章 理論的立場 ●質的研究のさまざまなアプローチ 質的研究の3つの基本的な前提「象徴的相互行為論は個々人の主観的な意味づけを探る」「エスノメソドロジーは日常のありふれた行為とその産物に関心を向ける」「構造構成主義・精神分析的立場が眼を向けるのは、心理的社会的な無意識の過程」

2013-04-17 17:02:45
白川陽一 @shirasan41

これらのアプローチを用いた研究の方向性は、例えば「主観的なものの見方vs既存の日常的・社会的環境を描写する見方」「社会的秩序はいかにつくりだされるのかvs行為や意味を生成する深層構造をつくりだす(精神分析や客観的解釈学などを用いて)」がある。理論的立場によって考え方が異なる。

2013-04-17 17:08:11
白川陽一 @shirasan41

●主観的意味:象徴的相互行為論 「個人が、自らの行為やとりまく環境に与える主観的意味とは」が関心事。ジョアズ(Joas 1987:84)によれば、これは米のプラグマティズムの哲学的伝統を引き継ぐもの。ブルーマー(1969)の著作は1970年代の方法論の議論に多大な影響を及ぼした。

2013-04-17 17:15:55
白川陽一 @shirasan41

(1)基本的前提 ブルーマー(1962:2)によれば、象徴的相互行為論には以下の3つの前提がある。「人間は自分にとってもつ意味において物事を行為する」「物事の意味は、当人と他の人々との間で行われる社会的相互作用から生じる」「意味は、物事を処理する解釈過程で取り扱われ、修正される」

2013-04-17 17:24:08
白川陽一 @shirasan41

ブルーマーの3つの前提から、事物や出来事、経験などに対する個々人のさまざまな意味付与の仕方に重点を置いた研究の方向性が出現。主観的な意味付与の視点を再構成する、というのが象徴的相互行為論で社会を分析するときのポイントである。

2013-04-17 17:27:06
白川陽一 @shirasan41

ブルーマーの3つの方法論的原則に根拠を与えるものが「トマスの定理(人がある状況をリアルだと定義するとき、その状況はリアルである)」である。人にはそれぞれの見方があり、その人が思うリアルなものは、確かにリアルだということ。だから、研究者は研究している人の視点で世界を見る必要がある。

2013-04-17 17:36:19
白川陽一 @shirasan41

これに加えて、主観的なものの見方(Bergold and Flick 1987)には様々な種類があり、それに応じたアプローチがある。「主観的理論→人々が世界全体(またはある対象領域)を自分の為に説明する上で用いるもの」「自伝的なナラティブ→主観的視点から再構成した人生の軌跡」など

2013-04-17 17:43:16
白川陽一 @shirasan41

(2)社会学における近年の発展 デンジン「解釈的相互行為論」は他理論を統合する議論を進めてる。彼は、この方法論は、個人的な問題と、それを対処する為に作られた公共施策、制度との関係を調べたい時のみに使うべきだとしている。また、バイオグラフィーの文脈でプロセスを解釈すべきとしている

2013-04-17 17:51:58
白川陽一 @shirasan41

(3)心理学における近年の発展:主観的理論という研究プログラム 象徴的相互行為論では、「私たちは、日常生活において、自分達の行為が世界にどのように作用しているか」の理論を構築してきた。そして理論は実践され、検証・修正されてきた。その方法は、他の科学理論同様、論証的構造を持っている

2013-04-17 18:03:32
白川陽一 @shirasan41

象徴的相互行為論の研究には特殊なインタビュー技法が考案されている(13章:半標準化インタビュー)。また、主観的理論を当事者の視点になるべく近づけて再構成するために、被調査者とのコミュニケーションを通して理論の妥当性を検証するという特殊な方法が考案されている(28章)。

2013-04-17 18:06:15
白川陽一 @shirasan41

人々の主観的意味と彼らが経験や出来事に与える意味に焦点を当てたり、また事物、行為、出来事などの意味を志向したりする研究方向は、質的研究一般の中でも大きな比重を占めている。また、「象徴的相互行為論」とことわらずに主観的視点を対象にした研究も珍しくない。

2013-04-17 18:18:06
白川陽一 @shirasan41

また、ブルーマーやデンジンの流れの中では、主観的視点より相互行為の方に関心を寄せる研究もある。しかし、相互行為に関与する人々が事物に与える主観的意味に焦点が与えられる点は同じである。 調査法としては、様々なインタビュー(13、14章)や参与観察法(17章)がある。

2013-04-17 18:21:58
白川陽一 @shirasan41

●社会的現実(リアリティ)の形成:エスノメソドロジー ハロルド・ガーフィンケル(Garfinkel 1967)が確立。 象徴的相互行為論では、主観的視点が関心事。エスノメソドロジーでは、相互行為の過程の中で、または相互行為の過程によって、人々はいかに社会的現実を作るのか、が関心事

2013-04-17 18:36:24
白川陽一 @shirasan41

日常的な行為やその遂行、さらにそうした行為が遂行されるローカルな文脈の構成に目を向けることが、エスノメソドロジー的研究の一般的特徴。これを実証研究の形に移すときには、主として会話分析の方法が用いられてきた。

2013-04-17 18:38:46
白川陽一 @shirasan41

(1)基本的前提 ヘリテイジ(Heritage 1985:1)の見解を踏まえると、肝心な事は、相互行為は秩序だって作られていくという事であり、また相互行為の文脈は、それ自身によって更新されるという事。更に、社会的相互作用の中で何が重要なのかという事はあらかじめ設定する事はできない

2013-04-17 19:53:20
白川陽一 @shirasan41

エスノメソドロジーでは、主観的意味に焦点を当てるのではなく、いかにその相互行為が組織化されているのかということにあるので、もっぱら扱うのは、特別に目を引いたり意味づけされたりする特異な出来事ではなく、日常生活におけるルーティンである。

2013-04-17 19:57:09
白川陽一 @shirasan41

研究者は、自分があらかじめ持っている見方や、相互行為の当事者の視点からも距離をとる。つまり、まずは相互行為に向き合い、そこから構成される文脈をみていくのだ。こうしてある状況のある会話は、例えば「カウンセリング」となり、そしてそれは特定の文脈におけるカウンセリングとして変換される。

2013-04-17 20:06:11
白川陽一 @shirasan41

(2)社会科学におけるエスノメソドロジーの近年の発展:ワークの研究 エスノメソドロジー研究は、会話形式の分析に関心が狭められていったが、80年代に出現した「ワークの研究」領域の影響で、ワークの過程分析(Bergmann 2004a: Garfinkel 1986)も行われる様に。

2013-04-17 20:16:29
白川陽一 @shirasan41

「ワークの過程」とは広い意味があるが、この場合は、特に実験室で科学者が行う作業や、数学者による証明の行い方が対象になった。 科学知識の社会学は、エスノメソドロジーから発展しているが、「ワークの研究」は、より広い文脈で科学的知識を社会学的に研究しようとする近年の流れの推進役である。

2013-04-17 20:21:28
白川陽一 @shirasan41

(3)心理学における近年の発展:ディスコース心理学 会話分析と実験室研究を中心に、掲題の研究が英国の社会心理学で発展している。ある特定のトピックに関する談話を分析し、認知や記憶などの心理学的現象を研究するのである。分析対象は、日常会話からメディアで流通するテクストまで様々である。

2013-04-17 20:26:17
白川陽一 @shirasan41

以上のように、エスノメソドロジー的研究では、いかに社会的現実が形成されるかを記述する事に限定されている。分析も驚くほど細かく、類型化に発展させる事もできる。しかし、当事者の主観的な意味づけや、特定の文化のような既存の文脈が社会的行為を作るという役割には、さほど関心は払われない。

2013-04-17 20:32:09
白川陽一 @shirasan41

●社会的・主観的現実(リアリティ)の文化的枠づけ:構造主義モデル (1)基本的仮定 「経験・行為の表層」「行為の深層構造」は区別される。表層→当事者の主観で捉えることが出来る/行為の意図や主観的意味と結びついている、深層構造→省察で捉えることが出来ない/行為を生み出すもの。

2013-04-22 14:49:52
白川陽一 @shirasan41

このような意味の深層構造にあるものの例は3つ。 「文化的モデル(D'Andrade 1987)」「解釈パターンと意味の潜在的構造(Reichertz 2004)」「精神分析的な無意識にとどまり続ける潜在構造(König 2004)」

2013-04-22 14:53:11
白川陽一 @shirasan41

精神分析学では、「調査プロセス」と「調査者−被観察者の関係」を手がかりに、「無意識の社会的産出(Erdheim 1984)」を発見しようとする。手がかりは、暗黙あるいは明示的な行為から、である。アプローチの代表例が「客観的解釈学(objective hermeneutics)」

2013-04-22 15:00:04
白川陽一 @shirasan41

エヴァーマンらによる(Oevermann er al. 1979)客観的解釈学は、ドイツ語圏で注目を集め、数々の研究を生み出す刺激になった(25章)。しかし、行為する主体と、分析で明らかにされる構造とのつながりが不明確である、などと批判されるなど、未解決の問題もある。

2013-04-22 15:08:07