[公開読書] 新版 質的研究入門〜〈人間の科学〉のための方法論【第5〜7章】

新版 質的研究入門〜〈人間の科学〉のための方法論 http://www.amazon.co.jp/dp/4393499107/ 2011年2月28日初版 春秋社 続きを読む
2
白川陽一 @shirasan41

[公開読書] 新版 質的研究入門〜〈人間の科学〉のための方法論, 2011, ウヴェ・フリック:著, 小田博志:監訳, 小田博志・山本則子・春日常・宮地尚子:訳, 春秋社 http://t.co/ePr11LtnIS

2013-03-23 14:17:43
白川陽一 @shirasan41

第二部 理論からテクストへ 第5章 質的研究における文献の利用 ●いかに、いつ文献を用いるか 質的研究は新しいことを発見するものだから先行研究の調査の必要がない・始めの段階では文献調査を避けるべきという意見がある。が、研究成果はかなり蓄積しているので、新領域は容易く見つけられない

2013-03-23 14:24:31
白川陽一 @shirasan41

質的研究のほとんどの教科書には、既存の文献利用の内容が含まれていないひとつの理由は、グラウンデッド・セオリー研究の最初期に、グレイザーとストラウス(Glaser and Strauss 1967=1996)が「既存の文献を調べずデータ収集せよ」と言ったことにあるかもしれない。

2013-03-23 14:27:36
白川陽一 @shirasan41

後にストラウスは前述の立場を撤回したものの、これが未だに質的研究のイメージとしてつきまとっている。しかし、本書はいくつかの種類の文献を使用することを提案する。それは、以下の4つである。

2013-03-23 14:29:37
白川陽一 @shirasan41

・あなたの研究テーマに関わる理論的文献 ・あなたの研究領域における、実証的な先行研究 ・いかに研究を行うか、いかに選択した方法を用いるかに関する方法論的文献 ・あなたの研究結果を文脈化し、比較し、一般化するための理論的ならびに実証的文献

2013-03-23 14:30:59
白川陽一 @shirasan41

●理論的文献をいかに用いるか 量的研究では、先行研究→仮説生成→仮説検証。しかし質的研究では、それと違って、あなたは既存の文献から洞察や情報を引き出して、それを文脈的な知識として用いることになる。つまり、あなたが調査で得た具体的な発言や観察を捉えるための文献として用いるのである。

2013-03-23 14:34:42
白川陽一 @shirasan41

あるいは、既存の研究と比べて、自分の研究で何が新しいか判断するためにも、既存の文献は参照すべきである。

2013-03-23 14:35:41
白川陽一 @shirasan41

理論的文献を参照する際は、以下の問いを参考にするとよい。 ・この具体的な調査対象についてすでに明らかになっていることは何か?研究分野全般について何が明らかになっているか? ・この研究分野ではどんな理論が用いられていたり、議論されたりしているのか?

2013-03-23 14:39:08
白川陽一 @shirasan41

・また、どんな概念が用いられていたり、議論されたりしているのか? ・この研究分野で行われている理論的もしくは方法論的議論はどのようなものか? ・どの問題がまだ明らかではないのか? ・何がまだ研究されていないか?

2013-03-23 14:40:01
白川陽一 @shirasan41

グレイザーとストラウスが本を執筆した1960年代は、理論の開発は不十分だったし、その頃の研究者の関心ごとは大理論(例えば、タルコット・パーソンズのシステム理論)の発展だった。大理論は、なんでも統一的に説明しようとするあまり、日常では使えないものになってしまった。

2013-03-23 14:42:42
白川陽一 @shirasan41

大理論の限界が叫ばれた後、日常や実践につながりのあるグラウンデッド・セオリーが注目された。しかし、今はそれ以外にもモデルは多く提起されている。 理論は統一化ではなく、多様化している。具体的現場で得られたデータを分析するのに適した、制限つきの理論やモデルが多く生み出されているのだ。

2013-03-23 14:46:55
白川陽一 @shirasan41

●理論の利用(P61〜P62) ここでは、「日本のある地域の中産階級の女性が皮膚がんに関してもつ社会的表層」の研究について、どんな種類の理論が必要か、例を挙げて説明している。

2013-03-23 16:03:59
白川陽一 @shirasan41

●実証的な先行研究をいかに用いるか 同様の分野における先行研究は、自分の研究を構想したりインタビューの質問を考えたりする上で役に立つ。どんな間違いをしてはならないかも分かる。よい研究だとしれば、それは自分の研究の方向づけに使えるし、悪い研究だとしても、その轍を踏まない見本になる。

2013-03-23 16:07:42
白川陽一 @shirasan41

重要なことは、先行研究を読んで、その分野の人びとがどんな研究をしているのか、何が明らかにされていないのか、何に焦点が当てられてきたのか、何が取り残されてきたのかを知ること。レビューが多いほど研究のレベルを知ることができる。

2013-03-23 16:09:23
白川陽一 @shirasan41

実証的な先行研究のレビューは、次の問いに答えるものであることが望ましい。 ・この分野において、どのような方法論的な伝統あるいは論争があるのか? ・自分の研究の出発点として採用できそうな矛盾のある研究結果や知見があるか?

2013-03-23 16:10:43
白川陽一 @shirasan41

ストラウスとコービン(Strauss and Corbin 1998:49-52)による実証的文献の活用方法(9つ) (1)文献に出てくる概念はあなたが集めたデータの中で比較を行う為の手がかりとなり得る (2)関連する文献になじんでおくとデータの微妙なニュアンスへの感性が高まる

2013-03-23 16:14:16
白川陽一 @shirasan41

(3)文献の中にある描写の部分を通して、現実の正確な描写の仕方を知り、それは自分の資料の理解にも役立つ。 (4)既存の哲学的・理論的知識はあなたにひらめきと、自分のフィールドと資料を捉える方向を与えてくれる。

2013-03-23 16:16:23
白川陽一 @shirasan41

(5)文献は二次的データ源となり得る。例えば論文中のインタビューの引用はあなた自身のデータを補足するものとして使える (6)文献は調査の問いを考える準備に役立ち最初のインタビューや観察を実施するきっかけとなるだろう (7)あなたが資料を分析しているとき文献から問いを得られるだろう

2013-03-23 16:18:08
白川陽一 @shirasan41

(8)理論的サンプリング(11章)を行う領域を、文献から導き出すことができるだろう。 (9)文献で自分の研究結果を裏づけたり、自分の研究結果によって文献の内容が古びたものだと示したりすることができる。

2013-03-23 16:19:51
白川陽一 @shirasan41

これら9つは、研究領域の文献に関するもの(ストラウスとコービンは専門文献と呼ぶ)。非専門文献には、手紙、伝記、ドキュメント(文書・記録:20章)があるが、それは一次データとして使うか、別のデータの補足で使う。

2013-03-23 16:21:15
白川陽一 @shirasan41

●方法論的文献をいかに使うか 研究方法を決める前に、方法論的文献を読むのはお勧め。レビューの際に答えられるべき問いは以下。 ・この方法に関して、どんな方法的な流れ、代替手段、論争がある? ・この方法に関して、あなたが出発点として取り上げられるような矛盾した複数の使い方はある?

2013-03-23 16:24:55
白川陽一 @shirasan41

●論文執筆の際に文献をいかに用いるか 既存の文献は、あなたの主張を根拠づけたり、結果を文脈化したりする為に使われる。修士論文や博士論文のような本格的な論文は文献レビューを読むべき。また、論文中では、あなたが文献レビューを体系的・的確に行い、研究領域をよく見渡していることを示すべき

2013-03-23 16:29:58
白川陽一 @shirasan41

●いかに、どこで文献を見つけるか 研究課題次第だが、図書館は簡単な方法。オンライン検索(OPAC)を使ったり、Webcat(日本の総合的な検索システム)を使ったりしたり、取り寄せサービスを使うのもよい。

2013-03-23 16:32:17
白川陽一 @shirasan41

欧文の論文検索にはSocial Science Citation Indexが網羅的である。 電子ジャーナル読みたければ、購読したり、図書館で読むのがよい。 よい文献レビューは、あなたの研究論文の不可欠の一部となる。

2013-03-23 16:34:36
白川陽一 @shirasan41

第5章のまとめ ・質的研究で、既存の文献を利用する重要性が増している。 ・研究の計画、データの分析、結果の執筆において、実証的・理論的・方法論的な文献は有益であり、ときには必要不可欠ですらある。

2013-03-23 16:35:54
1 ・・ 4 次へ